大発明の行く末
(時系列は第3部の直後です)
「使い終わったんだったら一度返してよ~また補充させてよ~」
そう言って私が手を出すも
「私はこの瓶を研究したいのです!この瓶には将来絶対に役立つ力があります!」
とレーミンが答える。私はびっくりした。私にとってこの瓶はとある研究をしてその副産物として出来たもので別に今研究していることに比べたら全然大したことのないものなのである。
「ただの空き瓶だよ~?まぁ私はかまわないけど~」
そういって私は手をひっこめる。正直私にとっては空き瓶一つくらい渡してもどうってことない。
「アクアス様、一つ申し上げたいことがあります、聞いていただけますか?」
突然レーミンが真剣な目で私を見てそう言う。
「うん、いいよ、どうしたの?」
「これから私たちにはたくさんの出会いがあると思います。そうなった時アクアス様はアクアス様の持っている知識や道具を出会った人たちに提供することもあると思うんです、でもその前に私にその知識や道具を提供していいか確認していただきたいのです。アクアス様の知識や道具は正直いいますと、魔族界でも人間界でも大発明に値するものが多いのではないかと思います。例えばですがアクアス様にいただいたこの瓶ですが例えば円錐型にして円錐の頂点と底面にふたをつけたとします。円錐の頂点のふたをしめた状態で底面のふたを開けると水を押し込めることができますよね。逆に円錐の底面のふたをつけた状態で円錐の頂点のふたを開けたらどうなると思いますか?」
「あ・・・」
そうしたらきっとものすごい勢いで水を噴射させることができるであろう、それは十分に兵器なりえるものであった。
「アクアス様がこの瓶を兵器として開発したわけではないというのは私も知っております。ただこの瓶を少し改良するだけでもこの世界を破壊しかねない兵器を作れるかもしれないのです。」
私はこれまで自分が興味を持った研究だけをしてきた。幸運なことに私が興味を持ったのは生活魔法という人々の生活がより快適になる魔法であったためこれまで戦争のための道具を作ったりはしていない。そもそも私は戦争は嫌いである、魔族が傷つくのはもちろん嫌だし人間だって傷ついてほしくない。なぜなら私自身が痛いのとか傷つくのが嫌だから。私がそういうのが嫌だから誰にも同じ目にあわないでほしい。そう思ってる。
・・・だけど私の発明が誰かを傷つけることにつながる可能性があるとはこれまで考えたことがなかった。あまりしたくはないが私の発明で誰かが傷つくのを想像してみる。円錐型の破壊兵器を魔族も人間も持ちそれぞれ放ちあう。今の私の作製可能範囲だとそれなりの防御魔法を展開できる者でなければ一撃で身体に穴が空くだろう。脳天に穴が空いたらほぼほぼ即死である。私はなんて恐ろしいものを発明してしまったのであろうか。正直、自分で自分のことが怖くなってきた。でもそれ以上にレーミンの存在がありがたかった。もしもレーミンが私を追わなかったらきっとレーミンの危惧していることは起きたと思う。それは私が一番と言っていいほど望んでいないことだ。
「レーミン、ありがとう。レーミンの言うとおりだと思う。これから誰かに知識や道具をあげたくなった時レーミンに相談するよ。」
「アクアス様・・・ありがとうございます。」
「ううん、本当ありがとねレーミン。」
そう言って私はレーミンに抱きしめるとレーミンも抱きしめ返してくれた。今ならレーミンにお尻触られてもいいやと思ったけど意外とレーミンは私のお尻を触ってこなかった。
抱きしめ合ってから数分、私はレーミンに気になってたことを聞いた。
「レーミンは魔王様に何て言って追放してもらったの?」
「そ、それは言えません」
「え~聞かせてよ~」
「い、嫌です。お尻もみますよ?」
「ごめんって」
・・・
・・・
・・・
「これからもよろしくね、私のパートナー」
「こちらこそよろしくおねがいします。私のパートナーであるアクアス様」
「ふふっ」
「あははっ」
お互いに抱きしめるのをやめると自然な笑みが生まれるのであった。
★ ★ ★
その後、眠る気分にもなれなかった私とレーミンは夜が明けるまで話をした。最初の方は私の表に出していない研究や発明のことについてが主だったがいつの間にかこれからどうするかにシフトしていった。
「レーミン、私はリノの街にゆっくり行きたいな~って思ってるんだけどレーミンはどうしたいとかある~?」
「私もゆっくり行きたいなと思っていました。街に着いたらいつ忙しくなるか分かりませんですし。しばらくのゆったりとした時間を共に楽しみましょう」
「うん!そ~しよ~」
「ところでアクアス様、リノの街へ行くまでって研究とかされますか?」
「うん、するつもりだよ~」
「よかったら、アクアス様の研究に私を加えていただけませんか?」
「一部の研究は一人でやりたいからごめんなさいだけど他の研究だったらいいよ~」
「もしかしてその一部の研究というのは魔王様に秘密にするように言われている感じですか?」
「なんで知ってるの・・・?」
確かに私のしている研究の一部は魔王アルスによって秘密にするよう言われている。でもそれを何故レーミンが知っているのだろうか。
「魔王様ならそうするかなと思いまして。私が言うのもあれですが魔王様も中々苦労人ですね。」
レーミンはそう言うが、私にはレーミンの言っていることがあまりよく分かっていない。アルスが私の研究の一部を秘密にするように言うのとアルスが苦労人というのが全く結びつかない。私がぽかーんとした顔をしていると
「まあ、なんといいますか、アクアス様はアクアス様でいてください!」
と謎のフォローをされた。
欲望むきだしに小説書くの楽しい!