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異世界から来たリクは本当に使えない  作者: 地底人のネコ
21/38

パイレィゾ

心配するアーニャ。

そして、戦争に突き進むリク。


ゲームのプロローグが終わり、本格的なイベントが発生する・・。

「♪アカナ♪!!

ココナ アカナ♪(ここに アカナ神)!

アニシニテ アカナ♪(降臨したアカナ神の奇跡)!

アカナ ノーニネー♪


アア アカナ♪

ココナ アカナ♪

アニシニテ♪ アニシニテ アカナ♪

アカナ ノーニネー♪」


風車は軽快に回り、地下の深層から水を汲み上げ続けた。

ネルケが踊りながら水をかけ、他の村人と手を取り合ってマザーアカナの奇跡を祝い、歌っている。



ここツェトリでは長らくの悲願であった灌漑が成功し、麦の収穫の1回目が行われていた。


その収穫は大変な豊作であり、様々な国の民達が新しい雇用を求め入植してきた。

そして人々が行き来するとクエストも増え、人口が増えると様々な娯楽や商人達も来るようになった。


神官達はこの豊作を分析し

『リクが参戦した事で水の神キュラー・テティアが祝福を与えた』

『大地の神ミミエ・アルマが勇気づけられ、穂を付ける事に頑なだった植物達を芽吹かせた』

『ただただマザーアカナの大いなる業である』

『戦いの神メルル・ヴィアスが、リクとそれを育んだ村を祝福した』


と言い合った。

いずれにせよリクの勇気のある行動に神々は喜んでいる事で間違いはなく・・それは、この渇きの王との戦いが神々の強い意志によって動かされた物であると言う証拠になった。


ツェトリの村人達は神々に感謝し、美酒に酔い、祝い、踊る。



しかし、1人だけ心が罪悪感でいっぱいな者がいた。

アカナ教のガンロ司祭の見習い修道女、獣猫人のアーニャ・クローラウスだ。







ツェトリ村にあるタントリノの湾が見渡せる墓所。

コルツとリクがいなくなった後、アーニャは羊飼いの仕事をしては断るごとにそこへきて、湾に行き来する大きな船を見ては杖を光らせて見送っていた。


「ずっとあんな感じなの?」

「あぁ。」


「はぁー」

ガンロが良い、メメルが呆れる。

アーニャは静かに歌を歌っていた・・。




「*1

♪フェニチア ヌオターナ キャシリングシア♪(城下町を蹄の音が駆け回る)


ホーメ ア ディガード キンギディカ♪

(王子が帰還したそうだ!)


♫ホホ アプリルアルリー! ホホ ア ナイティイア!

(宴を用意せよ!近衛兵を集めよ!)


♪ホーメ ア ディガード キンギディカ・クイクリィエ!

(王子が帰還したそうだ!さぁ、早くするのだ!)」


────


「♪フェリチア トヒターナ キャシリングニー

(城内を足音が駆け回る)

ホホ ラバディ ナイティイア ファトマ ナイティイア

(ラバのような兵よ。バカな兵よ来るのだ)


ルヴァ ナイティイア! キンディカ フェニチア!

(愛する兵はどこだと王子は駆け回る)


♪ホーメ ア ディガード キンギディカ・クイクリィエ!

(サビ:王子が帰還したそうだ!さぁ、早くするのだ!)」



「アーニャ!」

メメルの声にアーニャがビクッとする。


「いつまで『魂送りの祭り』みたいな事やってんの!リク達が旅立ってそんな経ってないんだから、そんなに早く帰って来るわけないでしょ!?仕事までほっぽらかしちゃってさ!」

「耳は羊を向いてるし、尻尾はツェトリを向いてるわ!」


「そりゃ、あんたが向こう見たら反対を向くわよ!ふん!」

「それよりメメル・・」


「なに?」

アーニャは真剣な眼差しでメメルの方を向いた。


「この歌、王子の凱旋を祝う歌じゃなくて・・王子を心配する王様の歌だったんだよ!!」

「そ・・そう。それは大発見だわね」

「うん!」


「おーーーい!!」

「あっ、肉屋のベルトさん!」


肉屋のベルトが移動販売用のワゴンでやってきて、足の悪いガンロはすぐに空いたスペースに辛そうに腰をかけた。


「大丈夫ですか?ガンロ司祭」

「ああ。それよりベルトや。なにかリクの情報はあるか?」

「ええ!ありますぜ!大きな見出しになってますから!!まだ見てないけど」

ワゴンには沢山の干し肉や果物が積んであり、その横にも沢山の新聞や生花が刺さっていた。

ベルトはその中の新聞を抜くと、チラチラと読んで大袈裟に驚いた。


「こりゃあ、すげえ。リクの事が書いてある!うわあ!!」

「教えてベルトさん!!勿体ぶってないで教えてーー!!」

ベルトはこうしてイヤらしく新聞を村人に売るのだが、乱心したアーニャがリクの近況を聞くためにベルトに飛びかかった!!

アーニャに無いものは忍耐であり、その無い物を試された時、アーニャは百獣の王に似た凶暴性をおびた!!


「うわあ!!アーニャ!!教えるから!!」

「意地悪しないで教えなさい!!ベルトさん!!ガルル!」


ベルトがアーニャの殺気に驚いて思わず伏せるも、アーニャはベルトの頭に掴みかかって首を絞め、頭を振ってリクの最新情報を物理的に吐き出させようとした!


「アーニャ!やめるんだ!!く!!苦しい!!」

「ベルトさん!!情報を出しなさい!!!」


「教えるから!ぎゃあああああ!!」

アーニャがベルトの頭に思いきり噛みつき、ベルトはたまらずにアーニャの頭を殴って引き剥がすと墓所を転がった。


「ひぃい!たすけてー!!」

ベルトは走り、アーニャが四つん這いで駆ける。

そして墓石に飛び込むように隠れると間髪いれずに、鎧をも切り裂く強靭な爪がベルトが盾にしていた墓石に刻まれた!


「ベルトさん!教えて!この墓石に貴方の名前を刻む前に!私は取り乱してる!!手加減できないかもしれない!!」

「わ、わ、わ、わかったから!!落ち着け!!」


「落ち着きなさいアーニャ!!このバカ!」


メメルが帽子を落としながらアーニャを捕まえ、ようやくアーニャは治った。


「はぁ、はぁ、もう大丈夫か?」


「大丈夫よ。ねぇ、アーニャ?」

「うん!良い子にしてる!」


「なら、整列!!その獣のような牙をしまって、肉を見るような目で私を見るのはやめてくれ!」

「はい!」

メメルとアーニャは人形劇を待つ子どもの様にベルトの前に並んだ。

アーニャに至っては牙を出さないように口をギュッと閉じ、飛びかかる時に行う“足踏み”をしないように自分の足を踏んだ。


「その爪もしまってくれ!」

「はい!」

「ふぅーー。コホン、じゃあ、始めるぞ」


ベルトは新聞を開き、見開きいっぱいの挿絵を見せて説明した。

「『神官達が召喚した伝説の勇者リクは、“とある村”で生活に慣れたのち、オルオガーテ王国 ウィンツェルトに着港した。そこでリクは渇きの王の暴虐無人さに嘆き、悲しみ。ヴァイター将軍率いるメルヴナウタイの配下になるよう懇願した!』」


「リクが!!自分で!?」

アーニャが驚く。


「そう書いてある!」


「でも、言葉が通じないリクがどうやって・・!?」

メメルが首を傾げる。


「バッカスのお墨付きの印がある。もしかしたらバッカスが何かしらの通訳したのかもしれないな。続きを読むぞ?『しかし、例え異世界からの精鋭が参戦したとしても、歴戦の猛者達に必ずしも歓迎される保証は無かった・・!

伝説の勇者の前にたちはだかったのは、切込隊(ソードマン)であるローランだ!


ローランは決闘を申し込み、伝説の勇者リクは受けて立った・・!!

しかし、リクは斬りかかる事なくこれに勝利した!!マザーアカナが微笑んだのだ!』すごいな!!挿絵もあるぞ!!」


ベルトは新聞紙を広げて皆に見せる。


ガンロは目を細めてそれを見て、挿絵の一番の問題を口にした。

「うむ??どれがリクだ!?」


アーニャとメメルも挿絵を見る。

新聞の一面を飾る挿絵には、ムキムキで屈強な勇者と、その足下に縋る兵士。

そして倒れ込むソードマンが描いてあった。

群衆は影のように省略されているが、驚いた顔をしている。


「この足下にいるのがリクじゃないの??」

メメルが言いアーニャが食い入るように見る。


「この勇者がリクみたい・・」


「はぁ!?これがリク!?何をどうしたらこれがリクになるのさ!?挿絵絵師は頭でもうったんじゃないの!?」

「・・でも、そう書いてあるもん!」


「うむむ。アカナ教の印までしてある。絵の信憑性はともかく、リクは自分の力でローランと言う実在するソードマンを屈伏し、配下にしたようだ」

ガンロが顎の髭を触りながら言う。


アーニャ:「それは・・つまり?」

「本当の事って事ね。理由はどうあれど、リクは勝利した。これは私も認めるわ」


「リク・・・!!まだまだ弱い貴方がなぜ・・!?」

アーニャがタントリノが一望できる崖に駆け出す。


羊達がアーニャの為に道を開け、アーニャは倒れ込んだ。


「リク・・!リク!!無事でいて!!コルツ!リクを守って・・!!マズアアカナノーニネ!!アカナニヌゲーデルアノーニネ!!!!ううう!」


アーニャが首にかけたアカナの像を抱いて、うずくまるように泣き、メメルが困ったように杖を抱いて見守った。


「アーニャ・・」

ガンロがアーニャの肩に触れ、大きな瞳から溢れでた涙を拭う

「ガンロ様!私は・・リクを流刑にしてしまったようで罪悪感でいっぱいでした・・!!これは伝説の勇者としての運命なのでしょうか!?それとも、マザーアカナの残酷な試練なのでしょうか?」

「アーニャ・・今は祈るほかない。祈りなさい」



「もしも、リクが…死んでしまったら…」

「祈りなさい、アーニャ。向かった兵士達の為に祈りなさい。それが神官としての役目なのだ」



サーストテール山脈からの強い風が吹き、ベルトのワゴンに売られてる新聞が音を立て、書物がめくれた。





──────



「1人で手向かうなんて考えるな!!束でかかれ!!」

「やっ!!」

兵士が中型の盾をかざして一つの壁を作る。

船の甲板には砂がかけられ、陸地のようだ。


ヴァイター率いるメルヴナウタイの大船団が航行する。

メルヴナウタイの殆どは農奴など下級民、クエストを受理した冒険者などだ。


もともとギアーテ王国の将兵達は、戦った事の無い民達をいち早く軍団にできるスキルや文化を持っており、ヴァイターは他の兄弟達と敵の意表をつく為に模擬戦や訓練を怠らなかった。

ソードマンや戦士が、農奴出身の兵士達に武術を教える。


「リクを中心に陣形を持って守れ!さぁ、敵の騎馬兵が来たぞ!どうするんだ?」


ヌオに乗った騎兵が木剣を降りながらやってきた。


リクが驚き頭をふせる。

「防衛陣!!」

カークが叫び、リクの前に壁ができる!


ヌオが巨大な盾の壁に驚き、騎兵隊が手綱を引いて気を取られた瞬間、盾を破棄した軽装のコルツが飛び出した!

コルツが騎兵隊を抱くとそのまま強引に地面に落とした!

騎馬隊が受け身を取って地面に倒れると、両手をあげて降参する。


「そうだコルツ。敵の隙を見逃すな。武器に囚われるな。常に自由に。なんでも武器にしろ。勝ちに行け」

「はい!!」


「しかし、コルツ。こう言う時は短剣を使うのだ。騎馬隊が気付かぬうちに脇の鎧の繋ぎ目から突き刺すのだ。

ここを斬られると確実に殺せる。


鎧を叩き伏せては体力がもたない。

疲弊してしまえば剣も重く感じよう。

素早く、効率的に、なんでも武器にしろ」


「はい!!」


模擬戦は航海中に毎日のように続き。


1時間目は障害物競走(素早さ強化)

2時間目は筋力トレーニング(攻撃力強化)

3時間目は模擬戦(アビリティ・スタミナ強化)

4時間目は放したモンスターを仕留める狩り(経験値)

最後は砲撃と魔術や飛び道具を学んだ。





─────

そして3日目の朝に不意にそれはやってきた。



カンカンカンカンカンカン!!!!


「リク!!リク!!キンディカ!クリクリエ!!」

「えっ!?なに?コルツ?うわ!」

けたたましい鐘の音と共に、みんながハンモックから飛び出して服を着る!

僕はハンモックから落ちて、鎧に頭をぶつけた。


「パイレィゾ キルキリア!!パイレィゾ!!リク!!」

「パイレィゾ!?」

コルツが嬉しそうに僕の頬をパンパンと叩くと、手招きする。


あぁ、この動きからして。

大砲の準備をするのだとすぐに分かった。


すぐに特殊な油の染みた耐熱服を着ながら、僕らの大砲がある小部屋に向かう。

そしてレールに乗った大砲を僕とコルツとカークで押すと2人が叫んだ。


「オペアラアイヅ!!」

「オペア!」


ピピカが大砲が出る扉を開けた瞬間、朝の日差して目が眩んだ!

澄んだ青空に太陽が登り、その青い大海原の向こう側に明らかに他の船と違う黒くてボロボロの船があった。

「あっ!!船だ!!」

「フネ!ウンウン!パイレィゾ!!」

「パイレィゾ!?まさかパイレーツ!?海賊!?」


僕が言い終わらないうちに、人生で聞いた事の無いような風切り音と共に、遠くで水柱が上がった。

少し遅れてドン!と言う音がし。

大砲で撃ってきているのだとすぐに分かった!


「チョック!!クリクリエ!!」

「そうだね!!」

僕とカークが横に積み上げられた大砲を持ち上げると大砲の銃身に放り入れる。

ピピカが大砲の扉を開け、コルツが火薬の入った袋を大砲に押し込む!


僕はスマホを取り出すと画面を点けた。


最近気がついたのだけど、スマホはこうしたイベントがあると表示が変わるのだ。

ちなみにスマホの画面はカメラモードに変わり、大砲の砲弾が射出されて着弾するまでが軌道になって映し出されている。


ヒュルル・・!!


ドバシャ!!と言う音がして近くで水柱が立つ!

飛沫がピピカの顔にかかり、僕は慌ててスマホと連動して照準を決めた。


廊下に中継係の兵士が旗をあげ、一斉射撃の準備をする。

「チョーーック!!!!」


「チョック!」

僕がスマホで起動を選択し、準備が出来た事を知らせる。


導火線が伸び、コルツが火をつける準備をした。


「ドゥターー!!!!」

中継係が旗をふり。

慌てて耳を塞いだ瞬間、シンバルと太鼓を鳴らすような強烈な爆発音で頭蓋骨が震えた!

撃った衝撃で大砲が後ろにさがり、あたりにツーンとした臭いと黒煙が立ち込める!


「どうだ!!当たった!?」

「ネクシティア リク!!」

「うん!!」


休んではいられない!

僕は尽かさずカークと大砲を持ち上げる。


しかしパイレィゾは僕らの船団に驚いたのか、攻撃が効いたのか、船体を動かして背を向けはじめた。

僕らは無意識に船の動向に気を取られる。


「キ、キルキリア??(や、やったか?)」


・・・カークが呟いた後、一緒ピカリと光って何かが弾け、時間差で爆発音がした。

黒い船のマストが倒れ、船首が不自然に持ち上がると黒煙をあげながら横に倒れた!


どこかの部屋で歓声が聞こえ、僕らが勝利した事を知る。


「ウワーー!!ハッハー!!」

「僕らの勝ち!?」

「カチ!!ウンウン!!」

「わーー!」


僕は万歳をしてコルツや皆と抱き合う!

パイレィゾの船は黒煙をあげながら物凄い早さで沈みはじめた。

大海原の遠くで地獄の惨劇が起きているのかもしれない。

それでも、皆が喜ぶのを見て僕は嬉しかった。

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