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光を纏う者

「分かった正直に話そう。俺は君が“運命を変えられる光を纏う者”だと思っている」

「“運命を変えられる光を纏う者”……?」


 何、それ……。

 一体何を言っているんだ……。


 アレンの口から語られた言葉。

 その意味が分からずに、私はただただアレンの言葉をそのまま復唱する。

 アレンは自身のコートの中へと手を入れた。そして、碧く輝く宝石、ホープ・ブルーを取り出し、それをこちらへと投げて寄越す。私はそれを慌ててキャッチした。


「知っての通り、君が今手にしているホープ・ブルーには死の呪いが掛けられている」


 アレンは私の手にしたホープ・ブルーを指差し言う。


「呪いと聞けば、漠然とした、いまいち信憑性に欠けるものも確かに多いが、それは紛れもなく本物だ。それは歴史が証明している。

 ホープ・ブルーに掛けられた呪いは確実に人を死に追いやって来た。呪いというものは確かに存在する」


 アレンは更に話を続ける。


「俺は以前立ち寄ったブルセットの街で自称占い師とかいう老婆から死の警告を受けた」

「死の警告?」

「そう、自らが招く運命によって俺は自分を殺すだろと」

「………」

「その時は訳が分からなかったが、今となっては、その自称占い師が言っていたのは、つまりこの事だったんじゃないかと思っている」


 ホープ・ブルーに手を出せば、不幸を招き呪われる。

 その結果、自ら死を招く事になる、と。


「まあつまり、俺は今現在、君の手にしてるその宝石。ホープ・ブルーによって完全に呪われてるって事だ」


 そこまでアレンの話を聞いて、私は手にしたホープ・ブルーを改めて見詰める。

 手の中で凛とした碧い輝きを放つホープ・ブルー。

 この宝石は呪われている。

 ホープ・ブルーは持つ者に不幸を齎し、やがては持ち主を死へと追いやる。

 そう思うと、この美しい宝石が何だか急に恐ろしくなってしまう。


「けれども、俺はこう考えている。“呪い”というものが確かに存在するのならば、当然それの“対になる力”が存在してもおかしくはないと」

「対になる力……?」

「そう。つまり、邪を払い、呪いを打ち払う力が必ず存在する筈だと」


 アレンは言った。

 その言葉に頭は更に困惑していく。


「その占い師はこうも言っていた。すぐ傍に“光を纏う者”がいる。その者ならば、もしかしたら、運命を変えられるかもしれないと」

「運命を変えられる……?」

「そう。そして――俺はその“光を纏う者”がハル、君だと思っている」

「は……?」


 私は耳を疑った。


 え、何で……。


「ど、どうしてここで私が出て来るんですか!?」


 本当に訳が分からない。


「どうやら自分では全く自覚が無いようだな」

「え……?」

「最初は勿論、俺も半信半疑だったよ。まさか君にそんな力があるだなんて正直思ってもいなかった。

 だが、俺はレートの酒場で君に確かに不思議な“何か”を感じた。確たる証拠がある訳ではなかったが……君の中に感じたそれが一体何なのか。それを知る為にも、俺は君を何度か試してみたんだ」


 そう言ってアレンは記憶に新しい話を持ち出してみせた。

 それは、同じくレート港での一件。キッカーの手下達から命懸けで逃げた街中で逃走劇の件である。


「そんなのただの偶然……」

「なら、クワッズ共和国でのホープ・ブルーの光の件。それから解読不可能と言われた地図を読み解いた件なんかも、それもただの偶然なのか?」

「それは……」


 私は言葉に詰まった。

 確かに私は、アレンの目の前で何度か不可思議な現象を起こしてみせた。

 一体何故、どうしてそんな事が出来たのか。自分では全く説明が付かなくて。


「この世に偶然なんてない」


 あるのは必然だけ。

 或いは、偶然と必然の差は紙一重でしかない。


「……なんて、たいそうな事を言うつもりはないが、それでもよく言うだろ?“運も実力のうち”、ってな」


 そう言ってアレンは真っ直ぐに私を見据える。


「だから俺は確信している。ハル、君こそが“運命を変えられる光を纏う者”なのだってね」


 アレンの口から語られた衝撃の告白に私は言葉を失った。

 私が“運命を変えられる光を纏う者”……?

 そんな事、とても信じられなかった。


 確かに私はレートの街での件といい、危ない局面を何度か切り抜けては来た。しかし、それらのどれをとってみてもそれは単なる偶然にしか過ぎない。

 たが、単なる偶然という言葉だけでは説明が付かない事も確かにある訳であって……。とは言え、そんな突拍子のない話の中でも分かった事が1つあった。


 毎度、アレンが取る不可解な行動。

 アレンが常に私の傍を離れない理由。その理由が今やっと理解出来た。

 全ては私の持つという呪いの“対になる力”を測る為に最初から意図的に仕組まれたものであって。アレンが取るその行動の全ては、自身に齎される死の運命を回避する為のものだったのだと。


 つまり、アレンは私がその“光を纏う者”であると本気で信じているのだ。


「さて、俺は君に正直に話した。だから君にも正直に答えて貰おうか」


 困惑を拭い切れない私をよそにアレンそのまま話を続ける。

 アレンの次の言葉には更なる衝撃が待っていた。


「ハル、君はラックの妹じゃない」

「え……」

「君は一体何者なんだ?」


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