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アキラの彼女 2

 



 結局アキラは放課後までそこを動くことはなかった。教室から人がいなくなる時間まで待っていたのだろう。そろそろいいか、と呟いたアキラは校舎の中へと戻って行った。俺も周りに警戒しながら、その後を付いて行く。


 アキラは二年の教室の扉の前で一度足を止めたかと思えば、突然慌てたようにその隣の教室に入ってしまった。廊下の端っこで隠れて様子を見ていると先程入ろうとしていた教室から数名の生徒がわいわいと騒ぎながら出て来るのが見えた。


 遠目で姿ははっきりとは見えないが、会話の内容ははっきりと聞こえる。この声は昼休みにアキラをパシっていた男子生徒達だとすぐに分かった。そして、なんとそこには美月と呼ばれていた女子生徒もいた。


 これは……、嫌な予感しかしない。


「あんた達さぁ、あんまり木崎のことからかっちゃダメだよ。やり過ぎ注意」


「何のことだよ。俺達はただ木崎と()()()してるだけだし? なぁ、足立」


「ああ、そうだな」


 足立と呼ばれたそいつは、にやりと笑う。


「エグいことするよねー」


 女子生徒も首を傾げながら、ふふふと笑っている。


「エグいのはどっちだよ。お前、木崎と付き合ってるらしいじゃん?」


「冗談やめてよー。私の彼氏はこのイケメン足立君だ・か・ら」


 足立の前にぴょこんと回り込み、首に腕を回して甘えた仕草をする美月。足立も彼女の腰に手を回し、満更でもなさそうだ。


「うわー、木崎かわいそー」


「絶対、あいつ美月のこと彼女だと思ってるって」


「ないない。木崎はないって」


「お前らいつまでもイチャイチャしてんなよ」


 えー、やだー。と言いながらわいわい、きゃいきゃいとそいつらは廊下の向こうへと消えていった。


 あの女子……、見た目通りだったな。


 静まり返った廊下をぼんやり見つめながらふと気付く。


 これ、彼奴にも聞こえて――


 廊下の端にいた俺にも聞こえたくらいだから、廊下に面した教室にいるアキラに聞こえていないはずがない。中でどうしているのか確認したいが、俺の姿を見られるリスクを考えるとそれは避けた方がいいだろう。なかなか出てこないアキラにヤキモキしていると、ガラッ――と扉が開いた。


 と、思ったら出て来たのは大人しそうなショートボブの女子生徒。呆気に取られていると一歩遅れてアキラも出てきた。そして再び静寂に包まれた廊下で俺は一人、突っ立っていた。




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