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8話『初陣』

やばい。こいつはやばい。モンスターについて全然知らないけど、外見から見てやばい。危険信号がそいつの身体中から発されている。ここは今対峙している女の子を捨てて逃げないと俺らも危ない....そう思った矢先だった。


「そこのモンスター!丁度いい、私たちの能力試行に手伝ってもらうわ!」


カレンが、モンスターに向かって叫んだ。


「おいカレン!何馬鹿な事言ってくれてんだ、モンスターこっちのこと気づいたじゃねぇか!あと私たちって言ったけど俺もうブラッド相手にしてるから試さなくていいんで逃げたいです!」


「馬鹿な事言ってんのはあんたよ!」


「なん....だと......?!」


「今私たちは今までに無いくらいのチャンスの場面にいるのよ。このモンスターを倒せばあの子を助けたことになるし、強いモンスターってのはギルドに倒したことを報告すればお金がもらえるのよ!倒さない理由がないじゃない!」


「逆に俺らが倒されたらぁ?!」


「今そんな事考えてる場合じゃないわよ!」


こいつ正気かよ?!行き当たりばったりにもほどがあんだろ馬鹿か!

そうこうしてるうちに、さっきまでの女の子ではなく俺たちの方を向いて、いつ攻撃を仕掛けるか待っているようだ。完全に敵対していると見れる。

確か完全にモンスターと敵対した後に背を向けて逃げ出してしまうと、認識が敵ではなく餌になって、よけいに追い掛けてくるって習った気がする。こうなったらもうおしまいだ。


「....もう逃げたらだめだ。カレン、作戦は?」


「お、やっとやる気になったのね!作戦は当然ながら私が考えているわ!」


「まじか!珍しい!」


「日常茶飯事よ!作戦はーーーーー」


カレンが俺にしか聞こえないくらいの声で作戦を伝えてきた。


「ルシアがモンスターと打ち合ってるうちに私が風纏であの子を救い出して避難させて、すぐ戻ってくるわ!そのあとは2体1のリンチよ!」


「なんで俺が囮だよ?!お前の能力試行じゃないのかよ!」


「私もたしかに戦闘を最初からしたい気もあるけど、風纏で救出に行った方が確実だもの」


くっ!確かにカレンの方が移動速度が桁違いに早い。囮であいつの攻撃を受けるのもしたくない.....


「モンスターさぁん!こいつがあなたの最初の敵よ!」


「おい?!お前なに言ってやがんだよ?!」


カレンの言ったことが伝わったようにモンスターが俺の方を向き、低い態勢で唸る。完全に攻撃態勢だ。


「カレン!さっさと行って俺んとこ戻ってこい!」


「りょーかいっ!」


カレンに声をかけ、モンスターの方を再び見る。そいつは攻撃態勢のままこちらを睨みつけている。


「クソモンスター!さっさと帰りやがってくださ...来たっ!」


クソモンスターに反応したのか俺に向けて走り込んでくる。とても疾い!

モンスターはその生身で受けたら一撃で体をぶった斬ってしまいそうな、その鍵爪で俺を殴りにくる。なんとか見えたのでそこに剣を合わせる。正常に《クリティカルガード》が発動。当たった振動さえもほとんどない。

防がれたのを確認したモンスターは一度後へ軽く跳び、その着地とほぼ同時に右へ一度跳び、そして俺に攻撃を仕掛けてくる。それもなんとか防ぐ。反応的にギリギリの防御だが、《クリティカルガード》が発動し、俺はノーダメージだ。

モンスターは、俺が仰け反りもしないので連撃を加えることも出来ず、ヒットアウェイ戦法のように攻撃をしてくる。もっとも、ヒットしていないのだが。

少し余裕が出来たのでカレンの方を確認。女の子を抱きかかえようとしている。救助成功に近い。その確認後、すぐへモンスターへと目を移し、単調な攻撃をなんとか剣でガード。毎回発動する《クリティカルガード》のおかげで全くダメージはないが、やはりギリギリの防御は変わらない。剣の練習せねば。


「...さて、こちらも攻撃かな!」


剣は変わらず下手だけどなんだか調子がいい。このままこいつを倒してしまえそうだ。次の攻撃を防いだあと、合わせてやる。

モンスターは今までと変わらず後ろへ一旦下がり、次は左に方向を変えて俺に攻撃を仕掛けてくる。今回のガードは、ガードする気まんまんで集中していたので、今までより速くできた。きちんと《ジャストガード》も発動し、ノーダメージ。そのまま1歩前へ踏み込んで、後ろへ跳ぼうとしているモンスターの腹を目掛けて剣を横に振るった。

今までで最高とも言える動きだった。だが、腹を斬って仕留めたはずの剣は空を斬って仕留められたなかった。


「?!」


嫌な予感がして上を向くと、かなり高いところにモンスターがいて、俺の方に降りてきていた。俺の攻撃を跳躍して躱し、そのまま重力を乗せた攻撃を仕掛けるというところまで計算されていたのだ。ルシアが調子に乗って攻撃してしまい、完全にハメられた。

この攻撃は剣でのガードではどうにもならないだろう。そのまま雪崩こまれるはずだ。

完全に死んだーーーそう思った時、横から何かがモンスターにぶつかり、モンスターは横へ吹っ飛んだ。


「?!」


そのぶつかった方は俺の隣に着地した。


「お待たせルシア!」


「カレン?!救出は?」


「大、成、功!ルシアもなんとか無傷だね!」


「おう、ほんと助かった。死ぬところだったわ」


「いいよ〜!あいつ、素早そうだし、2人でやってたら逆にやりにくそう。私がやるよ」


「おう、任せた。あいつ、下手に攻撃すると今みたいに跳躍してきたり、賢いみたいだ」


「おーけー!よし、もっかい《風纏》発動!」


スキル《風纏》発動宣言と同時にカレンの身の回りに風が起こる。その風をカレンが纏う。羽まで仕上がり、その姿は風を司る天使のようだ。


「さてさて、やっちゃおうか!」


モンスターは、カレンの空中での蹴りなど無かったかのように、また攻撃態勢をとっている。

モンスターとカレンは同時に地を蹴った。そしてーーーー

カレンがモンスターをぶっ飛ばした。しかしカレンはただ殴っただけである。


「?!やっぱカレン強い!」


「ルシアくん、そういうの照れるなぁ!」


「反応しなくていいからさっさとやっちまってくれ!」


「まっかせとけぇい!」


そう、今まででアホなことしかしてなかったが、なんだかんだで学校の成績上位者だったのだ。しかも風纏をしての闘い方はカレンは何年もやっている、いわゆる十八番である。だが、あの素早いモンスターに対しても攻撃を入れることが出来るとは、流石である。

すると、急に咆哮があがった。吹き飛ばされたモンスターである。しかもその後のこちらを見る目は完全に本気モードで、赤く、鋭くなっていた。


「おいカレン!ヤバくないかあれ!」


「大丈夫だと思う!」


カレンが返事をした直後、モンスターが跳躍。先程までとは比にならない速さだ。


「っ?!」


カレンも驚いたように振りかざされた腕を弾く。鍵爪に当たらないように、相手の肘より少し下を弾いている辺りがやはり上手い。次も反対の腕からの攻撃も弾き、直後に蹴りを入れるが、モンスターは後ろへの小ジャンプで回避。ジャンプしたモンスターを追ってカレンが右ストレート。それをモンスターは右へ躱しカレンを噛もうとするがその顎に右膝を合わせる。打ち上げられた顔面にカレンが左ストレートを決めようとするが、モンスターは残った後ろ足をあえて倒して後ろ回りをするように回避。


獣対天才のハイレベルな肉弾戦が繰り広げられるのを見ていたルシアは、そこに入ろうとするのを諦め、カレンを観戦していた。

やべぇ、まじ強いなあいつら。てか俺の時にあんな速いことされてたら俺簡単に死んでたし、よかったわ。モンスターさんありがとう!

あ、そうだ。さっきの女の子は....

周りを見渡すと、木の下で座っている彼女を見つけた。


「ねぇ君、大丈夫だった?」


声をかけると、その子は静かに顔を上げる。え、めっちゃ可愛い!


「うん、私はモンスターからは何もされてないから大丈夫。助けてくれてありがとう」


「いやいや、大丈夫だよ。それにここまで運んでくれたのはあいつだし」


俺はカレンの方を向く。まだカレンはモンスターと激しい肉弾戦を繰り広げていた。


「あの人、今ピンチかも」


「え、まじで?」


すると本当に、カレンがモンスターの鍵爪の攻撃を腕に掠らせてた。カレンは苦悶の表情をする。


「あの人も、あなたもいるし、私も参戦する。私の力があれば勝てるから」


「え、君って冒険者?」


「うん、まだ魔導書グリモワール貰って日は浅いけど、魔法使いやってるんだ。魔法も撃てるよ」


「ほんとか?!どんな魔法なんだ?」


「木属性の束縛魔法と、風、火、水の中規模魔法が使える。今回は束縛魔法で倒せるよ」


「オーケー。詳しくお願いしていいか?」


俺は彼女の作戦を聞いた。俺の考える限り最高で、俺が非常に危険な作戦だ。正直やりたくないけどカレンが少し押されている今、やるしかない。


「カレンー!勝つための作戦があるから、一旦引け!」


「え、ルシア?!」


「後は俺とあの子に任せろ!」


「....わかった。やられないでよ!」


「まだ人生したいことが沢山あるんでな、死ねないよ」


カレンがモンスターの攻撃を躱し、後ろへ跳躍する。それを追おうとするモンスターに横凪の攻撃。これは当然ながら躱される。その直後に鍵爪が顔面に迫るが、それをなんとか剣でガード。《クリティカルガード》は健在だ。次は剣を下から上へ振り上げる。それをモンスターが左に回避したと同時に俺は反対の右へ跳ぶ。そして双方の間に少し間が開き、止まる。その止まった瞬間である。


「《サガン・バインド》っ!」


女の子が束縛魔法をタイミングぴったりに発動。モンスターの足元から木の根、蔦系の植物などが急に生え、モンスターの四足を絡めとり、動けなくした。モンスターがそれに気づいて鳴きだすが、そのうちに口、背などにも絡まり、ものの数秒でモンスターの全身を束縛した。


「よっしゃぁ!作戦通り!」


「え?!あの子魔法使いだったの?!」


「おう、さっき聞いてきた。んで、能力聞いて、この作戦だよ」


「すご〜い!」


「よし、あとは仕留めるだけだな」


俺とカレンはモンスターを仕留めようと束縛された獣に近づくがーーー


「待って!」


女の子の一言に立ち止まる。


「ん?どうした?」


「まだ、仕留めちゃ、ダメ」


「え、なんで〜?さっさとしようよ〜」


カレンが女の子をそそのかす。すると、女の子が顔を上げーーー


「折角ぅ、生きたままぁ、捕まえたんだよぉ?殺すならぁ、殺すでぇ、じっくりいかないと....」


彼女は、顔を真っ赤に染め、吐息を荒くしてそう言い放った。

土曜に更新と言った翌週にすっぽかしました、青物です。

昨日はいろいろありまして、投稿することができませんでした、すみません。

土曜と言わず、土日に投稿としようと思います。色々変えて、ほんとうに申し訳ないです。

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