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異世界から来たリクは本当に使えない  作者: 地底人のネコ
12/39

異世界から来たリクは本当に弱い

神崎陸がスライムに敗北するアーニャ側の視点のお話。



「────それで、勇者サマになにをご馳走するのさ??」

「うーん。」

私は早歩きで帰った。

メメルが私の少し後ろで話しかける。

リクは更に後ろで村の家々を珍しそうに眺めていた。

黒みがかかった茶色い髪の、茶色い目。

そして誰よりも小さい背格好に、男の子とは思えない華奢な身体と細い顎。

クルミなどの硬い穀物、栄養のある肉を食べてない証拠だ。



リクは村の服を着せてもどこか浮いていて、頭から香る果実とも花とも例えようのない良い匂いが風にのって香った。

異世界の人間の嗜みなのか、リクの言葉が分かったら色々異世界の話を聞いて見るのも楽しそうだ・・。

でも、リクはたまに独り言を言うくらいで異世界の言葉を発さない。

きっと無口な性格なのかもしれない。




とにかく私達は話し合いながら家の中に入った。


「とりあえずアルバース大司教が何か仕送りしてくれたみたいだから、それで何か作ってみるよ。メメルも手伝って?」

「アーニャがどうしてもーって言うなら、手伝うわよ。ところでガンロ司祭は?」


「そう意地悪言わないでメメル!ガンロ様はタントリノで、リクをどうするか会議しているみたい。どこかの王国に居させると不公平感が生まれるから、預言者ギヌアもとい、ガンロ様の神託に従って暫くはツェトリに居るみたい。」


「ふーん」


メメルはキッチンの下の棚をモゾモゾやりだす。

そういえば肉屋さんが広場に居る時間だ。

乾燥肉より新鮮な肉の方がいいかもしれない。


「ねぇねぇ、これどう?」

メメルが一際大きな鍋に顔を隠して覗いて見せた。


「ほぉお!圧力釜ね!!いいね!」


「うん!」

「そうだ!お肉を買って、リトクナーガ(リトククルの塩煮込みとアンティチョーク添え)とカーシャ(大根スープの穀物粥)を作ろう!!」


「ええええ!!すっっごい気合入ってるじゃないの!!」

「うん!せっかくリクが異世界から来てくれたんだもん!私、頑張っちゃお!」

「きゅーー!私だってそんなおもてなしされた事無いのにー!」



私は穀物の入った袋と大根をカゴごと渡した。

大根は丸みを帯びて赤々としていて新鮮だ。

この新鮮さはフィリア商店でないと中々手に入らない。


「はいはい!メメルはカーシャを作ってね?いい?『美味しいカーシャ』を作るんだよ?もう一回言う?」

「何よそれ!?失礼しちゃう!私だって料理には自信があるのよ!あのオオクチニシンだって、わざわざ蘇生させるのに私の髪の毛が入ってるんだから!」


「えええええ!!汚い!!」


「汚くなんかないよ!!リトルウィッチ族の前で屁をする獣に言われたくないわよ!!」


「それとこれとは別だよ!!」


「何が別なのよ!?」


「私はメメルを和ませようと思って『ちゃめっけ』を出したのよ!メメルが私を心配してくれているのは分かるし・・

・・でも、私は私なりに成長しているの!言葉に出さないと伝わらないの?メメルは?」

「ぐむむむ!」


私はリクにオナラの話が伝わらないかヒヤヒヤした。

本当の事を言うと、ただメメルが驚く顔が見たいだけなのだ。


リクは椅子に座って・・ってあれ!?


「ねぇ、メメル?リクはどこ!?」


「え!?」


そこでようやく私達はリクがいない事に気づいたのだった!


「たいへん!!どこかに歩いて行っちゃったんだ!!」

「風船かっ!」

私が叫び、メメルがつっこむ!

私達は慌てて家のドアを開けた!


「ど、どうするの!?」

「まだ近くに居るかも知れない!ちょっとやってみる!」


メメルが慌てる中、私は必死になって匂いと足音を思い出した。

スカートをたくし上げ、地面に鼻を付けてニオイを嗅ぐ。


「クンクンクンクン・・ポカン。クンクンクンクン」

「アーニャ、大丈夫?すっごい格好になってるけど・・」


リクの足音は少しだけ内股の、内側の靴底を擦る歩き方だ。


残念なことに音はしないけど、よく見たら・・ほら。

地面にナヨナヨした足跡がある。

足跡は家の外から騎士の像に続き、石畳の地面の苔を踏み、様々な屋台が見える広場に続いていた。



「こっちだよ!メメル!」

「すごいわアーニャ!アーニャには本当に驚かされる!」


暫く地面を調べていると肉屋のベルトさんが話しかけてきた。


「やあ、メメルとアーニャ!」

「こんにちは!」

「何か探し物かい??」

「その・・リクを見かけませんでした??」

「あぁ!リク君なら俺の仕事をニコニコしながら観察していたぜ?ちょうど、そこに腰掛けてな!」


「ふふふふ!」

ベルトさんの言葉に他の主婦達が笑う。


「それから何処に行きました?」

「どこって・・?うーむ。クルアさん、分かるかい?」


「異世界の男の子なら、あっちのほうで見かけたわよ?私の事を珍しそうに観察していたわ!目をまん丸くしてね!」

「ありがとうございます!クルアさん!!」


なるほど。

ヌオの荷車の轍にまぎれて、リクと思しき足跡があった。



私達はリクの痕跡を頼りに駆け出す。



リクは途中で子ども達の集団にでくわし、散々オモチャにされたあげくに麦の端切れを貰ったらしい。


その端切れを口に咥えて歩いた後、村の外の平原へ。

そこでヌオの糞を盛大に踏んだようだ。


ヌオの糞に驚いたリクは麦の端切れを落とし、とっさに近くの石で取ろうとする。


しかし、そこで水路の水の音を聞いたようで水路の方に歩いて行ったようだ。


「ん?ニオイが消えた。」

「アーニャ、水路を飛び越えたんだよ」



そこで足を洗ったのか落ちたのかして、そのまま飛び越えている。


丘を登ると村の境が近い。

まさか村の外に出て行っちゃったんじゃ?



「あっ!コルツー!」

「おー!アーニャとメメルじゃん!」

リクが槍を地面に突き刺して汗を拭う。


「ねぇ、コルツ!リクを見なかったー?」


「おう!見かけたぜ?村の剣を持ってあっちの方に歩いて行ったな!『ドラゴンの像から先に行くな』って言ったんだけど」

「えーー!村から出ちゃったの!?」


「だから『あっちは危ない』って言ったんだ!───

なっ!」

メメルがツカツカとコルツの下に入り、思い切り睨みつける。


「コルツ!リクは国の言葉が通じないのよ!?知ってた!?」

「いや、知ってるけどよ?勇者ならここら辺の魔物なんて屁でもないだろ?」

「勇者の前にアルバース大司教から預かった大切な迎賓なのよ!?

あなた、リクに何かあったら責任取れるの!?」



「せ、責任!?」




「せきにん!客人にもしもの事があったら、あなたは防人(さきもり)失格よ!!タントリノの騎士が聞いて呆れるわ!!」

「がーん!」


「行こうアーニャ?

せいぜいそこで素振りをしている事ね!」

メメルがツカツカと歩きだし、私はコルツを見た。

コルツに何て声をかけたら良いか思いつかなかった・・。



私達はドラゴンの像がある村の境に到着した。

そこで村の剣の鞘を発見する。


「村を出ていったんだわ!」

メメルが叫ぶ。

「リク・・!」

私は最悪の事態を想像する。


草原は私の心のざわめきのように波打ち、西日に傾いた空に雲が一筋、山脈の上を走っていた。


「メルル・ヴィアスの傷!!」

私は、その空の不吉さに絶句する。

そして鞘を放り投げると無意識に叫んでいた!


「リクーーー!!リクーー!!」

「アーニャ。剣を持っているなら大丈夫じゃないか?だって勇者なんだし・・!」

「メルヴィアの傷が光っているんだよコルツ!

もしかしたらリクが危険な目に遭っているのかもしれない・・!!どうしよう!」


私はリクの匂いを必死に探した。

風上だし、草原だから足跡がわかりづらい・・!


しかし、その時だった!


「あーーーー!!!!」


乱れた気流が私たちに吹き抜け、血の臭いと悲痛な叫び声が聞こえた・・!

全身の毛が逆立ち、耳が立つ・・!



メメルは冷静だった。

「コルツ!!腕の立つ人を呼んできて!」

「えっ!?わ、わかった!!」

メメルがコルツに指示をして、私は思わず悲鳴のした方へ走り出した!


最悪、私がやられてもコルツが助けにきてくだろう。



「あっ!!アーニャ!!あそこ!!」

「あーー!!」

そこにはスライム達が群がっていた。

見るとその下にリクが倒れている!!



「リクに何をしているの!!戦うよ!メメル!!」

「えっ!?コルツ達を待った方が・・!!」

「待っていたらリクが死んじゃう!!うおおおおおおおおおおお!!!!」

私は無我夢中にスライムに飛びかかると、両手から研ぎ澄まされた爪を出した!


「くらえ!!!!」

私はリクの顔にへばりついたスライムを思い切り引き裂く!


メメルは魔法の杖を自分の身長まで伸ばすと魔法を唱えた!

「アイスボール!!」

「ぷぷぐぇっ!!」


スライムがアイスボールで凍りつき内側から破裂する!


「ガブ!!ガルル!!」

スライムを捕まえ、空気穴に食らいついて思い切り引きちぎる!

スライムが力尽きてサラサラとした水になる。


「ぷにぷにぐにっ!!」

「逃がすか!!」


スライムは劣勢と見て敗走する!

しかし私の怒りは収まらなかった!


「メメル!魔法の杖をかして!!」

「うん!」

私はメメルから杖を投げて貰うと、右へ左へと回転させてスライムを惑わした!


「アーニャ!攻撃魔法を何か知っているの!?」

「うん!!」


ガシン!

「いくぞ!!」

私は杖を構えると全身全霊をかけて走り出す。

そして

「いけぇええええ!!」


私は杖を思い切りスライムに突き刺した!

「って!物理攻撃かよー!!」

メメルがツッコミをいれ、私はスライムに体重を乗せて確実に息の根を止めた。

突き刺したスライムの身体に黒い斑点が浮かび、そして水のようにサラサラになって絶命する。



「ふぅ・・。勝った・・!おととい来やがれ!!」

スライム達が溶けて無くなり、オルガ金貨が散らばった。

他のスライムは平らになって逃げ出す・・。

私は土を掴むと敗走するスライムに投げ、騒ぎを聞きつけたドード達を蹴散らした。



「アーニャ!!リクが息をしてない!!」


メメルが倒れているリクに駆け寄り、顔に手を当てて叫んだ!

私も駆け寄り、慌てて両手を合わせると癒し手の魔法を作ろうとする。

しかし、どう言う訳か魔法が出せない。


「ダメ・・!癒し手の魔法が出せない!」

「落ち着いてアーニャ!」

「し、心臓マッサージ!?」

「それはダメ!!きっとスライムの攻撃が胸に当たったんだわ!この状態で小刻みに動く心臓に刺激を加えたら逆に危険よ!」

「じゃあどうするの!?」

「ほんとうだったら雷岩を使うけど・・心臓に癒し手の魔法を施せば何とかなると思う。きっとアーニャなら大丈夫!落ち着いて。落ち着いてアーニャ!」

メメルが空に魔法を放った。


魔法は空にピカッと光ると、ジリジリと光りながら落ちてくる。

きっとクルスが見つけてヌオを手配してくれる筈だ。


「アーニャ。落ち着いて魔法を作れば必ずできる!ね?私の目を見て!」

「・・・」

私はメメルの青い瞳を見た。


「リトルウィッチ族は真実しか言わない。アーニャ。あなたは出来る!」

「私は・・出来る!!あっ!」

私の手の平が黄色く輝く。

卵を転がすように両手を包むと光の玉になった。


さらに転がすと赤く輝き、やがて白い光の玉になった。

「マザー・アカナを選びし異世界の勇者 神崎 陸よ。我が修道女の前に目覚めたまえ!」

「──────っ!!!」

癒し手の魔法をリクに押し当てた瞬間、リクは目を見開き驚いたように反り返った!

「やったぁ!」

「さすが、アーニャ!!」


「あ!!あそこだ!!おーい!」

リクや男達がヌオに乗って駆けつける。


「遅いわよ!コルツ!!」

「悪かったな!メメル!」


「コルツ!!足を持って!早く!」

「えっ!?あっ!わかった!」

私とメメルで頭を持ち、コルツが足を持つ。

そしてヌオに乗せると、尻を叩いて歩かせた。


「ありがとうコルツ。癒し手の魔法で命は大丈夫みたいだから」

「・・・ゴメン。アーニャ。俺がしっかりしていれば・・」

「大丈夫だよ。私も勇者と言うくらいだから強いと思ってたし・・あまり自分を責めないでコルツ。

メメルも、言葉はキツイけど心の底から思っていないわ」

「・・ありがとうアーニャ」


私はコルツの首にそっと触れると励ました。





────それからリクの治療が始まった。

村の人達が交互に見守る中、汚れた服を脱がせたり食事を作ってくれた。


途中でガンロ様が合流した。



「リクが大変なんだって!?」

「ごめんなさいガンロ様!私が目を離したばかりに!」

「大丈夫だ!!早く連れてってくれ!あぁ!そうだ!アーニャ!お湯を沸かしてくれ!!鍋にたっぷりな!!」

「分かりました!!薬草鍋ですね!!」

「そうだ!!できるだけ濃い〜のな!!」

「はい!!」


私は集中するあまり、舌をしまい忘れながら水瓶から水を汲むと鍋をかけて暖炉にありったけの薪をくべた!

ガンロ様がリクの寝ている寝室に行き、乱暴にドアを閉める!


それと入れ替わり立ち替わりにバッカス司祭が入ってきた!

「リリリリ、リク君が大変だって!?」

「バッカス司祭!!私の────」

「謝らなくていい!謝らなくていいぞアーニャ君!その・・スライムにやられたんだって!?」

「はい!」

私はワートの葉と滋養強壮に良いバレリアの根を鍋に放り込んだ。

鍋はすぐ様紫色の毒々しい色に変わる。

バッカスは慌てて風呂敷から様々な小瓶を取り出した!

テーブルにガチャガチャとぶち撒かれ、その中に明らかに薬ではない焼酎の瓶が置かれている・・。


「アーニャ君、これを!!」

「これは!?」

「 エキドナの聖水だ!」

「聖水ぃい!?飲ませて大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ!どうやって入手したのかは内緒だ!」


私は瓶を引ったくると鍋に入れる!

入れた瞬間青い煙が立ち上り、もの凄い刺激臭が部屋を包んだ。


私がハワワとなっていると寝室のドアが乱暴に開いた!


「あぁ!!バッカス司祭!!」

「ガンロ司祭!!」

「おぉ!できたか!早く『スライム下し』を!!バッカス司祭も手伝ってくれるね!?」

「はっ!?わ、私は!!」

「まぁまぁ!遠慮なさらず!!」

ガンロ様は銅のコップに液体を汲むと慌てて寝室に入り込んだ!

バッカスもそれに続く

「アーニャ君!スライムが飛び出したらその爪で引き裂いてくれ!それじゃあ!!」

「わ、わかりました!」




───────


私は寝室のドアを見つめながら、ドアが開くのを待ち続けた・・。


(バッカス司祭や!これだ!!出たぞ!)

(うわーー!大きいですね!)


(ひっぱり出すぞ!)

(本当にやるんですか!?)


(やるしかないいだろ!!)

(うえーん!!)




───────



静寂。




「アーニャ、アーニャ・・!」

「はっ!ごめんなさい!」

「いいんだよアーニャ。」


いつしか私は眠っていて、バッカスが差し入れのカーシャを温めて用意してくれていた。

ガンロ様が私を撫でる。

その手は石のように硬く・・別れが近い事を物語る。


「バッカス特性の味付けカーシャだ。みんなで食べよう?」

「あ、あの・・リクは?」

「容体も安定して眠っているよ」


「よかったぁ・・」



私達はカーシャを食べることにした。

バッカスがブドウ酒を開けて注いでくれる。

ガンロ様もバッカスも会話はなく・・だけれど、なんとなく言いたいことは同じなんだと私は思った。


沈黙を破ったのはバッカスだ。

「アーニャ君、その・・リク君は本当にスライムにやられたんだね?」

「はい。私が駆けつけた時はスライムに囲まれていました」


「それは・・その・・」

言葉が詰まるバッカスにガンロ司祭が続く。


「ツェトリに出現するスライムは、そこまで手練れではない。下手をすれば子どもが鋤で殺せるくらいのレベルだ」

「そんな・・とても渇きの王の撃退の即戦力になるとは思えない・・もしや違う者を召喚したのでは?」


「いいや。預言者ギヌアの言葉をこの耳で確かに聞いたのだ。カンザキ リクこそ勇者であると」

「しかし・・スライムに負けるとなると連合軍の士気にも影響が出るのでは・・」

「そうだな。ここはヴァイター男爵に報告しなくては・・。」



「ヴァイター男爵?」

「あぁ、アーニャに話ていなかったな。リクの初陣が決まったのだ。場所は、メルトリッス諸島から更に進んだセイレーン島だ。

疲弊した兵士の慰安を行い、この島を平定して勇者の功績にしたいのだ。」

「この間、タントリノでツェッツ書店の売り込みが、『セイレーン島奪還』を報じていましたが・・」


「あぁ、そのセイレーン島だ。リクは言わば闘いの神 メルヴィア神そのものだ。勇者が島にいると兵士たちが知れば士気が上がる。そのままキルクサ島を拠点にしてコルゴ大河に大規模な防衛拠点を作るのだ。」


私はコクリと唾を飲んだ。

これからカンザキ リクはどんな人生を送るのだろう?


「まぁ、我々が考えても仕方がない・・バッカス司祭、今日は飲むぞ??」

「へ!?」

「酒だ!持ってきているのだろう?」

「はっはい!!」

「さあ出すのだ!袋の中を──────」


ガンロ様とバッカスが瓶を並べガチャガチャと食器を取り出す。

私は無意識に立ち上がり、リクの居る部屋のドアを開けた。


部屋の中は薄暗く、ドアを閉めると月明かりしかない・・。

私の目はすぐに慣れ、リクが包帯だらけの体で仰向け

に寝かされているのが見えた。


「ううう・・・」


痛むのかリクが呻く・・。

私は両手を卵を転がすように回すと魔力を溜めた。



「*1

♪フェニチア ヌオターナ キャシリングシア♪(城下町を蹄の音が駆け回る)


ホーメ ア ディガード キンギディカ♪

(王子が帰還したそうだ!)


♫ホホ アプリルアルリー! ホホ ア ナイティイア!

(宴を用意せよ!近衛兵を集めよ!)


♪ホーメ ア ディガード キンギディカ・クイクリィエ!

(サビ:王子が帰還したそうだ!さぁ、早くするのだ!)」


私は小さく唄いながら癒し手の魔法をリクに施す。



「♪フェリチア トヒターナ キャシリングニー

(城内を足音が駆け回る)

ホホ ラバディ ナイティイア ファトマ ナイティイア

(ラバのような兵よ!バカな兵よ来るのだ!)


ルヴァ ナイティイア キンディカ フェニチア!

(サビ:愛する兵はどこだと王子は駆け回る)


♪ホーメ ア ディガード キンギディカ・クイクリィエ!

(サビ:王子が帰還したそうだ!さぁ、早くするのだ!)」


慌てふためくメルポ公国の王様が目に浮かんて小さく笑った。

リクは、まるで赤子のように眠っている。

私はそっと頭を撫でる。

リクが勇者じゃないにしても、勇者だとしても。


異世界に突然召喚されて時代に翻弄されるのはどんな気持ちだろう?



きっと時代という名の渦潮に突然放り込まれるようなものかも知れないし、嵐のなかを小鳥が飛び立つような底知れぬ不安があるのかもしれない・・。



“”────僕には何もない!!何もないんだよアーニャ!!────“”


告知の夢でリクが叫んでいたのを思い出した。

私はリクと運命を共にする時が必ず来るのだろう・・。



「・・リク、大丈夫よ。私が一人前の勇者に育ててあげるからね。」


私の言葉が通じたのか、リクの頬に光るものが見えた・・。



※アーニャの癒し手の魔法は気功の使い方をそのまま模しているので現代の日常でも使えます。


『気』は誰にでも備わっていて、体内を常に循環しているので、初心者は癒し手の魔法の要領で自分の内なる気の力を体の外にためる訓練をすると良いでしょう。


また、更に訓練をすると、部屋を薄暗くして指先に力を溜めると糸のような光りを見ることができたり・・患者の病気が入るツボ(風門)に当てることで気を送り、病気を治療することもできます。

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