勇者の剣
バッカス司祭とアーニャのもと、リクは『勇者の剣』を手にする。
朝
「ふんふんふんふん♪ふんふふーん♫」
アーニャはインクを取り出すと、手紙を乱暴に平たくして、羽根ペンをペロリと舐めて手紙を書き始めた。
───それから幾日が経ち、アーニャとコルツとメメルはリクに出来るだけ多く話かけ、積極的に森へ出かけ、剣術を磨いた。
アーニャはこまめにアルバース大司教に手紙をよこし、ガンロ司祭とバッカス司祭の期待に応えようとした。
手紙によると
リクは日が沈む頃に“自力”で帰って来たあと、しばらく言葉を話す事なく一点を見つめていたと言う。
しかし、次の日の朝になると何事もなかったかのように語学の練習をし、子ども達とヴァレニエと言う松のジャムを作る為に森へ出かけた。
『まるで踏まれた麦が翌朝には立ち直っているようにリクは根強く帰って来ました!』
とアーニャは天井付と言うマザー・アカナの奇跡を記す時の独特な書式で大袈裟に書いた。
『アーニャ?時にリクは異世界語を喋るかい??』
とアルバースが尋ねると。
『えぇ!よほどツェトリが気に入ったようで夜になると同じ異世界の言葉を言います!
“”カエリタイ“”
“”オカアサン“”
最近は言いませんが皆でご飯を食べると
“”マズイ””
“”オイシクナイ””
と良く発音します!言葉が分かればいいのだけど!』
とアーニャは綴った。
────
麻のシーツの手触りと、乾燥した羽毛の匂い。
馬車が駆け巡る音と鞭を入れる音。
そしてニワトリの鳴き声がした。
目を開けなくても分かる…ここは異世界だ。
・・・リクは絶望的な気持ちで目が覚めた。
もしかしたらと望みをかけてスマホを見る。
「はぁ・・」
やっぱり『退室』ボタンが無くなり、電池も一つだけ減って3つになった。
ゲームの世界なのにスマホの電池が消費され、ゲームの世界なのに僕の居た現実世界の荷物がそっくりそのまま目の前にあるのだ。
ゲームから出られない。
まるで賑わう海水浴場で、1人だけ溺れて苦しんでいるような、何とも言い難い底しれぬ恐怖がリクの全身を駆け巡った。
スマホの画面には派手な紙吹雪の演出と
『『ギルド』『バー』『タントリノ』『武器屋』『床屋』『肉屋』が解放されました!!』
と、能天気なメッセージが映し出される。
運営にメッセージを送っても不通だし、フレンドと言っても違うゲームをセッションするくらいの浅い友達しかいないので相談できない…。
焦りと恐怖をよそに、常にオンラインのリクはゲームに没頭する道楽者と思われているだろう。
「くっ!!」
イラッときて、スマホを地面に叩き壊そうとするも思いとどまり。
リビングの方から物音がする事に気がついた。
恐る恐る開けると・・。
「くぅーー。すぴーーー」
と言いながら寝ているアーニャが居た。
「あ・・アンガ・・プルーテ・・アンガ・・ムニャムニャ」
アーニャは手紙を書いたままうつ伏せで寝ており、白目をむいて鼻ちょうちんを出している・・。
鼻ちょうちんなんてアニメとかフィクションの世界だと思ってた。
じゃあ、今言った寝言も
(もう・・食べられない・・)とか凄くベタなセリフだったりするのだろうか?と、リクは思った。
とりあえず起こさないようにリビングをぬけると聖堂に続く廊下にあるトイレで用を足した。
トイレと言っても粗末な物で、石灰を切り出して箱になっており、丸く切り抜いた穴の中に壺があってその中に糞をする。
終わると水瓶で掬って洗い、焼いて砂状になった砂で肛門を拭くのだ。
ウォシュレットで洗浄するものに慣れたリクの肛門はヒリヒリと傷み、異世界に行きたいと願った事はあってもトイレがどうなっているかなんて考えもしなかったので、これには衝撃的だった。
トイレと食事と言葉の違いは確実にリクの精神を削り、ホームシックなるには十分の破壊力を秘めていた。
「ふう・・」
しかしリクの朝が現実世界でも糞して始まるように、リクの異世界生活も糞から始まるのだ。
何よりの違いは学校に行くか行かないかだが、リクの副交感神経は異世界でも『日常』を取り戻しつつあった。
「すーーーすぴーーー」
アーニャは相変わらず寝ている・・。
「あっ」
「メメメ!」
アーニャの足下にガスパーが寄り添う。
「メメメ」
ガスパーはテーブルに寄り添うと書きかけの手紙を静かに咥えて引っ張った。
アーニャは変わらずに眠り、羽根ペンからインクがツーーっと手紙から離れると同時に線を書いた。
パンッ!
と言うベタな音と共に鼻ちょうちんが割れ、アーニャは顔半分はあるんじゃないかと言う大あくびをした。
「ニーデ・・ガスパ・・」
アーニャがガスパーをそっと撫で、すぐに耳が此方を向いてリクに気づいた。
「ラーナ、リク。ふぁああ。」
「えっと、ラーナ、アーニャ」
リクが言葉を繰り返すとアーニャは、ハッとしてリクを見た。
そして
「ラーナ(おはよう)!リク!!ふふふ!ふふふふ!」
と、笑った。
そしてアーニャは異国語を喋る。
「リク!エ ア プリキキア カーア エペ?
(リク!剣が欲しいでしょ?)
ツェトリナイティーロリア カーア エペ!
(ツェトリの騎士たるは、剣を買わないとね)!」
「えっと。うんうん」
「アヌ プリキ ストパテ クリクリア!(すぐに準備するから待っててね!)」
と言ってバタバタガッタン!と準備を始めた。
火を起こし、リクの為に麦粥を温めてくれているのだろう。
・・そういえばガンロお爺さんはどこだろう?
「アーニャ?」
「ん?」
「えーと。 ガンロ??」
「アァッ! エ ア マ・ルダガンロ タルデ? アヌ ナニヌ ノーノノ(あぁ、ガンロ様?私も知らない!)」
ドタン!!
「アルアニャーチカ!!!!」
「うわぁっ!!」
ドアがバタンと開け放たれ、勝手口から小さな背丈の甲高い声のメメルが入ってきた。
「アーニャチカ!!エ ア ティケンアエペ リクア!? アー ノーノアクリクリ!!(アーニャ! リクに剣を買ってあげるんでしょ!? 私待ってるんだけど!!)」
「ホワッ! メメル レーア キルキリアル! ジー ホンググル リク(メメルは行くき満々だね!でも、リクはお腹を空かせているわ!)」
「リク・・!?・・ふん!」
メメルはリクの所までツカツカと歩いていくと、背丈も相待って下から覗き込むようにジッと観察した。
「アヌ ハタラツァ。アンガ!(分かったわ。私も食べる!)」
「ハァ!?」
「アヌ ストパテ エント アンガ!!(待つものアレだから私も食べる!!)ディアロウ?(あるでしょ!?)」
「ディアロ!!(あるよ!!)」
メメルがちょこんと椅子に座り、不機嫌そうに口を曲げると、バサリと首に布巾をかけた。
しかし足下のガスパーに驚き、慌てて椅子を後ろに下げる。
「メメメ!」
「ワワ!エ ア ヅヅジ ココナテア!!(わわ!なんで羊が居るのよ!!)」
「ヅヅジ ノーノノ ガスパー!!(ガスパーだよ)」
「は!?」
「ガ・スス・パー!!」
「きゅーー!!」
「あっ!!ニーデ リク(リクもおいで)!!エ ア アンガ?アカ ナニヌ ゲーデル(お腹空いているでしょ!?マザー・アカナにお祈りをしましょう)」
アーニャが乱暴に鍋から麦の粥を出すと、少し汚れが付いた皿に盛り始めた。
潔癖症なリクにとって、汚い皿に盛られるのはかなり抵抗があったが・・。
・・ところでガスパーの事だが、メメルが驚くと言うことは家に羊が居るのはおかしい事らしい。
衛生面は日本とは違い、そこまで手は洗わないし服も毎日は洗わない。
しかし、意外な事にお風呂には良く入るようだ。
森に出かけた時は巨木を切り抜いた風呂桶が置いてあり、わざわざお湯を溜めて入浴し。
帰った後も真っ先に風呂に入る。
もちろん、ガンロの職業柄と言うのもあるのかもしれないがアーニャは何かに付けてお湯を沸かし、鼻をクンクンさせながら念入りにリクとガンロを風呂に入れた。
「不味い・・」
リクは言葉が通じないので普通に愚痴を溢す。
「ン? エ ア・・・テェイスティア?(ん?それは・・美味しいって言う意味??)」
「テェスティア ノーノノ(不味いわアーニャ)」
「ノーノノ?? ジー リクア テイスティア アンガ? エ ア フーディタント メメル!?(不味いぃ?リクは美味しそうに食べてるよ?メメルの舌がバカなんじゃなくて?)!?」
「エヌ・・レアル・・ノーノノ!(いや・・ほんと・・。不味いわ!)」
メメルが皿で顔が隠れるほど麦粥を掻き込み、アーニャが口から粥を飛ばしながらニャーニャーと騒ぐ。
リクは黙々と粥を食べながらブドウジュースで無理やり流し込み、尽かさずアーニャが陶器の片手容器でブドウジュースを注いだ。
「(陸・・陸)」
そんな中、リクの心に巣食うものがあった。
それはリクが現実世界で孤立した時に出てくるイマジナリーフレンドで、不思議なことにかつてイジメられていたヒロキに似ていた。
リクは孤独に苛まれると、この妄想の友達『ヒロキ』を作り出し、実際は何もいない空間に話しかけると言う究極の逃避方法を身に付けていた。
そして『リクの中のヒロキ』は暴力や力の象徴でもあった。
「(なんだよヒロキ?)」
ヒロキがアーニャの隣に座ってニヤニヤと笑う。
「(コイツら、ただのNPCじゃねーか。こんな言葉が分からない村に居ねえで、世界がどれほど続いているか見てみたくないか?)」
と言った。
「(でも・・スライムだって倒せないし・・レベルも低いし・・)」
とリクが言うと、ヒロキはテーブルの淵に座って考えた。
「(・・そうだリク。武器屋とタントリノが解放されたんだろ??万引きしてやろうぜ??)」
「うるさいな!」
僕は心の中のヒロキを振り払うように頭を振った。
「リク? エ ア ディアド(リク 大丈夫?)?」
アーニャとメメルは不思議そうにリクを見た。
────
「イラ!レーラオ リク!ハイヤッ!!(じゃあ行くよリク!ハイヤッ!!)」
「お、おじゃまします」
僕はアーニャの運転する馬車に乗った。
僕が左でアーニャが横。
そして売りに行くのか、沢山の毛皮が後ろに積まれていた。
そしてその荷物の間にメメルの杖がキラリと見えた。
きっと荷物に紛れているのだろう。
ガチャコ・・・ガタガタガタガタ!!
「うわあ!」
リクはあまりの振動に椅子にのけぞる。
馬車は動きだし、馬の吐く息が臭い。
リク達の出発にツェトリ村の子らが出迎えに行くる。
「アーニャチカ!!!ワーー!!リク!!」
バタバタと靴の擦れる音がして無駄に全力疾走だ。
「コルネー!!コルクリアーー!!ふふふふ!」
アーニャが呼ぶ。
村で一番足が速いコルネとコルクリアが手を振りながら追いかけてくる。
リクの手をとりアーニャがブンブンと手を振った。
「デンダ!!シップ!!シュー!!(危ないでしょうが!!)」
「アハハハハ!!」
メメルが杖を振りながら威嚇し、アーニャが笑いながら鞭をいれる。
馬車は速度を増して水路を越え、麦の平原を登ってドラゴンの像まで来た。
「トードラ!!アカナニヌ ウチャツカ ルヴア(どうよ!!アカナに愛されし大地は!!)」
アーニャがリクの肩をバンバンと叩き、僕はその大自然の雄大さに驚いた。
沢山の小型の恐竜の大群が脇を通りかかり、様々な塹壕や朽ちた大砲のある場所を通り過ぎる。
砲弾は規則正しくピラミッド型に置かれ、どれも綺麗に配置されたまま朽ちているので、もしかしたら使われる事が無かったのかもしれない。
アーニャはメメルと喋りながら時より笑った。
そしてリクが何かを一点に見つめると、アーニャは指を差しながら一生懸命異世界語で説明した。
リクはいつしか寝てしまい、時折アーニャがレモン水の入った瓶を渡してリクに飲ませた。
「タントリノ!!リク!ギアーテ・キンディカ タンクリア(ギアーテ王国 タントリノだよ)!!」
「ここが・・タントリノ!!」
坂道を下ると沢山の人達が歩いていた。
ゴドン!と言う音がして石畳の滑らかな道路に出る。
石畳は振動が少なく、それだけでも都会に来た気がする・・。
リクは冒険者の一団を見た。
皆、立派な剣や宝玉の付いた杖を持っている。
アーニャを見ると右手を胸にあて、アーニャも会話をやめて同じポーズをする。
街並みは3階建てで、石灰質のレンガ造りの1階と、2階から3階は太い柱の木造で、白い漆喰だった。
建物と建物の間にロープが通され、様々な模様の旗が靡いている。
様々な荷馬車や鎧を着た戦士達の列、騎士の巨大な絵が街中に掲げられ、その下に赤いインクで撃破した数が書かれていた。
「ヘェーオ!トトクリア ビガ!! ヘェーオ トトクリア ビガ!!」
男が新聞を配りながら呼びかける。
三角帽子を被った魔導士らしきお爺さんが弟子らしき人達を数人連れて歩いている。
工房らしき巨大な煙突から煙が昇り、開け放たれた観音開きの室内で上半身裸の職人達が器用にガラスを吹いて形作っていた。
皆、どことなく忙しそうで何かしらの仕事をしている。
すると唐突にアーニャが馬車を路肩に止めた。
「ニーデ!リク!」
「え!?ここで降りるの!?」
「ウン!プリキ メメル!!(うん!メメル お願いね!)」
「ウィキチラ!アーニャ!(わかったわ!アーニャ)」
アーニャが蛇をあしらったポールにロープを結びつけると、メメルはヒョイと飛び降りて何処かへ行ってしまった。
アーニャはずいずいと歩いて行き、リクは町の作り込みを観察しながら付いて行った。
コンコン!
カラカラン!
2輪の馬車に乗った男が鐘をならし、ロングスカートを履いた女性が飛び石のような横断歩道を歩いた。
服屋には分厚くて丈夫そうな革製の服が売られ、それを屈強そうな男達が品定めしている。
どれも同じような革製品が売られ大量生産品である事が伺える。
異世界人の体臭や香水の臭い、3階の窓から下水に垂れ流す糞の臭い。
見たことも無い文字、言葉。
いつしかリクはクラクラしながらしゃがみ込んでしまった。
「リク・・?リク・・?」
暫くリクがしゃがんでいると声がした。
顔を上げた瞬間、顔の2倍はあろうかと言う巨大なチキンをアーニャが差し出した。
「ふふふ・・。エ ア アンガ ド リク??(お腹空いたのリク?)」
「食べていいの!?」
リクの言葉にアーニャはヒゲを上げてニコリと笑みを作った。
「ありがとう!」
リクは巨大なチキンを手に取ると思い切り頬張った。
パリパリに焼けた皮に、サンショウやクローブなどの香辛料が食欲を掻き立て舌を痺れさせた。
「美味しいよアーニャ!」
リクは舌舐めずりをして満足そうに頷いた。
「オ・イ・シ・イ??」
「うんうん!」
リクが頷くと、アーニャの口からツーっと涎が出た。
「食べたいの??」
アーニャは笑顔を作ったまま涎を垂らす・・。
見かねたリクは、チキンを千切ってアーニャに食べさせる。
「ガブッ!!ゴロゴロゴロゴロ!」
「・・わっ!」
アーニャの瞳が黄色く光り、親指ほどある巨大な牙がチキンを捕らえた。
そして間髪入れずにアーニャの口に入って数回噛んだ後にゴクリと呑み込んでしまった。
すごい!すごい!
リクは面白くなって、さらにアーニャに食べさせる。
「ダイケア リク(ありがとう リク)!!はむっはむ!テェイス ゴウジア テアルーニ!はむはむっ!!」
リクがチキンの先端に差し掛かったので油紙で隠れた部分を剥がした。
しかし、ここへ来てそれがただのチキンではない事に気が付いた。
「うわ!!なんだこの肉っ!!」
リクは、そのチキンの生々しさに思わず絶句した。
「アア・・ココナ ジャイアモア(これは ジャイアントモアだよ)」
「ジャイアモアだって!?」
「うんうん、ジャイアモア!!」
そこにあったのは巨大な猛禽類のような爪。
ここへ来てようやくリクは自分の食べていたものが巨大な鳥類の足先である事を理解したのだった。
リクが恐怖のあまり手渡し、アーニャがジャイアントモアの指の先端の軟骨を強靭な牙でバリバリと食べ始めた。
コッ!パキパキパキパキ!!
そこに異世界の萌えヒロインは存在しなかった。
まさに弱肉強食のアカナ平原の掟。
そして、勝者だけが勝ち残れる残忍な世界の幕開けを意味していた。
「リク!」
絶句するリクをよそに、アーニャが骨を折って髄を差し出す。
髄はゼラチン質で、骨を折るとプルプルとしたゼリー状だ。
「い、いらないよ!!」
リクがそのグロテスクさに引きながら首を横に振る。
「エエ。ティスティア リク…(美味しいのに・・リク)フーン」
アーニャは悲しそうに耳をふせるとズルズルと吸いながら食べた。
「・・ゲップ」
そして大きく舌なめずりをすると、くずかごに捨てた。
チキンの正体に絶句しながら歩いていると、アーニャはワァア!と言いながら駆け出した。
「なんだあの人!」
リクが思わず驚く。
「おおお!アーニャチカ!!」
「マ・ルダ!バッカス(バッカス司祭)!!」
アーニャは尻尾をピンと立てると大男に話しかける。
見るからに邪悪そうな黒いローブを着た、金色の宝玉の指輪を沢山つけ、イカツイ金色の首飾りつけた魔人だ・・。
瞳は黒くスキンヘッドで、よく異世界もので民衆を手懐けて裏で魂を吸い取るような・・あきらかな黒幕のような出立ちだった。
見るからに邪悪そうなのに、道ゆく人達は祈りを捧げている。
もしもこれがゲームの序盤だとしたら・・きっとこの男は後々裏切る事になるだろう。
「ラーナ!!カンザキ・リク!!アヌ バッカス!
エ ア ウェルカマ エンタンディア?(やあ、カンザキ・リク!バッカスだよ。こうして挨拶は初めてだったね?)」
「あ、どうも・・・酒臭っ!!」
「サケクサ・・??アーニャ?エ ア イアン リク??(リクは何と言ったのだ??)」
リクが握手をしながら顔をしかめると、バッカスが驚いた顔をする。
アーニャは意地悪そうにバッカスを見た。
布を頭に巻いた若そうな店主が扉を開けた。
「ウェルカ マ・ダルマバッカス、アーニャチカ!ノッカ コレトィアデアル エペルリア!!(武器屋へようこそ!!アーニャ!バッカス司祭!!注文の物は出来ていますよ!)」
「ウム!」
「ダイケア!(ありがとう)!」
アーニャとバッカスが店の奥に入ってゆく。
リクはポツンと店内に残され、外の喧騒が聞こえるほど静かに待っていた。
店内を見ると、シンプルな兜や簡単な防具が並び、そこまで装飾品に拘って作っているようには見えない。
同じようなデザインの剣が槍が傘のように無造作に立てかけられ、奥にはひび割れて放置された鋳型が落ちている。
この型に溶かした鉄を流し込んで武器を作るようだ・・。
武器屋の扉を開けた瞬間、武器屋のグレードが表示されていることに気付いた。
どうやら商業施設関連は文字が表示されるらしい。
『タントリノの武器屋。官給品から下級兵の武器まで取り揃える店。大量生産が多く、扱いやすい」
武器屋と聞いて薄暗い重厚そうな店内を想像していたが、どれも作られて間もないようで真新しく、削り立ての匂いがした。
木で文字が彫られたペンダントがテーブルに並べられ、素早さを上げたり能力が上げられるようだ。
触ってもいいのだろうか??
リクは並んで立て掛けてある剣を手に取った。
「重っ!!!」
ガラガラ!
あまりの重さに驚く!
『ギアーテ王国のソード 推奨レベル:10 30オルガ』
どうやらレベルが低いと扱えないらしく、リクの元々の身体能力も相待って持ち上げる事すら出来なかった。
「リク!リクー!!」
アーニャがリクを呼んで飛び上がりそうになる。
「ニーデ リク!エペルリア(君の使う剣だ)」
アーニャとバッカスが奥の部屋に案内する。
恐る恐るバッカスを見るリクだったが、バッカスの凶悪そうな顔の中に笑い皺があり、そこまで悪くない人なのではないかとリクは思った。
「ウェルカマ ココナ(さぁ、こちらへ)」
そこには白いローブを着た神官達と、武器屋の職人達が待っていた。
皆、口々に囁き合い、緊張した面持ちでリクを見ている。
「す・・すごい!!」
リクは思わずスマホを向けた。
『リクの剣 推奨レベル:なし 0オルガ』
『特製:勇者と共に成長する』
バッカスに促され、手に取ってみる。
「おおお」
剣の握る部分は握り拳くらいしかない片手剣だったが、鞘から抜いた瞬間ギラリと光った。
柄もツバも全て統一された鉄でつくられ、その中でマザーアカナの寵愛を受けた刻印がツバから柄頭まで書かれていた。
アーニャに促されてリクは帯に差して帯刀する。
リクの体を、天井の吹き抜けから挿し込む陽の光が照らし、アーニャは溜息をもらした。
バッカスが感極まって泣き出し、大きな声で言う。
「アカナニヌ ヌヴァ リク!アカナニヌ ルヴァ ツェトリ!アカナニヌ アニャチカ!(ツェトリに!アーニャに!リクに!マザーアカナの加護があらんことを!!)」
───────
アーニャ達を乗せた馬車がツェトリに帰ってゆく。
「へーーオーー!!アーニャ!リク!!」
そこへ、早馬に乗ったコルツが追いかけた。
「コルツ!!エ ア タンクリノナイティア!?」
メメルが荷台から顔を出してコルツに言う。
「アァ!メルヴナウタイ デ タンクリノナイティア!!エ ア ツェトリ ア テアルイア ゴア クリクリエ!!ハイーーヤッ!!」
コルツが早口で叫ぶと馬車を抜かす。
「コルツ!!デオ ダイダロウィッチ デ メメルディアス!!アンダレイ!!」
メメルがアーニャから手綱を奪うと、思い切り鞭を入れた!!
「ワー!!メメル!!プリキ、ストパテー!!」
「アンダレイ!!アンダレイ!!」
ここからちょっとした競争が始まったが、リクは初めて与えられた剣を眺めていた。
時より、鞘にしまってパチンと言う金属音を確かめる
。
ドカン!!
「アー!!」
馬車の車輪が外れて思い切り地面に擦れる。
「リ・・リク??」
リクは馬車の車輪が外れても剣を抱きしめながらうっとりしていたと言う・・。




