ハルとユキと 4
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レストランから出てみれば、目の前には瓦礫の山。先程の揺れでホテル内の壁や天井が崩れてしまったようだ。玄関口も塞がれてしまっている。
ユキのことは心配ではあるが、無闇にうろうろするよりもここで待っていた方が良さそうだ、と判断した俺はレストランで双子を待つことにした。
座りながら未だに目を覚まさない三人を観察してみる。
自分と同じ歳ぐらいの男性が一人。それと恐らく四~五十代くらいであろう男女が一組。きっと今なら何をしても目を覚ますことはない。もっと情報が欲しくて俺はまず同年代の男性から調べることにした。
男性のズボンのポケットにスマホを見つける。俺が触ったことでロック画面が表示された。そこに映し出されたのは仲良さげに肩を寄せ合う男女。目の前にいるこの男性と女性の方はショートボブでふんわりした雰囲気が印象的な所謂癒し系女子だった。恐らく恋人同士なのだろう。パスワードが分からない為、この機械からはこれ以上の情報を得ることは出来ない。他にも何かないかと調べてみたが、結局何も出てこなかった。
次は床に倒れていた四~五十代の男女だ。男性の所持品は隣にいる女性と二人で写っている写真。
その裏には、“あなたと二人でこれからも”と柔らかい綺麗な字で書かれていた。女性から男性への贈り物なのだろうか。
次に女性が持っていたバッグの中を見てみる。小さな子どもが好きそうな形やおもちゃが色々と入っていた。あとは御守りが一つ。それぞれの左手に光るお揃いの指輪から二人が夫婦である事が推測出来る。けれど、それ以上の事は分からなかった。
三人とも何となくだが顔を知っているような、知らないような。記憶を辿ろうとしてみるが、考えれば考えるほど頭の中は真っ白になっていく気がする。何かが見つかる訳でもないが、俺は上を向いて息を吐き出し、目を閉じ、落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせる。
いったい、何が起きてるんだよ。ハルとユキ……、久しぶりに会えた。できればもっと別の形で会いたかったよ。
なんて、考えても仕方のない事ばかりが浮かんでは消えていく。
「――はじめ君?」
名前を呼ばれ、目を開けた。ちゃんと二人で戻って来られたようだ。
「ユキおかえり。ハルも」
「びっくりした。はじめ君も眠っちゃったのかと思った」
にっこり笑うユキと俺はついでかよと呆れるハル。いや、“ハルも”って言っちゃったけどさ。わざとじゃないんだよ、無意識だ。
「フロントから幾つか懐中電灯を持ってきたよ。スマホだけだと限界あるかなぁと思ったから」
「ああ、ありがとう。助かる」
「まだ、他の人達は目を覚まさないんだね」