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ハピネス☆シュガープラム  作者: 卯月 芽兎
第一章 『無邪気な天使は甘い匂いで』
3/4

第一章 2 『日常は甘さに流されて』

4がつ3か。

結局ドキドキしてあまり寝れなかった。

そのせいか夢も見られなかった。


「行ってきまーす。」


遂に入学式が来てしまったのだ。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


新しい通学路には桜の花びらが降っていた。

――この桜並木、どこかで…?

初めて見る景色のはずなのに、見たことある気がした。

…気の所為だろう。そんなことより、自己紹介のことを考えなくては。


心が落ち着かない内に学校に着いてしまった。

――まともな学校生活を送りたい。

願いはそれだけ。

1年1組の教室に入る。

半分ほどの生徒がもう来ていた。

そのせいか緊張してしまい、挨拶し損ねてしまった。

――やらかしたけどまだ挽回できる…。

自分の席に着き、本を読んで時間が経つのを待つことにした。


「おはよー!みんなー!!今日からよろしくー!」


聞き覚えのある声がした。


「おーはよっ!久しぶりだね咲幸さゆ〜!」


「やっぱり留生るいちゃんかぁ。相変わらずだね。おはよう。」


そう、元気良く声を掛けてきたのは小学校が同じ夢野もんの 留生るいだ。

彼女はにししっと歯を見せて笑い、他の生徒に挨拶しながら自分の席に着く。

赤がかった茶色い髪が太陽の光によって輝いていた。


「おーい、みんな席に着けー。」


先生らしい人物が教室に入ってきた。

周りを見渡すとみんな揃っていた。前の席の子を除いては。


「1番は遅刻かー?なんか知ってるやついるか?」


教室は静まり返る。


「まあいい。それでは早速挨拶する。起立―――」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


先生の話も終わり、自己紹介が始まろうとしている。

――1番の子が、来ないまま。


「じゃあ愛沢、自己紹介を始めろ。」


「は、ひゃいっ!…1年1組…1ば…2番。愛沢あいざわ 咲幸さゆきです…。部活は調理部に入ろうと思ってます…。よろしくお願いします…!」


緊張した。1番が来ないなんて聞いていない。

鏡を見なくても顔が真っ赤になっているのが分かる。

火照っている内にだいぶ自己紹介が進んでしまった。

名前を全然覚えられない。


「1年1組30番!夢野もんの 留生るい!部活は水泳部希望で趣味は走ること!みんなよろしくねー!」


留生ちゃんが自己紹介をしているのが耳に入る。

――留生ちゃんのようになれたら。

私はいつもそう思ってしまう。

彼女はすぐに友達を作れる性格なのだ。

羨ましい。私も、ああなりたい。


「よし、自己紹介終わったな。それじゃあ――」


「終わらせないよーっ!!」


女の子らしい高い声がした。

顔をそちらに向けると緑色の髪の女の子がいた。

――夢に出てきた子だ。

今、この瞬間から運命が動き出した。


「1年1組1番!名前はプク!天使です!」


――天使?

遅刻したのにも関わらず威勢よく唐突に始まる自己紹介。

苗字はなく名前だけ。しかも『天使』と名乗る。

辺りがざわつく。否、ざわつかないはずがないのだ。

そして彼女はこちらに向かって歩いてくる。


咲幸さゆき!」


「………え?!私?!」


「ふふーん。待ちくたびれた?それじゃあお家に帰ろっか!」


状況が全く呑み込めない。

何故彼女は私の名前を知っているのだろうか。

『お家』とは何の話だろうか。

平凡な日常がかけ離れていく気がした。


「ちょっと待ちなさい!あたし、夢野 留生!あたしの友達を勝手に誘拐しないで!」


「留生ちゃん…!」


席を立ち、プクに向かって指を指す。

やはり勇気がある。かっこいい。


「でもでも、プクの友達でもあるんだよ?それに、あなたが決めることじゃないもーんっ。」


私に話しかけてきた時と態度は一変し、見下したように話す。

友達と言っているが友達になった覚えはない。


「はあ?!咲幸さゆ、この子誰なの?!」


「私にもよくわからないような…わかるような…。」


夢の中に出てきた女の子は知り合いと呼べるのか。

ただ、この子と面識が無いのは事実だ。


「んー、なんかめんどくさい!ごちゃごちゃしたのは全部後!とりあえず、連れてく!いち…にの…さんっ!」


辺りは『光』に包まれた。

クラスメイト達の悲鳴が聞こえたが、眩しくて何も見えない。

あの子が数字を数えている時、留生ちゃんがこちらに慌てた顔で走って来ていたのは覚えている。

それが、この世界で最後に見た景色だった―――。

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