レーミンの知らない話
これはレーミンが仮住まいで熟睡している時のことである。
「レーミンのマナの感じを見るとレーミンは多分寝てるかな、それじゃ呼ぼっか、シャイニー&ウィンディ」
そう言ってアクアスの仮住まいから出て頭上に魔法を放つ。アクアスの掌か桃色と水色と橙色の3筋の光が放たれ魔王城の方に向かう。そして魔王城に到達して30秒後、魔王城からものすごい密度のマナがこっちにとんでくる。それがアクアスの目の前に来ると、魔王アルスが姿をあらわした。
「アクアス、連絡してくれてありがとう」
「アルス、こんな夜中に呼んでごめんね」
「いいえ、私たちは毎日顔を合わせるのでしたでしょ」
アクアスと魔王アルスは同級生でものすごく仲良く、アルスが魔王に就任する際私たちは対等な存在という意味を込めて毎日顔を合わせる』という約束と「プライベートではため口」という約束をしている。
「そうだけど、起こしちゃわなかった?」
「いいえ、私は起きていたわよ、それにレーミンが寝てるときしか私たち会えないでしょう?」
「確かに、っていうかアルス、どうしてレーミンを追放したの?」
「そのことを私も話そうとしてました、ちょっと色々ありましてね」
「なんとなく察したかも、まぁ、とりあえず中に入ろ?」
「そうですわね」
二人はアクアスの仮住まいに入る。
「扉に鍵かけますの?」
「鍵かけなくても扉をなくせば大丈夫」
そう言ってアクアスは土魔法を唱え扉をなくし、壁を作る。
「アクアスの大胆な発想には常々感心させられますわ」
「ありがとう、それじゃ座って座って」
アクアスが土魔法で椅子を作り腰掛けると、魔王アルスも腰掛けレーミンについて話しはじめた。
「私は今回アクアスを追放した際これまでの慣習通り罪と罰を伏せていますの、そうしたところいつも冷静なレーミンがすごく焦燥した様子で魔王城を駆け回ってそうわね、アクアスの部屋と研究室、牢屋に教会、さらには例の場所へ行ってたと言ったらその具合が分かるかしら」
「そっか~やっぱ大分迷惑かけちゃったみたいだね、続きを聞かせてくれる?」
「このままでは不眠不休で魔王城の中で探し回るのが目に見えていたからアクアスが追放されたことを伝えましたの、そうしたらレーミンに私も追放してくださいと言われましたわ、本当にアクアスは愛されてますわね」
「本当にね、でもここまでとは思ってなかったや」
「私もですわ。」
私は『人間を一定数残すべき』という意見を出してからレーミンとは同じ意見を持つものとしてものすごく仲良くなったとは感じていたがレーミンに運命を共にしたいと思われる程愛されているとは思いもよらなかった。ただ、そうだとしても疑問が一つある。
「でもレーミンに追放してくださいと言われる位じゃレーミンを追放しなくない?」
そう、アルスはよほど緊急なことでなければ何かを決める際に一度考えてから1日以上は時間をおいてもう一度考えてから決める人なのである。そう考えるとレーミンを追放するにしても1日以上は時間をおくはずなのである。
「そ、そうですわね」
アルスは露骨に目をそらしながらそう答える。私はすぐアルスが何か隠してるなと分かったのだがこういう時下手に追求すると逃げていくことも知っていたので追求はしないことにした。
「まぁ、これからレーミンは運命を共に分かつパートナーだから私もレーミンを愛せるよう努力するよ」
この話題をいったん終わらせようと私がそういうと
「運命・・・パートナー・・・」
と弱々しくつぶやきながらアルスがうつむく。アルスも運命の人やパートナーがほしいのだろうか。それなら励ますことにしようと
「アルスにもパートナーいつかできるよ!」
と私がいうとアルスはさらにうつむいて
「アクアスは、乙女心をもう少し学んだ方がいいですわよ、レーミンが起きそうな気がするので今日はもう帰りますわね、また明日会いましょう」
「う、うん。なんかごめんね、また明日あおう。あ、レーミンがマナ見えるようになりつつあるから帰りはマナを大地に一度ある程度還元させてから地面掘って行ってくれるとありがたいかな?」
「そうね、そうしますわ。それでは、ご機嫌麗しゅう」
アルスはそう言うと仮住まいの床に向かって風魔法を唱え地面に穴を掘って逃げるように魔王城へ帰っていった。
「アクアスのバカ・・・」
アルスが帰る途中に言った言葉はアクアスにはもちろん聞こえていなかった。
アルスが帰った後乙女心について考える。
・・・
・・・
・・・私は乙女心について何も分からない事がわかった。
どうやったら乙女心が分かるようになるのだろうとほんの少し落ち込んでいるとドガガガーンと私の仮住まいの壁が崩れた。
考えこんでいたのでこれまで気がついていなかったが、レーミンが私の仮住まいに魔法を放ったらしい。
魔王様と会うのはレーミンには内緒にした方がいいと思ったアクアスは慌てて魔王様が掘った穴を塞いだ。
「アクアス様大丈夫でしたか!?!?」
というレーミンの声が聞こえたのはその直後のことであった。