リクのクエスト
リクが異世界に来て最初の試練が始まった。
リクの特訓は次のマザーアカナの安息日まで続けられた。
剣、弓、馬術・・。
そして魔法と行きたいのだが・・リクはなかなか言葉を覚える事ができなかった。
今回はコルツとアーニャと、近くの開墾された保安森で狩猟だ。
この杉の森をハルミオ(開墾・開拓)の森と呼び、建材にするために均一に植えられた木々が真っ直ぐ伸び、40年の間隔で伐採、根を抜き、植えて、間伐、伐採を繰り返した。
ここは現在の神官統一時代より前の、幾多の王国が凌ぎを削っていた時代から保安林として使われており、それ故に強敵のモンスターの出現も無かった。
「リク・・ルクナ ココナ(リク、見てごらん?)」
「うん」
コルツが落ち葉の僅かな擦れを指さす。
「キルアラビツ(キラーラビットの足跡だ)」
「キルアラビツ・・ラビット!?ピョンピョンする奴?」
「ウンウン。ピョンピョン」
コルツが鞘に収めた剣を地面につけないようにしながら慎重にしゃがむ。
そして、折れた苗木を指さした。
「枝が折れてる・・!」
「ウンウン。キルアラビツ・・」
「ピョンピョンする奴ね」
「ピョンピョン!」
・・まだ折れた枝は新しく、つい今しがた通ったようだ。
アーニャは遠くて見守り、杉の巨木に腰を下ろして上を見上げる。
静寂。
土の匂い。
杉の葉が擦れ合う音・・。
そして時より風で杉がしなり。
───カツン!───
と言う、形成層の成長によって木の裂ける音が響いた。
バサバサ!
チチチチチ!!
チチチチチ!
小鳥が枝にとまり、アーニャの耳がすぐに捉える。
チチチ!
チチチチ!!
小鳥は首を傾げると、素早く羽ばたいて杉の葉を揺らした。
アーニャの瞳が細くなり、忙しく動く小さな命を目で追った。
「カカカッ・・。ニャニャニャ・・カカカッ」
アーニャが無意識にクラッキングを始めると、かぼそく鳴く。
「ニャニャニャニャ・・・」
美味そうな小鳥だ。
両足を地面に踏み込んで飛びかかる準備をする。
チチチチチ!!
ビィーーー!ビィーーー!!
小鳥がアーニャの殺気に気付き、仲間に脅威を知らせる。
アーニャは思いとどまり・・ふと、かつて子猫だった頃を思い出した・・。
───────
神官統一時代、後期。
数人のローブを着た神官達がペンデュラムと言う先端に魔石が付いた魔具で測量を行なっていた。
「ここはハルミオの森です。この先に『ツェトリの丘』と呼ばれる丘がありまして、かつて渇きの王の臼砲部隊がタントリノの港に砲撃をしていた堡塁があります」
「ふむ・・リトルウィッチ族が居たと聞いたが・・?」
「えぇ。負けを悟ってアマーダ(現アマダヌンド)に撤退しました。子どもと獣を置いて・・」
「なぜ子どもを?」
「単に『必要なかった』からでしょう。魔法族は合理主義者で正直さを重んじます。時に子供と言うのは不安定で、嘘をつきますから」
「がんろさまーー!!ガンロさまーー!!」
そこへ毛むくじゃらの子どもが走って来た。
「ガンロ様!!この子は危険です!下がってください!」
神官が杖を光らせて、子アーニャの前に立ち塞がる。
子アーニャの口には大量の血が付き、両手には大量の羽毛が付いていた・・。
「大丈夫だバッカス・・杖を下げよ」
「はぁ・・ですが・・」
「大丈夫だとガンロが言っている」
「・・・」
神官ことバッカスが杖を下げ、1人の神官がローブを捲った。
そこには、目頭に笑い皺がある 温厚そうな若きガンロが居た。
子アーニャがガンロの足下でピョンピョンと跳ねる。
「ガンロさま!!鳥はおいしいのです!!あそこにあります!!一緒につかまえましょう!!」
「そうか、そうか。後で戴くとしよう」
「はい!がんろさま!!アーニャがつかまえます!!たらふく太ったのをつかまえてみせますからー!」
子アーニャがビュンと駆け出し、バッカスや他の神官達がお互いを見る。
ガンロは駆け回る子アーニャを見ながら言った。
「バッカスよ、言い忘れたが・・私は告知の夢を見たのだ」
「へ!?どんな夢ですか?」
「そのツェトリの丘に村を築く夢だ。故にタントリノはバッカスに任せる事にする・・」
「は!?ギアーテ王国タントリノを私に任せる!?このバッカスに!?しかし・・アルバース大司教が何と仰るか!!アルバース大司教はガンロ様にタントリノを任せると────」
「がんろさまー!!はやく、はやくぅー!」
「うわっ!!」
子アーニャが捕まえた小鳥をガンロに見せる。
まだ息があり、僅かに動いている…。
たまりかねた神官達が叱責した。
「メルヴィアの召喚獣 テテュリスよ!!そんな不純な物を高潔な神官に見せてはいけない!!すぐさま棄ててこい!!」
「・・これはがんろさまの物だもん!!ベーっ!!」
「何を!!」
「まぁまぁ」
「ガンロ氏!!」
ガンロはアーニャの前にしゃがむと白い布でアーニャの顔を拭いた。
そして瀕死の小鳥の首を捻ってトドメをさす。
「私はアーニャとリトルウィッチ族の孤児とツェトリの丘に残ろう・・。そして村を築く」
「あの何もない土地にですか??」
「あぁ。アーニャは私が一人前の修道女にしようぞ。一緒に暮らしてくれるね?アーニャ??」
「はーい!!がんろさまー!!」
───────
アーニャは静かに思い出し笑いをするとリク達を見た。
「リク・・ルクア ココナ キルキルリア(リク、あそこに居る。仕留めてみろ)」
コルツは首にかけていた弓をリクに渡すと、射抜いてみせよとジェスチャーをする。
「うん・・できるかな」
リクは理解したのか弓を持ち、枯草のなかに狙いを定めた。
ビシュッ!!
「キリキリキリキリ!!キュルキュルキュル!!」
枯草から一本の角が生えたキラーラビットが飛び出し、尻に弓矢が刺さって鮮血を流していた。
「アァ!!セアルイア キルキルリア リク!!ノーノ ホホル パルシオラル(あぁ!情けをかけたなリク!!それはいけない事だ!!)」
「うわわ!」
「エア リク? シムルル セアルイア キルキルリア バンザ、テアルイハ! クロド イエルティーバルテ ノーノノ! エスカーダ??(いいかリク?時に情けは苦しみを生み出すのだ。それは良い事では無い時だってあるんだよ。分かったかい??)」
「・・うん。すいませんでした」
コルツは人差し指をリクに当てると忠告し、痛みでもがくキラーラビットの耳を掴んで、頭を捻ってシメた。
リクはぐったりするキラーラビットを受け取る。
コルツは、じっと見つめるアーニャを見ると肩をすくめた。
草原にヌオの鎧を着たリクとコルツが立つ。
「リク!!エペ!チョーーーーック!!」
「はい!!」
リクは盾を上げて木の片手剣を構えた。
左足を前に、右足はつま先を上げ、剣の攻撃を振りかぶれるようにスナップを効かせる。
コルツも同じ構えをする。
「ヘエアッ!!」
「ぐ!!」
コルツの一撃がリクの盾を震わせる。
リクも負けじと木の片手剣を振り下ろし、コルツの剣と交わった。
カンッ!!
と言う高い音が草原に児玉し、遠くで見ていたアーニャの耳がピクンと上を向いた。
「うわぁ!!」
コルツの盾がリクの腕に当たり、リクの持っていた木の剣が吹き飛んだ!
クルクルまわりながら飛び、地面にストン!と突き刺さる。
「え・・えーと」
リクが盾を広げて武器がないことを示しても、コルツは構えたままだ・・。
「コルツ、武器がない。いっかい辞めにしよう??」
「リク!!エ ア オンス バトルディア キルキルア!!(リク、戦場では殺しがあるのみだぞ!?)」
「え!?うわっ!!」
コルツが振り上げ、慌ててリクが逃げる。
「はぁ!!はぁ!!武器を持ってないのに攻撃するの!?」
「デュレ ウェラポス!!ルクア スァルスエ オンライヅ!! リク!! レーラオ!! サルヴァード!!(何でも武器にしろ!!生きる方法を見つけろ!!リク!!来い!!戦え!!)」
コルツが鬼の形相で向かってくる・・!!
「は・・はぁ!!は・・はぁ・・!!」
リクの顔から血の気がひき、盾を持つ手が汗で湿る。
草原が風で大きくうねり、訓練でかいた汗を冷やす。
『リク・・リク!!』
コルツの後ろから誰かが呼ぶ声がする・・。
リクが窮地に達した時に現れる、イマジナリーフレンドのヒロキだ。
「・・ヒロキ!!」
『リク・・!!こんなモブキャラのNPCなんてキルしちまえよ!!訳ねぇだろ!!』
「・・・・!!」
『やっちまえ!!グチャグチャにしてやれよ!!』
「うわーーー!!」
リクが盾を持ったまま突進し、コルツがヒラリと交わすと、片手に持った盾で思い切りリクの左脇腹を殴った。
その衝撃は凄まじく、鎧と盾に挟まれた腕も巻き込まれ、たまらずリクは持っていた盾を左手に持ち替えた。
「ぐえっ!!」
「エア リク!!デュレ スァルスェ ノノノ!!イファ アヌ イルク!!ココナ バルドフィルア イルクア!!(いいかリク!!情けをかけるな!!それが俺であっても!ここは戦場なのだから!!)」
コルツが剣を降りおろし、リクが盾で防いだ。
頭を防いだ瞬間、コルツの前蹴りが炸裂し、リクが吹き飛ぶ!
「うええ!!ゴホッゴホッ!!」
「リク!!エステパスノーニ!アヌ ゲルゲニ ノーニ!!(リク!一撃でもいい!俺に食らわせてみろ!!)」
「く・・!!くそ!!・・くそ!!」
リクは起き上がると、コルツを睨みつけた。
その瞳は赤く燃え上がり、コルツに対しての殺意をのぞかせていた。
『そうだ!!そうだよ!!自分を解放しろ!!ぶっ殺せ!!』
ヒロキが叫ぶ。
「エ ア アイヅ リク!!ドードラ!!ザルバド プリキア!!(その目だリク!!どうだ!!戦いたくなっただろう!!)」
「うわぁーーー!!」
リクは、地面の泥を掴むとコルツに投げつけた!
そして盾を捨てて思い切り飛びかかる!!
コルツも盾と剣を捨ててリクに立ち向かう!!
そして────
「うぁあああーー!!」
ガツン!!
リクはコルツの右ストレートで吹き飛び、完全にのびてしまった。
「リクーー!!キュラーー!!」
アーニャが慌てて2人の前に割って入り、杖をかざして回復魔法を使ってリクとコルツを癒した。
皮肉な事に、アーニャはリクを癒しすぎて回復魔法のレベルを上げてしまった。
これによって、傷の患部に直接回復魔法を使用していたアーニャであったが、今回は杖で魔法を唱えることで全身を癒すことが出来た。
アーニャがコルツを叱る。
「コルツ!!ゼルゼル ノーノノ!!(コルツ!イジメはだめだよ!!)」
「へ!? ノーノ ゼルゼル!!(へ!?イジメじゃないよ!!)」
「はぁ・・はぁ・・ダイケア アーニャ。ありがとうコルツ」
「「リク!!」」
アーニャとコルツが駆け寄る。
リクは弱々しく笑いながら2人に感謝した。
───────
数時間の剣術が終わった。
リクが遠くで必死に盾と剣で素振りの練習をしている。
血で汚れていない真新しい剣が、西に傾いた太陽を反射させ。
コルツが身振り手振りで必死に教えた『上から来たらこう・・横から来たらこう』と、盾で受けて剣を振る練習をしていた。
「はぁ・・」
コルツは革の兜を脱ぐと、羊の膀胱で出来た水筒で喉を潤した。
アーニャも『修道女の杖』を置き、隣にしゃがむ。
「コルツ、どう思う??」
「・・リクの事か・・」
「うん」
コルツは栗色の短髪をクシャクシャ掻いて、リクを見た。
「・・・・厳しいかもしれない・・」
「・・そう」
「・・きっと敵はリクを狙うだろう。リクはきっと、本当に命を奪った事がないんだと思う。心が優しすぎる。それはメメルの言っていた事は間違いないと思う・・それは認める」
「うん・・。それで、コルツ。次の安息日なんだけど・・」
「・・わかってる。肉屋のベルトさんから聞いた」
「よろしくね。ガスパーも本望だと思うから・・」
「・・おう」
コルツはリクに手を振ると、水筒を放り投げた。
「*おわっ!!」
リクが羊の膀胱で出来た水筒をキャッチすると栓を抜いて夢中で飲み始める。
コルツは木で出来た剣を掴むとリクに向かって叫んだ!
「リク!!それ飲んだら、また特訓をしよう!!相手になるぞ!!俺はリクを見捨てない!!
*リク!!*一緒!!*強くなろう!!」
リクがハッと顔を上げて大きく頷いた。
───────
早朝。
まだ日が明けぬ頃。
マザーアカナの安息日の初日。
必要最低限の魔光石の灯りのみが部屋を照らしている。
ガンロが深呼吸すると、ローブを羽織りドアを開けた。
「こんばんは、ガンロ司祭」
外套を着た肉屋のベルトとコルツが暗闇から顔を出した。
コルツの手にはガスパーの首輪が硬く握られ、ガスパーは逃げ出す事はおろか、首を動かす事も出来なかった。
ガンロが聞く。
「アーニャ・・本当に良いんだね」
「はい・・ベルトさん。コルツ。よろしくお願いします」
「リクは・・??」
「よく寝ているわ。それではガンロ様、よろしくお願いします」
「うむ。大いなるマザーアカナよ・・月の天宮よりご覧賜りますよう・・」
ガンロが純金の杖をガスパーに置き、小さな祈りを捧げる。
ガスパーは、これから自分が捧げ物になる事を理解しているのだろうか?
そして、暫くしてコルツとベルトと共に屠殺場に歩いて行った。
「メメメ」
と、アーニャに向かって鳴き。
アーニャは空を見た。
・・・・。
アーニャは家に戻ると、麻のエプロンの皺を伸ばして咳払いをし、リクの部屋のドアの前まで立った。
ガンロはパイプを燻らせながらそれを見ている。
トントン。
「リク、入るよ??」
リクは訓練の疲労からか、うつ伏せで寝ていた。
「リク??リク??」
「・・・・・・*ん??何??」
リクはあくびをすると、目を擦る。
アーニャはリクの眠るベッドに座ると、リクの為に拵えた剣を手に取って抜きつれた。
リクは驚き、アーニャの隣で正座する。
いつもと唯ならぬアーニャの仕草に驚いたようだ。
「リク?言葉が通じるかわからないけど、お願いがあるの。『お願い(プリキ)』わかる??」
「お願い(プリキ)・・??」
「うん。うん」
「*・・・??」
リクが惚けた顔をする。
どうやらアーニャが何かを要求していることを、リクは何となく理解したらしい。
アーニャが真新しい剣を指差し説明する。
「リク。この武器で(ウエラポス)。ガスパー。殺してほしい(プリキ キルキルリア)」
「*ええ!!それは・・!!ええええ!!」
リクがすっかり目を覚まし、窓の方へ飛び退く。
メメルが分析せずとも、その目には恐れがあり。
メメルが言わなくとも勇者とは言い難い優しい瞳をしていた。
「リク・・あなたは(エ ア)勇者!」
「*ヤダヤダヤダ!!殺すなんて!!」
「やるの(キルキルリア)!!」
「*ヤダヤダ!!」
「やれ!!リク!!」
アーニャが体毛を逆撫でながら強引に剣を握らせる。
リクは抜き身の剣をベッドに置いておく事も出来ずに、あたふたした。
「戦うんだよリク!!」
「*うううう!!!!」
「リク!!しっかりなさい!!修道女アーニャの名において命ずる!!」
「*できない!!ノーノノ!!」
ガンロは口を出さず、2人のやり取りを見守り。
やがて少し離れた自室に戻ってしまった。
窓の外ではリトルウィッチ族のクルツとメメルが静かに覗いて囁き合っている。
────数時間後、リクは剣を持って家を出た────
アーニャは杖を握って、屠殺場の外で見守った。
メメルが夜の暗闇に紛れて出現する。
「アーニャ。思いきったわね・・。あれほど溺愛していたガスパーを安息日のお祝いに使うなんて」
「・・これは私の為の儀式でもあるの・・リクは命を奪った事がない。そして私は1匹の子羊を贔屓してしまった。マザーアカナに捧げなくてはならない物を・・生意気にも渋って身勝手な財産にしてしまっていた」
メメルがアーニャを見上げた瞬間、コルツとベルトの格闘する音が聞こえた。
「コルツ!!しっかり持ってろ!!」
「わかってら!!リク!!一思いに〆ろ!!それが優しさだ!!」
グオオオオオオオ!!
グオオオオオオーー!!
グオオオオーー!!
「リク!!しっかりやれ!!」
「ベルトさん!押さえつけて!!リク!!泣いてないで〆るんだよ!!頭を狙え!!一思いに!!」
グオオオオオオ!!!
ギュオオオオオ!!
グオオオオ!
グオオオオ!!
「早くしろ!!リク!!手加減をするな!!バカ!」
「ベルトさん!バカは言っちゃダメです!!」
グオオオオオオ!
ギュオオオオオ!!
キュオオオオオオオオオ!
クゥウウウーーン・・。
クウウウウウ・・・・・
シーン・・。
・・・・。
・・・・。
夜が明け、陽の光が村を照らす。
メメルが目を細めてあくびをする。
・・・・。
・・・・。
「静かになったね」
「うん。プッ(アーニャの放屁)」
「ちょっ、そこで屁をするの・・?」
「うるさいなメメルは。少しは静かに見守ってよ。私とリクにとって重要な事なんだから」
「えっ?私が悪いわけ??」
2人の会話を他所に煙突から煙が上がり、嫌でも美味しそうな香ばしい匂いがした。
ドアが乱暴に開け放たれ、リクが足を仕えながら転げる様に飛び出した。
そして顔を俯いて隠すと、離れにあるトイレの近くにあった大きな木に座り込み、うずくまって肩を震わせはじめた。
「わぁ・・泣いてるよ」
メメルが驚き、アーニャは歩み寄ろうとする。
しかし、アーニャの尻尾が右や左に彷徨い。
くるりと引き返して屠殺場に入った。
太陽が登り、ニワトリが鳴く。
やがて大木で泣くリクを他所に、ツェトリ村の朝が緩やかに始まった。
ガスパーの体毛は冬用の毛皮にするためにアシッドスライムの液樽に漬けられ、内臓は刻んで腸詰として加工され、骨はスープの出汁や魔道士の占いに使われ、首の肉や骨はシチューに、爪や指の骨は装飾品や玩具に変わった。
いつしか屠殺場の周りには人集りが出来て、羊のお溢れを貰おうと鍋を持って来る者も現れた・・。
やがて御者の運転するワゴンが駆け抜け、子供たちの遊ぶ声が聞こえ始める。
「今日はクレアとクレアチスのお祝いの日だ!!」
「肉、肉、肉〜!!」
「肉だ!!うわぁあー!!リクー!!リクー!!」
ナイケガスタが大木にうずくまるリクを発見する。
「リクが居たぞー!!うんこ!!」
ナイケガスタはリクの顔を覗こうとすると木の棒で突いた。
そしてすぐに飽きてしまい、パタパタと美味しそうな匂いのする場所へ駆けて行く。
やがて昼になり、広場に長テーブルが置かれ、急いそと昼食の準備が始まる。
リクは放心状態のまま食事会が始められ、ココとクレアとクレアチスは綺麗なドレスを着て花冠をした。
フンチャツカウーデ、ゲアゼ♪(大地を打って、耕し)
♪フンチャツカウーデ、ゲーデル(大地を打って、耕した)
イーデ、エーデ、フンチャカウーデ、ゲーデル♫(先祖代々。大地を打って、耕した。)
セクティー、アルマ、アカナナセクティー♪(光りある大地の光となるアルマ。アナカの偉光よ。)
アヌ、フンチャカウーデ、ゲーデル♪(私は大地を打って耕します)
アヌ、アカナニヌ、ゲーデル♪(私はアカナの寵愛を受けて耕します)




