フードマンと少女(少々残酷な描写あります。)
昨日投稿できなかったこともあって少し長めです。
あれから10日、私たちは魔族領を抜け人間領に入った。人間領に入ると自然が多く私とレーミンはここ2日、自然を楽しんでいた。今日も楽しく森を歩いていたのだがそれは突然に起こった。
「キャーーーー助けてーーー」
叫び声が聞こえた。二人は慌てて叫び声のした方向に向かうと3人の武装した少女が10人のフードで顔を隠している人間に取り囲まれている、フードで顔を隠している人間はそれぞれ武器を持っていて少女達を襲おうとしているように見える。
「叫んでも助けなんてこないぜ、降伏するなら今のうちだぞ」
フードを顔で隠した人間の親分らしき者が少女達に言う。とりあえずフードを顔で隠した人間をフードマンと自分の中で名付けてみる。命名は研究の時さんざんやってきたから自信がある。フードマン・・・いい名前だ。
「助けは呼んでも盗賊に降伏なんてするものか、性奴隷になるくらいなら死んだ方がましだ」
少女の内でも目が少しつり上がった強気そうな子がそう叫ぶ。
「命まではとりたくないんだがな、しょうがねえ、おまえら、かかれ!」
「イエッサー」
「了解じゃぁ親分」
どうやら今から戦闘がはじまるようだ。そして親分らしき者はやっぱり親分だった。
「レーミン、あの人たち人間同士で戦おうとしてない?なんで?、突風を起こして全員の武器を弾き飛ばしてもいい?」
「そうですね、アクアス様お願いします。私も人の傷つくところは見たくないですので。」
「風よ、針となり乱舞せよ。針風乱舞」
私が風魔法を唱えると地面からいくつもの超局所的で高密度の強風が巻き上がりそこにいた人間全員の武器を飛ばしていった。
「うぉ、なんだ俺の武器が飛んでいったぞ」
「私の愛剣が・・・」
「な、なんていうことなの」
そんな声が聞こえる中フードマンの親分が叫ぶ。
「よくわかんねーことが起きたけど、おまえら、生け捕りのチャンスだ」
「「「「「「うぉぉぉ」」」」」」
少女らの抵抗むなしく彼女らはフードマン達に捕らえられた。彼女らはフードマン達により縄で縛られて猿ぐつわをつけられていく。私は目の前の光景を理解できずにいた。武器がなくなったのだから戦いを終わらせてお互いに帰ると思っていた。昔嫌々人間との戦争に参加して私が人間と魔族の武器全部燃やしたらお互いに帰った時のように。そもそも人間同士で争うというのがあまり理解できない。同種族同士での武器や魔法を介した争いなんて10年に一度あれば多い方ではないのか。
「レーミン、ど、どうしよう」
「アクアス様、とりあえずあの方達に話を聞いてみましょう、何故同種族で争うのかと縄で縛り上げて猿ぐつわをつけたのか」
「そうだね!話聞いてみないと分からないよね、さっそく行ってみるよ」
早速二人でフードマン達に近づき
「こんにちは~なんで貴方達はこの方々を縛り上げてるんですか~?」
私はフードマン達に話しかける。
「仲間がいたのか、しょうがねえ。おまえら、こいつらも捕らえるぞ。魔術師っぽいから口ふさぐのを忘れるな」
何故かフードマンの親分はそう言い私たちを捕らえようとしてきた。少女達も何故か私たちを恨めしそうに見ている。
「私たちは貴方達と事を構えるつもりはないんだけど~、なんで襲ってくるの?」
「おとなしく捕まれば教えてやるよ」
「どうする?レーミン」
「とりあえずエアロスラッシュをあの木に打ちましょう、アクアス様」
「おっけー!エアロスラッシュ」
理由は分からなかったがレーミンの言うことならとエアロスラッシュを近くの木に放つ。風の刃は木の幹にぶつかると木は真っ二つに割れ崩れ落ちた。
「なんだこの威力は、おまえらアレだ、アレを使うぞ」
そうフードマンの親分が言うとフードマン達は一斉に吹き矢の様なものを取り出し私たち目がけて吹いてきた。中からでてきたのは大量の赤い粉だった。
「伏せて」
そうレーミンが叫ぶも遅かった。赤い粉が空に舞い私の目や口に入り、激痛が走る。何かしゃべろうとするも喉が痛く何もしゃべれない。目も同じだ、目を開けることすらできない。本能的に手で目をえぐりとる勢いでこするも痛みが治まらない。これまでに経験したことのないような痛みにもがき苦しんでいると後ろからだろうか何者かが私の口を無理矢理開けさせ口に堅いものを噛ませ後頭部で紐のようなものが結ばれた。
気付いた時には何やら洞窟みたいな場所にいた。私の身体は縄で縛られ身動きがとれなかったが、目の痛みは引いていたため辺りを見渡すとそこには先ほど捕らえられていた少女3人にレーミン、そして一人のいかにも物憂げな感じがする少女が一人がいた。
「やっとお目覚めかい」
どうやらフードマンの親分もいたらしい。
「じゃあ今からこれからおまえらがどうなるか説明する。と言っても簡単だ。おまえらは奴隷として奴隷商人に売り渡される。でもその前に処女じゃねえやつは慰みものにでもしてやるよ。」
奴隷になるのは私は嫌だ。人間に利することは別に私はかまわないが自由が奪われるのが本当に嫌だ。さっき会ったばかりの人の慰みものになるのも嫌だ。それにしても、私やレーミンは魔族だから人間の奴隷になるのはわかるんだけど、何故少女達みたいな同種族も奴隷にするんだろうか、分からない。こういう時レーミンがパートナーになってからはいつもレーミンに聞いていたが、今は私もレーミンも猿ぐつわがつけられていて会話できない。ふとレーミンを見るとレーミンは私を見ながら必死に目をパチクリしたり首を動かしていた。何かを伝えようとしているような気もするが私にはレーミンが私に何を伝えたいのかわからなかった。
「それじゃあ、まずは処女かどうかの確認だ。そこの魔術師からにしようか、おいおまえ、反抗しようとすんなよ、反抗しようとしたらあの粉目に刷り込むからな。」
そう言ってフードマンの親分が私に近づこうとした時ブチっとレーミンの方から音が聞こえてきた。私がレーミンの方を向くとレーミンは猿ぐつわをつけておらず、レーミンの少し前方に猿ぐつわが見える。どうやって外したのだろうか。それにしても本当によかった。
詠唱できるようになったレーミンが土魔法と風魔法で固い土塊を作るとフードマンの親分の後頭部に直撃させフードマンの親分を気絶させた。そして私を含む捕らえられていた人全員の猿ぐつわと縄を風魔法で切断した。
「アクアス様ここにいる全員に風魔法での保護をお願いします。」
「おっけーレーミン、エアフィルム!」
「アクアス様ありがとうございます。皆さん、これでもしあの者たちが武器を持っていたとしてもある程度は大丈夫です。とりあえずここにいては危険です、逃げましょう。」
「そ、そうわね」
「恩に着る」
「ありがとう」
「・・・ありがとうございます。」
「それでは行きましょう、ところでここの構造分かる方はいますか?」
「・・・多分いないと思う、ボクみんなが来る前からここにいたけどみんな昏睡させられてから来てる。ボクも気付いたらここにいたし。」
「ありがとう。ではアクアス様、ドリルをお願いします。」
「おっけーレーミン、スティアドリル」
前の壁に横の大きな亀裂が入ったかと思うと前にあった壁は上下に押し出されていく。一回の詠唱で大体10m程度の人の通れる四角い穴が空く。生活魔法の研究をしていた私からすると土の下に住処を作るのに役に立つこの魔法は使い慣れたものであり、何の感動もなかった。しかし、周りは違った。
「な、なによこれ」
「なんだこれは」
「すごいです」
「・・・すごい!」
たった10m穴を掘っただけのにこの驚かれようである。
「ほめてくれてありがと~、どんどん掘っていくね~」
そう言って私はどんどん掘り進めていく、スティアドリルのいいところは傾斜をつけたい時、坂でなくて段差で作れるところだ。段差だとすごく歩きやすいのが本当にいい。そんなこんなで掘り進めていくこと15分、やっと掘り進めてきた穴は外につながった。
読んでいただきありがとうございます。