世界の危機と英雄
人類はこれまでに三度滅亡の危機を迎えた。
一度目はうによってだ。
うにをそのまま食べていた人類は、うにを食べるたびに口内を棘だらけにした。その結果、人々の口中は棘だらけになり、言葉を発することが困難となった。それによって社会の様々なサービスに支障が発生し、影響は各国の経済へと波及した。そしてこの出来事は、通称「うにショック」と言われる世界恐慌へと発展した。この「うにショック」によって大量のリストラが発生し、各国の街には、口を棘だらけにした、失業者が発生した。
二度目はかにによってだ。
世界首脳会談でかに鍋が振る舞われた。その席で、ある国のリーダーの「かに味噌は食べ物ではない」という発言をした。このことを発端に、世界は、かに味噌を好むもの、嫌うものの二つの陣営に分かれ、通称「かに戦」と呼ばれる世界大戦が勃発した。戦闘機によるかに味噌の投下や、各国のスパイによる文房具の鋏をかにのハサミに変える工作活動により、世界が混乱した。
三度目はふぐによってだ。
ふぐが毒を持つことを知らない人類は、毒を取り除くことなくふぐを食べ続け、世界人口の三分の一がふぐ毒によって亡くなったとされている。この出来事は後に「ふぐインパクト」と呼ばれることとなる。
この三度の危機を救った一人の男がいた。彼は、人類にうには殻を割って食べることを教え、かに味噌で対立する人々の仲裁に入り争いを止め、ふぐ毒によって死んでいく人類には「ふぐは何か危ないから、食べるのはやめよう」と説いた。そして見事に彼は、人類を滅亡の危機から救った。これをきっかけに彼は、人々から英雄と呼ばれるようになった。
シラスが突然降ってきた天災に対して、英雄は再び立ち上がった。
「大量のシラスの出現に困っているのなら、これらをみんな食べてしまえばいい」
彼は呼びかけた。
「世界のフードファイターよ、協力して私と共に、シラスを食べ尽くそう」
英雄の呼びかけに共鳴した各国のフードファイター達が、彼のもとに続々と集まった。
そして英雄を旗振りに、「第一回シラス大食い大会」が開催されることとなった。