5話『チュートリアル②』
ルシアとブラットは、相手めがけて同時に地面を蹴った。
基本ステータスの走力であればブラットの方がルシアより高いのは明らかだが、武器の重さのせいか、両者変わらぬ速さである。
先制はブラット。その大剣のリーチを活かし、良い間合いで縦の一撃を振るう。
「お、らぁ!」
「んっ!」
《岩を砕く大剣》グラビアルの一撃は、その名の通り、一撃が岩を砕くほど重く、大きい。それをルシアは無謀にも剣で受け止めようとする。その剣でのガードを見た瞬間、ブラットは勝ちを確信した。
が、金属同士のぶつかる、キンッという音を立て、ブラットの一撃は弾かれた。それだけでない、攻撃をガードしたはずのルシアには、傷一つついていない。
「な....?!」
「....《クリティカルガード》が発動したのか!」
そう、クリティカルガードが発動したのだ。ブラットの先制攻撃は《クリティカルガード》によって無になった。しかし、攻撃を防いだルシアも同様に驚いていたため、そこからのカウンターには繋がらない。
勝負は振り出しにもどった。そのように感じられたが、ブラットの先制攻撃を防がれたことによる影響は小さくなかった。
そのブラットの驚きを隠せていない姿を見たルシアは、すぐに攻撃に移す。とはいえ、先程のカウンターのチャンスを逃したため、ブラットはもう次に構えている。
次はルシアの攻撃だ。正面からの横一閃。その安直で素人じみた攻撃は、当然ブラットに完璧に防がれる。
はずだった。
キィィィィィン!
「?!」
ルシアの剣が当たった瞬間、いつもとは一味違う金属音とともにブラットが横に吹き飛んだ。その距離は5mを超えた。
ブラットは驚きのあまり着地を忘れ、背中から着地。受け身をとる前にゴロゴロと転がってとまった。
「これは........《スーパークリティカル》か!」
そう、《スーパークリティカル》の発動により、普通の何倍にもなる威力の攻撃になったのだ。
これも、ブラットが高ステータスであり、大剣でのガードが成功していたためこれで済んだが、他では一撃で相手を沈めるほどの威力だ。
「な、なんなんだよお前.....それはなんだよ!なんでお前がそんな一撃出せたり、俺の攻撃を受け止めたり出来るんだよ!」
ブラットが起き上がりながら叫ぶ。
そして、咆哮し、ルシアへ一直線に走り出す。彼の負けん気がさせた行動だ。
『ここで、ルシアに二つの幸運が顕現した』
一つ。ブラットが、先程の一撃の余韻で足がふらついたうえ、足元の石のせいで転倒した。
二つ、その大剣が手から離れ、そのままルシアの攻撃範囲まで転がった。
ブラットはルシアの前に武器を持たない、無防備のまま倒れ込んでいた。ルシアは、攻撃しようと思えば攻撃できたし、獲物であれば仕留めることも出来た。
「.....お前これ負けでいいか?」
手を離した大剣を見つけ、その方向へ起き上がろうとしたブラットに、ルシアは棄権勧告をする。
「....俺、こっから仕留めようと思えば、仕留めれるからぁ!首も飛ばれるからぁ!
だ、け、ど。それも俺の良心が痛む。だから、死に損ないとも言える君を俺は見逃そうとしているんだよ。わかるかな?」
ブラットは後ろを向いたまま固まる。
「わかんねぇようだな!さっさとあの大剣拾って逃げろっていってんだよ!負け犬がぁぁぁ!!!」
「わぁぁぁぁ!チクショォォォォ!!!」
ブラットは駆け出した。雑に大剣を拾いあげ、背中の大きな鞘に入れることなく向こうへ消えていった。
「あはははは!ざまぁみやがれってんだ!」
「あのー....ルシア?」
「ん?どーしたカレン?俺、今気分いいから大体のこと聞いてやるけど」
「いや....今のはゲス過ぎないかなぁ〜って思って」
そう言われてみれば、闘いが始まってから集まってきてた野次馬共がゴミを見るような目で俺を見ている。
だが、俺はそんなこと気にする人間じゃない。俺はそんな野次馬たちに叫んだ。
「おらてめぇら!さっき逃げたあいつ見てぇになりたくなけりゃ見てねぇでさっさとどっか行きな!見せもんじゃねぇぞ!」
「「「「う....うわぁ......」」」」
この日、俺はめちゃくちゃ強い剣と力を手に入れ、皆からの人間としての評価を失った。
どうも、青物です!
忙しくて数日空きました。すみません。しかも数日開けてこの長さこのクオリティ。クソですね(笑)。ま、初のバトルアクション(笑)を書くってことで張り切ってはいたんですけどね。書いてみてバトルアクション面白いなって思います。
で、次からやっと冒険に出るかなって思います。ギリ出ないかもしれません(笑)。ってことでよろしくお願いします。