Prologue
はじめる前に――
この注意事項を必ずお読みください。
注意事項は以下の三つです。
◇◆◇
一、これはあなたを苦しめるものではありません。
二、あなたにとって大切なものを肌身離さずお持ちください。ただし、持ち込みができるのは一人につき一点のみです。
三、必ずお戻りください。
◇◆◇
上記を守り、快適な旅をお過ごしください。
……Have a nice dream
◇
あれ、俺はいったいここで何をしているんだっけ?
そんな疑問がふと浮かんだ。ここは見たところ学校の教室。だけど俺はスーツを着ていて、前では見知らぬ誰かが教鞭を執っている。――いや、俺はあの人に見覚えがある。
……ああ、そうだ。小学校の時の担任だ。
ということは、ここは俺が通っていた小学校ということになる。何故だか今、俺は周りの奴等と一緒になって「はい! はい!」と声を張り上げながら、手を挙げて自分の存在を主張していた。いったいこの行動に何の意味があるのか。自分の行動の奇怪さに気付き、我に返ったのが数秒前。
――――そうだ、俺は。
バっと、振り返るとそこには墨汁で書かれた文字達が規則正しく並んでいる。そして、真っ先に俺の目に飛び込んできたのは、「三年一組 さとうまじめ」と書かれた自分のそれだった。
“やれ、やるんだ!”
誰かが俺の中で叫んだ。
この異様な空間の矛盾に気付いた俺はその叫びに従って、ベリッとそれを勢いよく剥がす。
――と、その瞬間世界がグニャリと歪んだ。