ユキと“ハル”は、ハルと“ユキ”で 3
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ここはレストランの奥にある調理場だ。上手い具合に鉢合わせせずに夢の中に入れたようだ。
「何か、飲む? さっき、ここの奥に飲み物が置いてあるのを見つけたの」
「あ、じゃあ俺が取ってくるよ」
「ううん、大丈夫。私が行くよ。はじめ君はハルのことお願い」
妹と一の会話が聞こえ、慌てて身を隠す。もうそこまで進んでいるのか。
もうすぐ妹、ここでは“ユキ”が調理場に来る。ここにもう一人俺がいるって一にバレたら、また振り出しに戻る。これも既に経験済み。
「えーっと、はじめ君は何が飲みたいかな。あれ、飲み物どこだっけ?」
妹は昔から独り言を言いながらあれこれやるのが癖だった。
俺はタイミングを見計らって“ハル”として妹の前に現れる。名前の呼び間違いはもう絶対しない。こんなところでは、もう絶対に失敗なんてしないからね。
「ユキ……?」
然も“ユキ”の後にここに来ました風を装って自分から声をかける。
「えっ、ハル……? 目が覚めたの?」
「うん」
「大丈夫? 身体は何ともない?」
一の夢の中の“ユキ”だけど、目の前にいる妹は間違いなく俺の知っている可愛くて優しいハルだ。もうそれで頭の中が真っ白になることはないけど。
「大丈夫だよ。ユキは優しいね」
「そう? 優しいのはハルだよ」
だけども、やっぱり込み上げてくる何があって、ふふふっと笑う“ユキ”の頬に思わず手を伸ばしてしまった。
「ハル……?」
俺の行動を不思議そうにしながらされるがままの “ユキ”。
「何でもないよ」
妹を安心させたくて、彼女にしか見せない笑顔を見せた。
「ユキ、お願いがあるんだ。ここで暫く隠れていてくれないかな。一と俺とでホテルの中を調べてくるから」
「え……、そんな……。私も一緒に行きたいよ」
彼女がそう言うことは分かっていた。だから、俺は半分嘘を吐く。
「何があるかも分からないし、ユキを危ない目に合わせたくないんだ。それに一と話し合って決めたことだから」
「はじめ君も……?」
妹が“はじめ君”に弱いことは知っている。だから、俺はそれを利用する。
「うん。ちゃんと迎えに来るからここにいてくれる?」
「……わかった」
調理場にある戸棚に妹を隠して、俺は自分の服の下に着ていたワンピース姿になる。そしてウィッグをつけ、“ユキ”になった。それから“ユキ”が一の為に持って行こうとしていた飲み物を準備し、向こうで待っている一のもとへと向かった。
「お待たせ。何がいいか分からなかったから、無難にお茶にしたよ」
ユキになった俺は一に睡眠薬入りのお茶を渡す。そして夢の中の俺、“ハル”を挟んで反対側の椅子に座った。
どうやら、入れ替わったことはバレていない。何の迷いもなくお茶をぐいっと喉に流し込む一を見て、妹の日記で見たことを話してみる。
「ねぇ、はじめ君。はじめ君は私のヒーローだよ。貴方はそんなことないって言うかもしれないけど、あの頃の私は貴方に救われてたの。頭が良くて、優しくてあったかい貴方に」
「ユキ……。俺、は…………」
一は言葉切れ切れにそのままテーブルに突っ伏した。
「はじめ君、ちゃんと見つけてね」
妹の声を真似て一に語りかけていた。




