第1話 魔法の出会い
賢者…それは魔道士を位置づける最高の地位。世界中で賢者として生ける者は数少ないと言われている。世界中の魔道士が賢者の地位を目指して魔法による戦いが世界の一部地域で行われていた。賢者の地位につけるのはたった数人だけなのだ。他に権利を有し、下級魔道士に命令を下すことができる。誰もが賢者の地位を求めて戦いを繰り広げる。
勿論魔道士の中には賢者の地位を目指さず、魔道士として活躍する者もいる。賢者はとても荷が重い。権利を守り抜き年に1回行われる大会に優勝しなければならない。負ければただの魔道士として位が下がってしまう。賢者となれば魔法の力は天下一品、高級かつ強力な魔法が使えるようになる。その中の、1人の少年が日本に来ていた。目的は日本各地に散らばってしまった『ミシュナル』を探すために日本各地を周っていた。
とある某所とある林の中、少年がミシュナルの力によって変化してしまった生き物と向かい合っていた。ブヨブヨした魔物が少年に向かってきた。
「魔道よ…この手に来たれ。導きのもとミシュナルよマカライトの中に。」
"Seal"
少年はそう言って魔法陣を作り防御体制をとると同時に封印する。…が失敗。魔物は地面を引き擦りながら逃げられてしまった。
「ここまで……来…て。」
少年はその場に倒れこんだ。
「誰か、魔法を…マカライトに選ばれ…し者…僕の声…を聞い…て。」
そう言って猫に姿を変えた。
朝7時、携帯のアラームが鳴った。少女はベッドから起き上がる。
「何か…不思議な夢だったなぁ。」
カーテンを開けて朝日を浴びた。
日本、ここ蔦場家は4人家族。お父さん・お母さん・お姉ちゃんと私…蔦場ユカリ。歳は8歳。私立聖和小学校に通う小学2年生。極々どこにでもいる普通の女の子。チャームポイントは緑の髪のポニーテール。顔を洗い、髪を整えてリビングに。
「お父さん、お母さん、お姉ちゃん、おはよう。」
「おはよう、ユカリ。」
お父さんは新聞を読んでいて、お母さんとお姉ちゃんは朝食の用意をしていた。
「お母さん、何か手伝うことある?」
「じゃあ、これお願い。」
お母さんからオボンに家族みんなのコップを持たせた。
「はーい。」
元気良く返事をしてテーブルに置き並べた。
朝食をとりながらユカリはさっき夢に出てきたことを話した。あれはもしかしたら夢だったのかもしれなかったが一応話しておくべきなのだと感じた。お父さんが、
「マカライト?パワーストーンのことか?」
「ううん、何か…魔法がどうとかこうとか…。」
信じてくれそうになかった。
朝食を済ませ、ゆかりはスクールバスで学校に向かった。
「ユカリー。」
一番後ろの席から自分の名前を呼んでくれてる2人の女の子。
「おはよう。」
「おはよう。」
いつも一緒にお喋りをする気の合うお友達。1人は晴菜。茶髪のショートカットの髪がよく似合っていた。もう1人の方は智香。黒い髪をツインテールにしている心優しい。お友達2人には今日の夢のことは黙っておくつもりだったが、ゆかりはすぐ顔に出る性格なので学校の帰り道、晴菜は不思議そうに聞いてきた。
「ねぇ、今日のユカリ…口数少なかったよ、何かあったの?」
「………。」
ゆかりは黙って口を開こうとはしなかった。尚も智香が話に加わる。
「朝から元気ないけど。」
これ以上黙っていられなくなり2人に全てを話した。
「現実だったらどうする?」
家族から違う答えが返ってきた。「現実だったら…」それはそれで不思議だけどもしそういう出会いがあれば偶然かもしれないけど、何処何時の出来事なのか分からない。するとユカリの周りは暗くなった。すると声が聞こえてきた。
「僕の声…を聞いて。………、お願…い、魔法の力…を。」
『そういえば今日の夢に出てきた景色に似ている』と感じた。
「……リ、…ユカリ。」
「!!」
晴菜の呼びかけにユカリの意識は現実に戻った。
「ユカリちゃん、大丈夫?」
智香も心配そうに聞いてきた。
「大丈夫だよ、…2人は先帰ってて。私、ちょっと用事を思い出しちゃったから。さよなら、また明日。」
そう言ってユカリは普段誰も通らない林道へと入っていった。
確かに似ていた、今朝の夢と。もし一致しているならこの先に猫が倒れているはずだった。だが猫はそこには居なかった。もう移動してしまったのか。心配ながらも3時間捜したが結局見つからなかった。声の主は何処に行ってしまったのか分からないまま家に帰った。
その夕方、ドンという大きな音が耳に響いた。急いで様子を見に行こうといえを飛び出すがお父さんに呼び止められた。
「ユカリ、どうした?そんな顔をして。」
「だってさっき大きな音がしたでしょ?」
「大きな音?何も聞こえなかったけど。」
「えっ!!」
どうやら聞こえたのはユカリだけらしい。するとまた声が聞こえてきた。
『魔法の力を。』
さっきより声が途切れることなく聞こえてきた。ユカリはそのまま家を飛び出した。声の主を捜しにまず動物病院に行ってみた。姿を猫に変え、弱って倒れていたならきっと動物病院にいるに違いなかったのだ。
『こっち。』
声も段々大きくなってきた。
動物病院に到着し、檻の中に猫が居た。夢に出てきた通りの体格だった。
「あなただったのね、私の心に話しかけたのは。」
『はい、僕の声に気づいてくれてありがとう。傷も大分完治しました。…僕と一緒に来てくれませんか?…ミシュナルを集めなくては。マカライトがあなたを探していました。』
「よく分からないけど…とりあえず外に出よっか。…先生この猫ちゃんもらいます。」
「どうぞどうぞ。」
そう言って動物病院を後にした。
『林の中へ。』
さっきは何も居なかったのだが、殺気を感じた。
「ねぇ、何か怖い。」
『大丈夫、…これを。』
猫から渡されたのは濃い緑の6角形の宝石を渡された。ユカリはただの宝石としか思いようが無かったし、一体何をどうすればいいのか全く分からない状態だった。
『念じて。そしてマカライトという言葉を入れて何か呪文を唱えるんだ。』
「え…えぇっと………、急にそんなこと言われても。」
ユカリは焦った。
「う〜ん、………、マカライト…お願い。」
念が通じたのかマカライトが起動した。
"Standby Lady, Set Up"
するとマカライトは長さ80センチの杖のような形になり、ユカリの衣装も一変した。マカライトの6角形の部分が一番先にあり、そこから何か強い力を感じた。しかしユカリは自分の衣装が変わってしまったことが驚きでおどおどしていた。
『防護服だよ。心配しなくても大丈夫。マカライトをかざして、封印を。』