2話『儀式の始まり』
ルシアとカレンの二人が神殿につくまで10分ほどかかった。現在、二人は神殿の前の公園のような広場にいた。
「やっぱり神殿って何度見てもでけぇって思うんだけど」
「私も!でもやっぱりさ.....」
「『ボロいよね』」
おっとボロいが被ったか。しかし、二人揃ってそう思うほど、この街の神殿は大きく、そしてボロいのだ。元々真っ白だったであろう壁面は、過ぎた年月を語るように汚れて、茶色がかっていた。歴史の授業で何年前にできたっていってたような気がするけど忘れた。
二人が住む街、《スーデン》は、16年前に討伐された魔王の拠点である魔王城から、この国 《セルカディア》で一番離れた位置にある。
そのため、一番魔王軍からの被害も少なくすみ、ほかの街では魔王軍に襲われ、壊されていた神殿も、《スーデン》にはそのまま残っている。
で、着いたはいいけどまだ始まりまで時間あるな。その辺ぶらぶらしときゃいいかな。
「じゃ、着いたし俺ブラブラしてくるわ」
「ん、わかった!また後でねー!」
出来れば後でも会いたくないんだが。一人ほどいいことはないと思う。ま、とにかく歩くか。
カレンが右に行ったようだから、俺は左に歩き出す。で、あと20分あるけど「おい、ルシア」何するかな。出来ればってか人と関わりたく 「おい、ルシア!」 ない。だからといって暇つぶしするような 「おい!ルシア!」 ところなんてここにはないしなぁ。このまま歩き続けるか、トイレの個室にでもこもっていよか「おい!いい加減こっち向けや!」ちっ、しつこいな。
「おいコラ聞いてんのか!」
「あぁ数秒前からな!しつこいんだよてめぇ話したくないのわかんねぇのかよ!」
「あぁ、そりゃすまん....ってなんで俺が謝るんだよ!」
それよりも人月になることが.....
「てか、お前だれ?」
「ああ?!舐めてんのか?!」
「舐めてねぇし舐めたくねぇよ」
「そんな減らず口どうでもいいんだよ!お前このクラス3位の実力だった俺を覚えてないのか!」
「覚えてないって言ってんじゃん。で、ほら。名乗って」
「謝りもせずに名前だけ聞こうってのか?!」
「だって、ほら。俺の名前だけ知られてるって不公平じゃん?」
「そりゃお前が人の名前覚えてないのがおかしいだろ?!....まぁいい、こんなんじゃ話が進まねぇ。俺はブラットってんだ」
「あーはいはいなるほどなるほど」
「全くわかってねぇだろ?!」
てかほんとにめんどくさい。いい加減にして欲しいもんだ。俺の一人の時間を邪魔するとは神でさえ許されることじゃない。こいつはさっさと撒いてしまいたいけど....あ、そうだ
「おーい!カレーン!」
「んー?なにー?」
「え?」
急な事態に理解が追いつかないブラット。心底驚いたような顔をしている。無様!
「ブラットがお前に二人で話したいことがあるんだってー!」
「な?!」
やっと理解したか!だがもう遅い!バカが!
「おい待てルシア!てめえ」
「ブラットなにー?」
「え、いや....」
「じゃ、俺はこれで。ブラット、頑張れよ!」
「お....おいお前!」
ブラットが俺を止めにかかるが....
「ねーってば!ブラットなんの用?あんたから呼んどいて何もないじゃ済まさないから!」
「え....あ....」
ハハハハハ!これでもう俺を追いかけたりはできない!カレンは中身はバカでアホだけど見てくれや実力は男子の間でも評判だ。そんな女子に話しかけられてなにもなしに離れることなどできまい!
ブラットを撒いたあと5分くらいぶらぶら歩いていたら集合の時間になったため時間潰しは終わり。受付を済ませ、一人の男子からの目線を感じつつ決められた席に座る。
儀式を受けるもの全員が中に入るのに少しかかった。その間もずっと睨まれていたからそろそろ嫌気がさしてきた頃、前のドアから神父と思われるおじさんが出てきた。
「では、皆さん席に着いたようなので、早速ですが儀式を始めます。」
ほんとに早速だな!こういうのって大体は始めに挨拶とかがあるもんじゃないのか?ま、くだらない話されるよりましか。
神父は続ける。
「儀式は、一人ずつ順番に受け取ります。その順番は、受付の際にお渡しした紙に書いてありますので、その順番通りに前に来て下さい。」
なるほど、この紙か。えっと番号は....
「25か。」
「え、ルシア25なんだ!私27だったよ!」
な!?後ろにカレンがいたのか!気づかなかった!なんたる不覚!てかカレンが27となると、比べられる可能性は低い。まぁ少し安心だ。
「受け取った方から自分の席に戻って、他の方が終わるのを待っていてください。では、一番の方からどうぞ。」
ほんとに早い。え、もう始まんのか。普通にどんな感じなのか気になるから一番だけでも見とくか。
「どんな感じで渡されるんだろ!気になるー!一番の人は絶対見よっと!」
カレンと同レベルの思考だったか。じゃぁ俺は二番目まで見よう。
すると一番と思われる男子が神父の前に立つ。彼は....やっぱり名前は出てこない。そんなもんだろう。
神父が祝詞をあげる。すると、神父と一番の男子の真上あたりから虹色の光が粉のように降りだし、窓もないところから明るい光が灯る。祝詞が終わった瞬間ー二人の周りに強い風が発生。光の粉が舞い上がり、まさに神秘的と言えるその光景に、儀式を受けるもの達すべてが見とれていた。
『ーーーーー神よ....今、旅立たんとする若人に、祝福を.....!』
その言葉の直後、風と光がが二人の真上の一点に集まる。するとそれらは形を形成し始めーー分厚く、大きい本となった。
魔導書、完成の瞬間である。
ルシアはその光景に、固唾を飲んで見ていた。これが、今から自分も受ける儀式だと考えるとーーーーーー恥ずかしくなってきた。
一人目であんなに豪華な演出なのに、25番っていう微妙な時に演出なしの場合もあるし、しょぼい鉄剣が出てくるっていうのか!恥ずかしい!やばい!今からでもここから逃げ出したい!
しかし、嫌なものほど早く回ってくるように感じるものだ。先程一番だったのが、すぐ24番に飛んだように感じた。
夜に書いてるんでこんばんわ。青物です。
次辺りから話の本編みたいなところあります。面白くなるようにないあたまをつかいますので、よろしくお願いします!