0-1 目覚めたら白い部屋
「ん?ここは、どこだ?」
見渡す限り、真っ白な空間。回りを見渡しても白以外の色はなく、自分が寝ていたであろう地面?も白一色で動く度に僅かだが波打っている。
目覚めたら見知らぬ謎の空間。落ち着いている思考。普通は何かが変だ、ここはどこか、誰かに拉致されたとか、いろいろと考え冷静ではいられなくパニックになるはずなのに、落ち着いている自分に何となく気持ちの悪さを覚えた。
そしてそんな自分に違和感を持ちつつも、ここで目覚める前までの覚えていることを出来る限り思い出そうと記憶の整理をし始めた。
俺の名前は鳴神 仁。確か歳は35になったばっかしだったか。地球の日本という島国の東京生まれ、東京育ち。両親は共に健在。兄弟は年の離れた弟が一人。結婚はしておらず独身。彼女もいない。
「……なんか自分で言ってて悲しくなってきたな」
俺は一人苦笑いをしつつも今、自分が置かれた状況を確認していった。
起床して、一人暮らしのアパートで朝ご飯を食べ、近くのコンビニで弁当を買い工場へ出社。昼にコンビニ弁当を食べ、午後の仕事を終え帰宅し、夜ご飯を食べて風呂に入り寝る……見事に普通の日常だ。そして、寝るときにセットした目覚ましを止めようと手を伸ばすも伸ばした先には目覚ましはなく、起きたらここ謎の空間にいた。
「うーん……寝て起きたらこことか意味分かんないんだけど……そもそもこれは夢?妙にリアルな夢だなぁ…」
『……目覚めたようだな?』
「だ、誰だ!?」
立ち上がり声がした方を見ると、白いローブのようなものを着た、見た目60代とも70代とも取れる白い髭を蓄えたお爺さんがいた。