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0.禁忌の爪痕



 炎によって焼け焦げた肉片の匂いが焼け野原一帯に充満している。

 蒼空は黒煙で閉ざされ、視界に映る光景は炎の熱量によって陽炎のように揺らめく。

 燃える木材、割れた試験管、大地に染み込む魔薬剤そして、辺りに散らばる無数の人体の一部。

 焦げた腕に、燃える頭部に、飛び散った臓物。


 一言で表せば、地獄絵図。


 まさしくその通りだ。

 今、目の前に広がっている惨状はまさしく地獄。ともすればそれ以上だ。

 そんな無残極まりない、炎と血の大地を歩む一人の少年がいた。

 炎とはまた違う色味を帯びた赤い瞳に、煤けた銀髪。

 纏っている衣服は所々焼け焦げ、素肌には大量の傷と痣。

 一目でこの惨状に巻き込まれたと推測できる姿の少年は、光を失った虚ろな瞳で辺りに視線を配りながら、覚束ない足取りでフラフラと歩みを進めている。

 何かを探すように、フラフラと……。

 やがて歩を止めた少年は、血で濡れた大地に膝をつくと、地面に落ちていた千切れた右腕を拾い上げる。

 所々焼け焦げ、血がへばり付いたその腕には銀色に鈍く輝くブレスレットがはめられており、

 少年は虚ろな瞳から涙を流し、その腕を抱きかかえ、何度も謝り続けるのだった……。

 

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