4話『チュートリアル①』
うん。実は想像は出来ていた。だいたいこの街のゲストって言ったらほとんど父さんが出ていたし。なにせ勇者だからね。
ただ、問題は....
「えー、君たちは今さっき自分の武器や、魔導書を受け取ったわけだけれど....」
こういうのって大体長苦しいよね。それは父さんが喋っても同じだってことは何度も経験して分かってた。腕はすごいのに、もったいないって感じがする。あ、そろそろあれが始まりそうだな。
「武器というとね、僕は《聖剣》ってのを受け取りました。この《聖剣》ってのは....」
そう、自分の《聖剣》の話だよ。長ぇよ。今回は確かに《クルシュアリナ》っていう共通の話題があるけども、共通が思いつかなくても《聖剣》の話するからね。もうこの話聞くの2桁超えるよ。いい加減飽きたよ。
ルシアはもう何度ともなる話を聞き流し、話は終盤。急にフレイはニコッと笑を見せると、
「さて、武器を受け取って、僕と闘ってみたいなんて思った人いないかな?」
と一言。会場はざわめき、当然ルシアも驚く。
あの勇者と闘ってみたいという好戦的な人物は.....いないようだ。
「....誰もいないか。まぁそりゃぁそうだろうね。でも、実際使ってみなくても、自分たちが手にしたモノが、いかに恐ろしい物なのかってのは知っておかなくてはならない。当然、しようと思えば殺人だってできる代物だ。僕は君たちにはそういう間違った使い方はして欲しくない。」
なるほど。そういうことか。父さんも時にはちゃんとしたこと言うじゃん。
「今日受け取ったモノを君たちは、本当に守りたいものを守るために使うんだ。いいね?」
....ホントに守りたいもの。父さんは何のために魔王討伐までしたんだろう。俺にはわかりそうにもない。
そんな感じで、父さんの話が終わり、ついに《クルシュアリナ》は終了した。
そして、昼。今日出ようとすると、隣街に着くまでに夜になってしまうので、《クルシュアリナ》の翌日以降の朝に旅立つのがこの街では一般的だ。であるため、儀式の日の午後は、ひとまず隣街まで一緒に行く仲間を決める時間となる。
ここでルシアに大きな問題がひとつ。
「.......冒険仲間がいねぇ!」
そう、ルシアには友達がいなかった。唯一と言ってもいいくらいの話し相手であるカレンは、ビジュアルと実力、人望が揃っているため、皆に人気だろう。
「やべぇ....本格的にぼっちだよ俺!恥ずかしい!」
周りは2〜4人グループができていっている。さて俺も入れてもらわないと。でも俺基本的にコミュ障だし、友達いな「ルシアー」いし...って誰か俺呼んだ?
後ろから声をかけられたようだ。振り向くとそこには、茶色いショートボブの髪、整った顔、まぁまぁ膨らんだ胸.....
「....ってカレン?!お前なんでここいるの?もうパーティ決まったの?」
「いや?まだ決まってないよ〜」
「え、なんで?!お前色んな人から誘われてんじゃないの?」
「まぁ普通にたくさん誘われたんだけど〜、全部断ってきた!」
「はぁぁぁ?!何考えてんのお前?」
「何考えてんのって...私ルシア誘いに来たんだよ?一緒に冒険しよー?」
「え、聞き間違えかも。もっかいぷりーず」
「だから、私とパーティ組もうよって」
「.....なんで俺なん?!え、お前ちょっと頭おかしくなったん?!」
「おかしくないよ!普通にルシアと行きたいの!」
「.....まじか」
ほんとに驚いた。カレンの方から来てくれるとは思ってもなかった。学校でもいっぱい友達もいたし、その辺でパーティ組むんだろなって思ってたし。
「で、ほら。私と組んでくれる?」
わっ、おま...。とーぜんこんなことまでしてくれるんなら全然OKなんだけど....その上目遣いは本気でドキッてしちゃうからやめて欲しい。
「わ...わかったよ。俺でほんとにいいなら」
「わ!ほんと?やったー!」
よかった....俺もパーティ組めるとは。あ、そーいや....
「俺、スキル確認してなかったや」
「あ、私もそーだった!」
胸ポケットに入れてるステータスカードを見てみると....
(取得済武器スキル)
・幸運顕現-抜刀中、幸運値によった現象が起こる。
・スーパークリティカル-クリティカル攻撃のダメージが超増加。
・クリティカルガード-相手の攻撃を剣でガードした時、幸運値によった確率のクリティカルが発生。被ダメージ激減。
・クリティカルエンチャント-能力アップエンチャントを受けるとき、確率で能力アップ量が増える。また、能力ダウンエンチャントを受けるとき、確率で効果を消す。この確率は、幸運値による。
(所得加護スキル)加護無し
無し
.....めっちゃ幸運値関わってんじゃん!すげぇ!どんなもんなんだろめっちゃ気になる。
すると隣から「わぁ!」とカレンの明るい声が聞こえる。カレンのカードを覗いてみると.....
(取得済武器スキル)
・閃打撃-打撃の波が直線的に通る。
・装甲破壊-打撃を、敵の最も硬い部位に当てた時にダメージ増加。
・《螺旋撃》-(風)相手の体に抉るような回転の打撃が入る。相手を確定で吹き飛ばす。
(所得加護スキル)風の加護
・風纏-発動後、[風の速さ]で移動できるようになる。
・旋風眼-発動してから、風の強さ、動きがわかる。
....抉るて。抉るて。3回目だけど抉るて。
めっちゃ怖ぇぇ!てか加護もすごいな....風がわかるのか。
「お前すごいなこれ!めっちゃ風じゃん!」
「そーだよ!風神って呼んじゃって!」
「そりゃいきすぎだろ」
「ルシアも私の見たし、私もルシアのカード見よーっと」
「お、いいよ。ほい」
カレンにカードを渡した時、
「おい!ルシア!!」
またも後ろから声が掛かる。今度は男の声だ。振り返ると、鋭い猫目が目に入った。
「え〜っと...?」
「おいゴラァ!朝名前言っただろが!ブラットだよ!」
「はいはい。ブラットね。忘れるまで覚えとくわ」
「それじゃ今度も忘れんねぇだろが!...で、話がある」
「なんだ?あんましめんどくせぇことはしたくねぇぞ」
「お前が受け入れれば楽ちんな話だ」
「...へぇ。で、何?」
ブラットは悪巧みをしてそうな悪人面で、鋭い歯を口から覗かせ...
「カレンとのパーティをやめろ。俺とカレンがパーティを組む」
「....は?」
「だから言葉通りだ。カレンは俺とパーティを組むからどっか行けってんだ」
「いやいやいや。そりゃないですぜブラットさんよぉ。俺カレン以外とパーティ組めって言われるとぼっちになっちゃうんだけど」
「それでいいじゃねぇか」
「良かねぇよ!おらぁ農業に使える魔法も働くための魔法ももってねぇから冒険するしかないんだけど!」
「まぁ、そう言って断るのはわかってた話だ。だから」
ブラットは息を深く吸い込み、
「俺とお前でサシの勝負だ。今日の武器を使ってな」
「いや、天下のフレイ様が言ってただろ?自分が守りたいもののために使えって」
「俺はそれをカレンのために使うつもりだ」
まじか。こんなにカレンに執着の強い男だったのか。じゃぁ朝にカレン呼んだのはこいつにとって意外といい事だったのか?いやでもあの時の慌てようとその後の睨みを踏まえると.....
「....お前自分から誘えないから、カレンと組んだやつぶっ倒してカレンに気を引かせようとしてたわけか」
「ば....馬鹿かお前!」
「お前のくだらん考えがわかったよ。ま、対決だっけ?」
「あぁそうさ」
「それを俺がするメリットは?」
「どうせ俺が勝つからお前にメリットなんざ要らないが.....そうだな、お前が勝ったら俺はカレンを諦めたうえ、お前の願いを叶えられる範囲で聞こう」
「....へぇ。ま、やらないけど」
「あぁ?!んだと?!」
こいつに願いとか言いたくもないし。やらないのが安全策だよな。
「やらねぇってのか?!それなら力ずくでもカレンを連れてく!!!」
ブラットはそう言って背中に手を回して....
「《岩を砕く大剣》グラビアル!」
そういい、ブラット自身と同じか少し小さいくらいの黒い大剣を取り出した。
「おい!お前本気か!」
「あぁ、俺はガチだぜ。ここでお前をぶっ倒す。死なねぇ程度にな」
「くそっ....やるっきゃねぇ!チュートリアルからかなり難しいけどよぉ!....《会心の剣》シンパレード!!」
黄金剣の名前を呼び、その姿を相手に見せる。両者が剣をみせたところで、構える。その時、
「一度は言って見たかったことがあるの!」
闘いの原因でもあるカレンが急に声を上げーーー
「私のために争わないで!」
「俺だってこんなのしたくてしてんじゃぇよ!」
ついツッコミを入れてしまう。そしてもう1度ブラットの方を向き、
「....ほんとにやるんだな?」
「あぁ、本気で行くぜ」
ブラットはそう言い、構えをとる。両者目があい、用意ができたことを確認すると、地面を蹴った。
ーーールシアの初陣が始まった。
うす!青物です!
4話と3話はなるべく繋げたかったので記憶の強い翌日に投稿しました。
シンパレードのスキルが明らかになりました。あとカレンもですね。カレンの戦闘はもう少し待ってくださいね。あと、挿絵を入れる機能があることに気づきませんでした。下手くそですけど、想像しやすいように、一応主要キャラは描いていきたいかなと思います。挿絵入れ始めはもう少し待ってください。
では、次回、初陣のブラット戦ですね。お楽しみに!