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異世界から来たリクは本当に使えない  作者: 地底人のネコ
24/38

リク、盗みスキルを習得する。

神殿には煌々と火が焚かれ、キュラーテティアの巫女達が水色の薄衣と宝石を纏って円型の石台で踊った。


日焼けしたエキゾチックな楽団がハイテンポの太鼓を叩き、赤い絨毯には金銀の豪華な盃や皿が置かれ、その上に様々な果物や蒸した魚などの海産物が置かれていた。

緊張から解放されたからか、タキア王国の王子 ルア・コルス・タキアは僕の横でご馳走を頬張り、僕は僕で何がなんだか分からず、これで良かったのか正直言ってよくわからなかった。


とにかくわかる事は、この自由度が高すぎる壮大なオープンワールドの一章をクリアした事だ。


「ホルホリルリア ア ナニカ リク!!テ テ リアク ディオルーリア(お召し上がり下さいリク様!!ご入用があれば何なりと!!)」

「あ、ありがとうございます。えっと」


「エッダ タキアキンギカ ルア・コルス・タキア!!!」

神官は黙々と食べているタキアの王子、コルスを抱き寄せて言った。



「えっと初めましてコルス様??えっとあなたは・・」


「アヌ ア テモン。タキアキンギカ ゴッジナニヌ(私は神官のテモンです。タキア王国の神官です)」


「そ・・そうなんですか・・テモンさん初めまして」


「ジルア エーテパルテナ アヌ!!(それでは2人とも盃を)」


コルス王子は自分が呼ばれた事に気付いてビクッとすると手をフィンガーボールで拭いて盃の姿勢をとった。



お互いにアメシストでできた盃を持って、僕とタキアの王子はお互いの口に盃を傾けた。


果実を腐らせたような甘くてネットリとした匂いと味がする。

コルス王子は顔色を変える事なく飲み干すと、テモンにお代わりを所望した。


テモンはニコニコ笑いながら僕の肩をバンバン叩き、僕はスマホのディスプレイを見ていた。



『セイレーン島 奪還作戦 終了』

『撃破数×0』

『王都ベガまで1時間で辿り着いた ○』

『魔法で味方を助けた ×』

『味方の信頼を得て、これを率いた ○』

『神官テモンとその巫女達の自決を防いだ ○』


『トータルリザルト 150点』

『報酬 300オルガ』


成績はさておき、この後だ。


『ゲームを継続しますか YES ・

*』


「はぁあ!?!?YESしかないじゃん!!!!」



───────


「いやぁ、まさか1日でセイレーン島を陥落させるとはな!」

カークは王都の宴会の音頭を聴きながら、噴水のある広場で鎧の手入れをしていた。

他の兵士達も船の物資を運搬したり、身体を休めたり思い思いの事をしている。

長い航海での水は有り難く、時に服に浸した噴水の水を口に絞って飲む者も居た。



「それも、条件も出さず…実質の無血開城とは!カンズアキリクは、俺らの予想するより遥かに無鉄砲で向こう見ずだぜ!」

ピピカが騒ぎながら弩を分解して手入れする。

そこへコルツがやってきた。


「リクは!リクは見なかったか!?」


「ん?あぁ、リクなら神官達に連れられて宴会じゃないか?」


「そうか」


「どうしたコルツ??リクは伝説の勇者になり、俺らは報酬と産業を得るのだ。何を納得がいかない??」

ピピカが言いコルツは考えた。

「いや・・少しリクが遠い存在になってしまったなと・・」

「リクはいつでもリクだよ心配するな」


そこへタキア王国の使いがやってきた。

「カークとコルツ・・。そしてピピカですね?」








───────


ツェトリ村。

マザーアカナの教会には子供達が集まり、肉屋のベルトの話す『リクの旅の話』に皆が聴き入っていた。


「───それからリクは宮殿に仲間達を呼び、カークやコルツ、ピピカを『トモダチ』として招待した。絢爛豪華な黄金や財宝、美女達に目もくれず、ご馳走も口にせずだ」


「“トモダチ”ってなあに??」

カイル家の末っ子、ココが聞く。


「わからん。リクはキュラーテティアの神官であるテモンに『あなたの仰る“トモダチ”を連れて参りました』と聞くと、酷く赤面したそうだ!」

「「わあーーー」」

子供達がお互いを見て笑い合い、ガンロが深く頷いた。


「リクはこのアカナすら羨む愛されし世界で、財宝よりもかけがえのないものを知ったのだ。それは極めて近くにある・・。わかるね??」


「はーい。ガンロ様!!」


「なんか、すげえ闘いを見たいよな!!コルツ兄ちゃんがバタバタ敵を倒す話をさ!!」

ベルヴァが握り拳を作って空を切ると、クレアチスがベルヴァを思い切りゲンコツした。


「そんな事したらコルツ兄ちゃんが死んじゃうでしょうが!!」


「そうだよ!!さ!僕らも宴をしよう!!今日は呑みましょう??ね??ガンロ司祭??アーニャ??」

バッカスがどこからか持ってきた葡萄酒の入った陶器の壺を持って行った。


アーニャはアカナの像に寄りかかりながら、尻尾を左右に振って落ち着きがない。


「ガンロ様。それでリクは?」

「ん?」


「リクはどれくらいで戻ってくるのでしょうか?」


「俺もコルツ兄ちゃんに早く会いたい!!冒険の話はいいの!会いたいわ!」

「私も!」

「私もガンロ様!」

コルツの兄弟達がガンロに駆け寄る。


ガンロは髭を蓄えた顔でニコリと微笑むと不安げなアーニャの頭を撫でた。

「セイレーンに希望の光をもたらした今、きっと直ぐに帰ってくるであろう。一番面白くないのはギアーテ王国のヴァイターだろうが。なぁ?バッカス」


「ええ。ヴァイターは、伝説の勇者であるリクには逆らえませんからね。リクはヴァイターの許可を得ずに、戦争賠償を受けずにタキア王国を許してしまった。

メルトリッス諸島の公益や土地。

そこで採れる物が失われたのです。

面白くないでしょうね」



「ねえねえベルトさん!”ご馳走”ってどんなものだったのー?」

ココが肉屋のベルトに聞く。


「ん?えっとだな。宮殿の天井が見えなくなる程のエビと肉と魚がズラリと並び、甘くて美味しいネクタルが混々と湧き出る噴水、頬が落ちる程の甘くて瑞々しい果実があったと書いてある。

皿や盃は空になる事を知らず…水の女神の加護を受けた踊り子と賑やかな音楽は海からも聴こえ、人魚達を嫉妬させたとか」

「わぁーー」


「流石、セイレーン島と言う名前に恥じないね!リクやコルツが惑わされないといいけど‥…」

感動するココを他所にアーニャが意地悪く言った。



─────



それから数日後。

セイレーン島にはギアーテ王国の補給船が続々と入港した。

補給路を確保したギアーテ・メルポ公国の連合軍は、メルトリッス諸島の叛逆者を次々と倒して攻略してゆく。


リクの身勝手な独断により功績をあげる兄弟達に遅れをとってしまったヴァイター将軍は、セイレーン島の遺跡群を破壊して、新たなる砦を築いていた。


「倒せーー!!」

メルポ公国の職人達が現地の人を使って、太鼓腹の巨大で寸胴なマモー像を縛って地面に倒した。


鬱蒼としげるジャングルにメキメキと音を立ててマモー像が倒れる。

その衝撃も静まる前に職人達が巨像の首元にノミでキズを付けて、鉄の楔が入り込むきっかけを作っていた。


魔導師達はモンスター避けの煙を焚きながら駆け回り、神官達は太陽を睨みながら忙しそうに水を配り、運び出す労働者を杖で率いていた。


「あれは何をやってんだ??」

コルツがカークに聞く。

カーク:「砦の建材として運び出しているんだ」


コルツ:「建材って・・ありゃ何かの神様の石像だろ??」

カーク:「ああ。樹木の神であるマモー神だな」


コルツ:「マモー神??ここは水の神、キュラーテティアの領域だろ??」



ピピカ:「マモー神は始まりの大地を創り、植物を植えた神様だぜ?マモー神とアーズナニス。ミミエアルマが泥をこねて人間を創った。

この世界を最初に支配していたのは始祖人であるデルマ人であり、奴らが信仰していたのがマモー神だったのさ」



カーク:「ピピカ、お前詳しいな」


ピピカ:「当たり前だろぉ?逆になんてお前ら知らないのさ??まさか神様を信じてないとか?」

カーク:「俺は信じてないね」


ピピカ:「あそこに明らかに異世界から来たリクがいるのに??」


3人はリクを見た。

リクは巨像が倒される度に肩をすくめ、スマホをかざして観察していた。

そして振り返って指をさすとコルツに言った。


「*モアイ!!」


コルツ:「モアイ ノーノノ!マモー!」


「*マモー??」


カーク:「伝説の勇者様は、マモー神が倒される事に心を痛めておられるようだ」


カークがため息をつきながら言い、リクは尚もスマホでマモー神の像を調べていた。


「*コルツ君!!ちょっといい?」

カーク:「どうした?リク?」


リクは大きく手を振ると、草木に埋もれかかった道を指差す。


ピピカ:「なんだ?この道は?」

カーク:「随分前に忘れ去られた道みたいだ」

コルツ:「腕試しに丁度いい!ちょっと冒険してみようぜ?」


ピピカ:「晩飯になるモンスターもいるかもしれね!」


コルツ達は背中に付けた盾もそのままに、剣を抜くとリクの指し示す道を歩いて行った。

ピピカは弩を構えると先頭を歩く。



その数メートル先。

「ビン!!ビビビ!」

植物性モンスターであるマントラップの3体は、地面の僅かな揺れで侵入者に気がついた。

緑の球根の身体に、移動する為に付いた根を無数に持ち。

時折り球根の蕾から単眼が飛び出してギョロギョロと観察した。


「ビビビビビビ!カカカカカ」

侵入者を感知したマントラップが蔦の腕を絡ませてスキルを唱える。


深緑の神 マモー・ルルルガの加護であるスキル『深緑の絆』を発動させ、HPの増加と自動回復。索敵能力の数値を上げた。


カーク:「マントラップだ!!」

ピピカ:「任せておけ!」

「ギュビッ!!」

不意にピピカの弩が風を切り、突き刺さったマントラップが絶命する。

その動揺を逃す事なくカークとコルツが斬り込んだ!

カーク:「うおお!」


「キュビー!!」

マントラップの2体が後退しながら蔦の攻撃を繰り出す。


しかしカークの剣に防がれると、後ろに控えたピピカの矢が風を切った!

「ギュピ!」

マントラップに突き刺さり、驚いた所をカークの一振りで両断される。


カツン!

と言う気持ちの良い音と共にマントラップは縦に裂けて撃破された。



「・・リク?トドメを刺すんだ」

コルツは、最後のマントラップのHPを1にした状態でリクに任せる事にした。

マントラップの蔦は既にソードで断ち切られ、半分枯れかけた状態でグッタリしていた。


「*僕が遣るの!?僕?やる??」

「そうだリク。経験値を上げて強くならなければ立派な勇者にはなれない。次のターンで回復する前に殺すんだ」


「*うん!」

リクが持っていた剣でトドメを刺した瞬間、経験値が上がり。

遂にリクは『レベル5』に達した。


身体が光り、リザルトが表示される。


『 所持金 300オルガ(ツェトリに送金)

装備品: 伝説の仮衣 伝説のレイピア


Lv:5

HP:20

MP:30

攻撃力:5

防御力・・etc


魔法

スティルー

エイラタルデ(※MPが足りません)』


「*わ!コルツ君!スキルを覚えたみたい!」


コルツ:「お?リクが喜んでるぞ?」

カーク:「相手に使うスキルを覚えたみたいだな」


リクは(スマホ)見ながら自分でも使えるスキルのリザルトを確認した。


『スティルー:(邪神 アーズ・ナニスの加護を受けて発動するスキル。これを発動すると相手のアイテムが盗める)』


「*おおお!」

ピピカ:「どんなスキルなのさ??どんなスキル??リク??」


「*スティルー!」


ピピカ:「スティルーだって??」

コルツ:「攻撃スキルか??」


カーク:「いや。違うな。まぁ・・使えるには使えるが・・あまり喜ばれるスキルじゃないな。相手の物を盗めるんだ・・あまり良い印象は無いし・・盗賊ですら好んで持たないスキルだ」


コルツ:「盗賊だったら欲しいスキルなんじゃないのか??」

ピピカ:「盗賊が礼儀正しくスキルを使って盗みはしないさ。大体弱い者をナイフで切り裂くか・・殺しちゃうもん。たまたまスティルーを得ていた冒険者が薬草泥棒に疑われた事だってある」


コルツ:「そう言うものなのか・・まぁ確かに・・そこらへんの見ず知らずの兵士がスティルーなんて持ってたら近づかないもんな・・」


ピピカ:「だろ??ゴブリン族がスティルー持ってたら、討伐してくださいって言っているようなもんさ!」


コルツはどこか哀れみをもった目でピピカの肩に手を添える。

リクはそんな会話を知ってか知らずか、早速ピピカにスキルを試した。


「*スティルー!」

ピピカ:「うわ!おい!!いきなりかい!」

リクの差し出した握り拳が鈍く光ると、収穫物がないか手を広げた。


「*あれ?」

カーク:「失敗だな。ちゃんとイメージするんだ。えっと…リク?スティルーリア イマズィカリア!」


「*イマズィカ……イメージね!?そっか」


コルツが何か閃き、1オルガ硬貨をリクに見せるとピピカに握らせる。

リクはコルツに頷くと、ピピカに呪文を唱えた。


「*スティルー」


コルツ:「どうだ?成功か??」

ピピカは眉を上げると、手のひらにあるオルガ硬貨を見せた。

ピピカ:「失敗だ・・まぁ、そう言う日もあるさ」





───その後、コルツはメルポ公国の神官にその事を報告し、アルヴァース大司教を始めガンロ司祭の知ることとなった───


『リクはマモー神を不思議な鏡で観察した後、指し示す彼の地に向かった。

リクはヒユワシュカ(※弱い・ひ弱・華奢)なので、

瀕死にしたマントラップで経験値を与えた。


───(中略)────


それからリクが納得するまで『スティルー』を行ったが、成果は得られなかった。

5回目でMPが枯渇し休ませるも、リクは諦めずにスキルを試していた。

失敗しても初めて得たスキルに嬉しそうであった』

と語っている。

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