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異世界から来たリクは本当に使えない  作者: 地底人のネコ
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伝説の勇者(課金ユーザー)の遺言

リクはツェトリ村を遠く離れ、セイレーン島の冒険の最中でも『元の世界の手がかり』を探していた。


それはかつて栄えていた“チートに近いスキル”を持った伝説の勇者達の遺跡。

課金やログインボーナスのスキルで物を言わせ、このアカナの世界において猛威を奮って来た物達だ。


彼らは何処へ行ってしまったのか・・リクのスマホには在りし日のマップが映し出されるばかりだ。


「*はい!!」


ピピカが手のひらを見せて硬貨が無くなった事をアピールした。


「「おおおおーー!!」」

リクは得意げにピピカからスティルーした硬貨を見せ、みんなにお辞儀をする。

そして親指に硬貨を乗せるとピン!と飛ばし、キャッチ損なって転がった硬貨を探しに行った。


コルツ達は父親のようにそれを見ると、倒れて風化した戦士の男像柱に座って『回復薬テフロレリア』を呑んで一息ついた。


ピピカ:「どうやらスキルのコツを少しだけ掴んだみたいだな」

コルツ:「俺はちょっと複雑な気分だよ。リクが泥棒スキルを覚えるなんて・・」


ピピカ:「まぁ、泥棒スキルを持っていたってスキルを使うのは人それぞれだからな・・モンスターに使えば倒さずにドロップアイテムが貰えるかもしれないし、リクは弱いだろ??もしかしたら使いようによっては最強になれるかもしれないぜ??」


コルツ:「でもさ、俺としては一人前の勇者になって欲しいよ。いつか伝説の勇者と騎士として肩を並べたい」

ピピカ:「ふふふ。いつかなれるといいな。それもリク次第さ」



カーク:「見ろよ2人とも。昔の道標がある。あっちが王都ベガだったな?」


コルツ:「じゃあこの先は??」


カーク:「キュラー・テティアのダンジョンがあるみたいだ!!」

コルツ:「ダンジョン!?リクはダンジョンを目指しているのか!?」


「*コルツ君ごめん。お金を無くしちゃった」

ピピカ:「リクが何か喋ったぞ??」


コルツは真剣な眼差しでリクに問う。

コルツ:「リク・・この先に君に纏わる何かがある。そうなんだな??」

「*ごめんね。村に行ったら返すから」


コルツ:「行こう!何かリクの情報が見つかるかも知れない!!」


コルツは立ち上がると先に歩きだした。




先の石畳を歩くにつれて武器の焼き戻しをするための簡易的な炉の痕跡や、浴場の遺構が多く見られた。

タキア王国の民がここへ来て商売をしていたのだろう。


カーク:「おそらくダンジョンに向かう冒険者や勇者達の町だったんだろうな」

ピピカ:「長くはやってなかったみたいだ。人の臭いがしない」

カーク:「でも見てみろよ。旅先案内人シエルパの宿坊や、荷馬の小屋の跡もある。かなり資産のある階級の者が来ていたみたいだぜ?もしかして異世界から来た伝説の勇者達が腕試しに来ていたのかも知れないな・・」


「*ここ泊まる所だったみたい!“寝る所”!!」

リクは横になるジェスチャーをしてコルツ達に分かるように解説をする。

「*ここはバーだったみたい!“呑む所”!」


リクのスマホには在りし日の村のマップが映し出されていた。

いつになく饒舌になって解説するので、3人は納得した。

“ここは伝説の勇者が出入りしていた村だ”と。



暫く石畳が続き、遺跡が近いことを示す座った人形の彫刻が道の左右に配置されていた。

口に穴が空いているので昔は水を噴き、石畳に沿うように水路があったのだろう・・。


コルツ:「あれがダンジョンか!!!すげぇ!!」

カーク:「これは・・えらくデカいな!」

ピピカ:「そこら辺のダンジョンじゃない!お宝の匂いがプンプンするぜ!」


「*ほえーーー」


星座を模った巨大な円形の石畳には人魚の石像が立ち並び、その奥に巨大な神殿型ダンジョンが口を開けていた。

神殿はそのまま地下に続き、果てしない下り坂には不気味な青い光りの松明が何処までも続いていた…。


コルツ:「リク!!危ない!!」


リクがダンジョンに入ろうとした瞬間に、強力な水柱が上がり、どこからともなく2つの言語の女性の声の警告が響いた。


「ここはキュラーテティアのダンジョンなり(ココナ キュラーテティアナニヌ テーテパルテ ダシオニカ)!!

汝はパパヌンドのダンジョンにてやり残した事がある(エ ア パパヌキンギカ ミミエアルマニヌ イルク エスカーダー オハ)!!

直ちに立ち去るがよろしい(イフダ ゲルゲニア クリクリエ)!!」



ピピカ:「ひぃい!キュラーテティア様の身言葉だ!!」

カーク「大いなる慈悲深い水の女神よ!我らの無礼を許したまえ!」


突然の言葉に怯えたピピカとカークは神罰を畏れて地面に深々と頭を下げてひれ伏した。

コルツもこれにはすっかり縮み上がり、直立不動のまま腰を抜かすように倒れた。


他のダンジョンを攻略しないと解放されない場所らしく、リクは女神の言葉は録音されたかのように単調である事に気付いていた。

おそらくダンジョンに来た資格のないプレイヤーとNPCのキャラクターに対して自動で流れるものだろう。



3人が怯えるのを尻目に、リクはダンジョンの近くを探索する。

石の広場にも朽ちたキャラバンの荷台が置かれ、アイテムの売り買いで賑わっていたのかが分かる。

おそらくここに沢山のプレイヤーや冒険者が、ダンジョンを攻略してくれるパーティーを募った筈だ。



カーク:「あとでテモン司祭に浄化して貰おう!」

ピピカ:「そうだな!!早くベガに戻ろう!!ここは俺らのレベルが来て良い所じゃない!」


コルツ:「いや、待ってくれ。リクが探索してる!待ってあげてくれ!」


リクが広場の中央に来ると(スマホ)を数回撫でる。

すると、数回の瞬きと共に横90センチ縦2メートルの巨大な黒曜石の柱が出現した。


「*うわぁ!やっぱりあった!掲示板(モノリス)だ!!」

リクは縋るように駆け込むと、モノリスに出現したキーボードを手慣れた手付きで触った。

勝手は違えど、やはり体感型MMO内は同じだ。

モノリスに触れている数分はプレイヤーの周りに非攻撃のヴェールが出現し、NPCやモンスターは内部を伺い知る事が出来なくなる。


コルツ:「リク!大丈夫か!?」

ピピカ:「あのヴェールに触れると危険だ


(スマホ)は不思議な力で吸着すると充電が始まり、モノリスの頭上に光輪ができてクルクルと回り始めた。

モノリスは光輪を出しながらセッションを変え、セイレーン島にいるであろうユーザーを探した…。


「*この周辺のアクティブユーザーは無し…誰かいないのか…?メッセージが分かる誰か…」

リクはブツブツ言いながらモノリスを触る。


するとその時だった。

広間周辺が暗くなり、モノリスからオレンジのホログラムが大量に照射された。

それは針金細工のように抽象的な人物を形作ると、沢山の人間を広間いっぱいに映し出した!




コルツ:「おわっ!!」

カーク:「これはなんだ!?」

ピピカ:「過去の情報の集合体だ!」


ホログラムの人間がいつかの会話をしだす。

『きんろー:ダンジョンに一緒に行ってくれる方、情報待ってます!!』

『meijer77:3層の敵、硬すぎじゃね?どうやってクリアするのか情報求む!』

『TAKANASHI:ダンジョンで手に入れた装備の素材を交換してくれる人、待ってます!』

『lili0207:私、初心者なんですがソロプレイで行けますかね?野良プレイヤーを雇ってくれるパーティーギルドに入っているのですが音沙汰がありません…』

『U1A1SL:セイレーン島に来てからセッションをキックされて孤独になりました。良かったらパーティメンバーになりませんか??』

『まかだみあ:第4層から水没しています!水性耐久魔法または、補助アイテムは持っておいた方がいいかもしれません!』



ピピカ:「すごい、すごい!過去の勇者達の息づかいが聞こえてくるようだ!!」

カーク:「リクと同じ言語を喋っているな…!彼らは何処へ行ってしまったのだ??」


コルツはホログラムに映し出された勇者に触れてみる。

すると少しのノイズの後に同じセリフを話した。


リクはホログラムを見て周るも、プレイヤー達がゲームから離れてしまったのか赤いオフラインを示すマークが頭上に出ているばかりだった。

メッセージを送ったとしても、相手がこのゲームを選んでプレイしない限り、読んで貰えないだろう…。


「*・・・・・」

リクがホログラムを消すと、モノリスは静かに地面に埋没した。

そして、コルツ曰く『深い森にある湖が、濃い霧を吐き出すかのような深いため息をついた後、ダンジョンの一部に腰をかけた』という。



ピピカ:「・・・!!前方にマントラップ3体!キラーラビット2羽!!」


カーク:「だんだん増えて来てるな。採取アイテムが増えるのは良い事だが、その分モンスターも増えるし強くなる・・!戦いが拗れる前に帰るぞ!」



「ビビビビビビ!」

マントラップが祈り『深緑の絆』のスキルを発動し、HPの増加と自動回復。索敵能力の数値を上げた。


「でぁっ!!」

カークの渾身の一振りをマントラップが硬い外皮で防ぐと、頭頂部の蕾から起爆性のある種を放りだした。


パカンッ!!

と言う爆発の後にカークが吹き飛び、カークをカバーするようにコルツが盾を持って立ちはだかると、ピピカが弩を放った。


矢を受けたマントラップが驚いたように眼をギョロッとさせると枯れてしまい。


キラーラビットの2羽がコルツを翻弄して辺りを走り回った。




───────



数分後。

リクは遺跡に腰を掛けたまま黙り込んだままだった。


コルツ:「リク・・」

リクは座ると倒したキラーラビットをリクの膝に置いた。

倒したもう一羽をコルツは剣で首元に刃を入れて一気に皮を引き剥がして見せた。


「*・・・・」

リクは虚な目でそれを見ている。


コルツ:「リク??異世界ノーノタルタに帰りたかったのか??えっと、、リク??ノーノタルタ??」


「*うん」

コルツ:「そうか・・」


少しの沈黙。


コルツ:「リクよ。ここはマザーアカナに愛されし大地だ。時に世界は残酷で、そこに生まれ持った者を試すんだ」

「*・・・・」


コルツ:「しっかり聞け!!リク!!!」

コルツがガントレットを振り上げたのでリクが驚いた顔をする。


コルツ:「リク!!その膝で死んでるキラーラビットはリクである可能性もあったんだぞ!!わかるか??この世界は残酷で、そんなに腑抜けていたら確実に死が待っているんだ!!リク!!」

「*・・・何を言っているのかわからないし・・!!自分の世界に帰りたいよ・・!!」


コルツ:「カエリタイ!?!?」

「:家に帰りたい!!!」


コルツ:「カエリタイ・・!?!?エ ア ワイジルディ ノーノノ リク(何を言っているのかわかならいよリク)!!」

「*・・・・えっ!?!?」


この時、もちろんリクはコルツの言っている言葉は理解できなかったが・・不意にその時、リクにはコルツがヒロキに見え、こう聴こえたのだった。


───「お前は好き好んでこの異世界に来たんだろリク?」────


コルツ:「ど、どうした??」

「*・・・・・」

リクは顔をクシャリとすると、何かが吹っ切れたようにキラーラビットの首に剣を入れて皮を剥がそうとした。


「*ぐ!!硬い!!」

コルツ:「すぐに剥かないからだ!かしてみな?」


ベリッ!!

と言う音と共にキラーラビットの皮が剥がれ、瑞々しい綺麗な肉が露わになった。


「*ありがとうコルツ君。僕はこの異世界に好きで来たんだった。元の世界に戻ったとしても・・何も良いことなんて無かったんだ」

コルツ:「ふむ、元気になってよかった」


リクは頷くとキラーラビットを背負って先に歩きだした。


ピピカとカークが不思議そうにお互いを見る。


ピピカ:「なぁ、コルツはリクの言葉がわかるのかい?」

コルツ:「え?わからないよ??」


カーク:「でも、今、確実に喋っていただろ??」

コルツ:「あ、ああ。まぁ、なんだ。リクを気にかけているツェトリ村の修道女にも話した事なんだけど。リクは言葉こそ通じないが困っていたり悲しんでいたりは顔を見れば分かるだろ??・・例えばヌオがモンスターに怯えていたら・・ピピカやカークはどうする??」


ピピカ:「撫でてやるかなぁ・・??」

カーク:「なるほどな・・」


カークは何かを察したように頷く。


コルツ:「リクも俺らもヌオもモンスター達も、所詮は育まれし生き物なんだ。やらせて見せて、褒めてやって寄り添う。そうすると悪い空気が無くなって上手く事が運ぶんだ」


ピピカ:「なるほど。まるで親父オヤジだな」

ピピカはそう言うと笑った。

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