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騎士爵さまの野望  作者: 黒じょか
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序章

 その日の朝は、ずいぶんと暖かな日差しで始まった――気がする。


 私、いや俺様の退屈な毎日は、とんでもなく単に広いだけの森とか岩とか、小ぃせぇー川みたいのがどっかの町まで続く、とにかく糞退屈な庭の自宅警備から始まる。物心ついた時から、俺様はこの糞みたいな退屈な時間と、自宅警備だけに追われる日々を過ごしてきた。


 いや、面倒くせぇー


 だらだら歩くのも疲れる玉砂利の道。


 確か3代前のじじぃがこさえたって話だが。

 俺に言わせりゃ、金あんだから石畳にしろや! ってことだ。


 何だって砂利なんだよ。


 歩き難い上に、靴の溝に嵌って面倒だろ、これはよー。


 でだ、庭に造形決め込むのは別段、悪くわねぇよ。

 だがな、狩を楽しむ理由で今でも、肉食動物を放したままにすんなって話だ。


 それで、俺様の引きこもりを妨害するんじゃないって。

 何だって毎回、毎回、使用人共の命を俺様が守るんだって話さ。

 面倒だろ! 死にたくないなら森に行くなって話だし。


 っつ、俺様の手を煩わせるなって。


 ...あの青い髪のメス、涙流して懇願しやがって。


「熊ごときが! 俺様の庭を好き勝手歩いてんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」


 どこから迷い込んできやがった。

 こいつは、どす黒い毛を生やした巨大な熊だ。小さな顔には歴戦と思しき額の十字傷が印象深い。

 何よりも動物のくせに動きが尋常じゃない。


 まず、俺様の放つ一閃をまるで剣術を知るかのようなステップで後方に飛び回避する。

 続いて、俺様は剣を引いて脇を固める。呼吸の間合いと言うか手合いを理解しているならば、防御と同時に懐まで飛び込んでこられたら、俺様が詰む。

 が、熊の野郎、俺の不安を察知してやがった。


 飛び込んでこられたら厄介とか考えるもんじゃないな。


 現にこの野郎、飛び込んで。

 剣を盾に奴の一撃を...とか、そんな次元じゃなかった。

 俺様らしくない情けねぇ声を発しながら、豪快に吹き飛ばされちまった。


 ったく、俺様は何者でもねぇタダの引きこもりだ。

 自宅警備員が、熊と戦える筈もない。

 俺様はなにをイキがってたんだ。


 って、走馬燈みたいなのを見ながら光の中へ。


 死んだ。

 これは間違いなく死亡フラグだ。


 あばよ! 俺の人生。


『いらっしゃいませ。おひとり様ですか?』


 光の中で、ふわふわ小せぇのが浮いてやがる。

 何だ?

「これは、乳首?」


 ふわふわ浮いてる小せぇのが体当たりしてきた。

「って、何しやがんだ!!」


『ひとの体をジロジロ、好奇の目で見るのをやめてください!!』


「だってよ、このポッちは」

 また体当たりしてきた。

 よく見れば、その体当たりも素っ裸のちっこいのが真っ赤になって張り手をしてきている。

 超接近する度に揺れる胸は、わりと好みの大きさだ。


『変態! 変態!』


「素っ裸の奴に言われたくはない」

 まあ、正直に言わなくても良かったと今は後悔している。

 ふわふわのちっこいのが腕や手で胸を隠し、膝を山折りして丸く縮こまってしまったわけだし。

 眼福を失ったのは、後悔の極みだ。

「まあ、夢だとしてもこれは嬉しい誤算か」

 俺様の儚い妄想ってとこか。


『ブレーメル・イス第一帝国の召喚ゲートにて訪国され... えっと、お客様は、おひとり様ですか?』

「は?」

 召喚ゲートだ? 何の話だ。

 白く眩い世界――だと思い込んでいたが、俺様がへたり込んでいる後ろに穴がある。

 好奇心もあって、一度その穴を覗きたくなった。


 何だっけ? 深淵を覗くものは、深淵もまた覗いてるだっけか――。

 穴の向こう側は、俺のよく知っている俺様の庭だ。13代目当主となって相続した、アホみたいに大きくて広い庭と、じじぃの執事とばばぁの使用人。あと、青い髪の少女? 誰だそいつ。

 まあ、俺の庭だ。

 庭? ん...熊? 俺の目の前に熊がいる。

 穴、穴だ、俺は一目散に穴を通って元の光の部屋に戻った。


『お早いお帰りですね! 今度はおふたりで来られましたか!!』


「ふたりだって?」

 恐る恐る真後ろを見る。

 透き通るような白い肌に真っ青な長い髪を伸ばす少女。

 俺様に涙を流して請願してきた使用人の娘。

「よ、よう」

 ちょっと挨拶しておこうと思った。

 それだけだ。

 他意は無い。


『まずは、持ち物チェックと行きましょう!』

 ふわふわのちっこいのは、俺から剣をはぎ取った。

 力ずくというより何か得体のしれない力で引っ張られた感じだ。

『これはブロードソードですね! OK 問題ないです。入国の際には、それなりの意匠を誂えておきます』

 それから、ポケットの金が消える。

 確か金貨2、3枚はあった筈だ。

『うわっ! お金持ちですね』


 どっちが好奇の目だ。

 俺の金で目を輝かせやがって。

『うんうん、金貨はちょっと大袈裟なので銀貨に替えて袋一杯にしておきます!』

「はぁ? ちょっと待て、何でそうなる!」

 俺の金を返せ!

 ふわふわのは。少し困ったような表情を浮かべ、

『この国で金貨を使えるのは大貴族と王族だけです。そもそも、金貨は高価過ぎですし、1枚で庭付きお洒落なお屋敷とメイドさん多数を養えます。そんな希少貨幣を持ってたら、面倒に巻き込まれるのは自明の理ですが?』

 ろ、ふわふわのが言う。

 イマイチ理解に苦しむが、言ってることは分かる。

 まあ、確かに王族とは関係のない俺様が持ってれば、怪しすぎるわな。


『で、あとはこのアミュレットですけど』

 俺のいや、我が家の家宝だ。

 当主の証として肌身離さず持っていた腕輪。

 色んな謂れがあるんだけど、中央の宝石が曇ってて、かつてどんな輝きを放っていたか不明な宝石だ。

 うち、2個ほど石がない。


『こちらの世界の理に合わして、調整しておきますね!』

「調整?」

 青い髪の少女がすっと真横に寄り添ってきた。

 歩み寄って、近づいただけで甘い香りが鼻をくすぐってきた。

「マジックアイテム」

 ま、まじ...おいおい何を。

『魔力増幅と詠唱コード不要の即起動サポートアイテム...でしたかね』

 ふわふわの微笑。

 もっと分かり易く言え。


『御訪国、お待ち申し上げておりました! ラインベルク騎士爵殿!!』


これは、ノリで書いてる作品。

鍛冶屋の娘の方よりかは、少し速いピッチで次の話を書く予定。


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