第96話 さてさて
秋音さんとも少し繋がりが出来た俺は、また体の調子が変わっていた。
繋がり自体は不安定ながら、巫女さんズが4人揃ったので、随分と波動とやらが安定したらしい。強欲、傲慢に色欲と、穢れ3つでかなり危うい状態だったようだが、ここにきてようやく落ち着きを取り戻していた。
で、俺たちはエロフの里に戻ってきた訳だが。
「な、なあ、冬華さん、何故こんなにぴったりくっついてるの?」
「あの、火傷の痕もすっかり癒えまして、やっとアロイス様の御傍に来れるようになったのが嬉しくて。ご迷惑でしたか?」
「い、いや、迷惑とかではないんだけど」
そう、浄化の炎を纏っていた冬華さんは、すっかり元の?美しさを取り戻したのだった。足も歩けるまでに回復したようで、アニメショップのスタッフルームで起きてから、何故かずっと俺にくっついているのだ。いや、嬉しいんだよ、俺としては。今まで巫女さんズは春香さんに始まり、夏織さん、秋音さんと綺麗系が続いていたから、この可愛い系の入った美人さんはとっても俺のツボを押さえているわけですよ。
でもね、俺の第六感、警鐘が鳴りまくってるわけですよ。
これはね、アカンやつです。
絶対ヤバいやつですよ、奥さん。
「ひ、人のことを無理矢理手籠めにしておきながら、直後から他の女といちゃつけるって、どういう頭してるのかしら」
「コイツはこういう人間なんですよ、秋音さん」
里に戻ってきて、少し落ち着きを取り戻した秋音さんの言葉に、春香さんが続いた。いや、あの、いちゃついてるわけではないんだけど…。
「なんだ、嫉妬か姉御」
「嫉妬では無いわ、夏織さん。だって、嫉妬するほど惹かれてないもの」
「じゃあ、嫉妬してるのは情婦春香だけか」
「だから情婦じゃないって言ってるでしょ!私はあまりのクズっぷりに呆れているだけよ」
残りの巫女さんズの、俺に対する評価が酷いことになっているが、俺は反論すら出来なかった。
「アロイス様、次は私ですよね?」
「えっ…」
にっこり笑って凄いことを言っている冬華さんであったが、そんなことよりも、目が、目が笑ってないんだけど!
「今の私でしたら、アロイス様の巫女にしていただけますか?」
「今のも何も、冬華さんは俺の巫女に変わりは無いよ」
「まあ、お上手ですのね」
お、お上手とかそういうことではないのだが、流石に連戦は俺の無きに等しい良心が咎めた、というだけのこと。ああ、でもこんなイイ女に迫られて、据え膳食わぬは男の恥よな、よな?
…いや、ヤリませんよ、流石に。凄く強い衝動は感じるけど、そして我慢しなきゃいけない理由も特に無いんだけど、そこは奥さん、私には結婚生活10年で鍛えられた鋼のメンタルが!
「…無駄なところで発揮してるな、相変わらず」
そこ!聞こえてるからね、褐色姉さん!
「で、冬華さん、ちょっと話は変わるんだけど」
色々ありすぎてすっかり当初の目的を忘れていたところだったが、俺はそう、元々は差し歯を直すために、材料を都合してもらおうと冬華さんを訪ねたのだ。予定通りとはいえ、聞く前に本人を連れて帰ってきてしまったが、作ってもらえるもんだろうか。俺は、差し歯の欠片を差し出した。
「こういうのに似た白い石、えーっと、何だっけ」
「術加工した石ですよ、アロイス様」
「あー、そうそう、術加工した白い石が欲しかったんだけど、冬華さんが作ってたの?」
冬華さんは、俺の掌の上にある差し歯の欠片を見たが、怪訝な表情をした。
「ど、どうしたの冬華さん」
「術加工はしておりましたが、アロイス様、これは何ですか?」
「これは、差し歯と言ってね」
俺は、自分の前歯を見せながら説明した。説明を聞き終わった冬華さんは、少し困惑気味に俺に尋ねてきた。
「…石自体は、作ってお渡しすることは出来るのですが、どうやって付けるのですか?」
「そこは細工師に相談するつもりなんだが、良い方法ではなさそうな気がするんだけどね。ひょっとして、冬華さんは何か心当たりある?」
「その石の付け方は分かりませんが、歯を生やすことなら出来ると思います」
「……は?」
他の巫女さんズと、俺の言葉が見事にハモった。
「は、歯を生やせるの?」
「歯が生え変わるのは一度だけでは?」
「はえー、凄いなハナちゃんは」
興味津々の春香さん、訝し気な秋音さんの言葉。最後は単に感心したらしい夏織さんだ。
「ちょっと待って、ハナちゃんって誰?」
おや、聞き捨てならなかったのか、春香さんが食いついた。
「ん?ハナちゃんはハナちゃんだろう」
「もしかして、冬華ちゃんのこと?」
春香さんまで『ちゃん付け』になってるけど、冬華さんはやや童顔なだけで、そこまで幼くはないと思うぞ。嫁に出されようとしてたくらいだし、立派なお山もふたつお持ちだしな。
「もしかしなくてもそうだが。冬華の華はハナとも読むだろう?本人と同じで可愛くないか?」
「夏織さん、可愛いなんて嬉しいですわ」
冬華さんは、夏織さんの言葉に照れているようだ。相変わらず俺にくっついたままだが。というか、さっきから押し付けてきてないか。この娘、分かってやってるんじゃないだろうな。さっきからなんか突起みたいなのも当たってるんだが、もしかしてもしかしなくてもこれば聖なる頂様の御降臨ではなかろうかいやそんなはず。
「ちょっと」
春香さんは右手でこめかみを押さえて、頭痛をこらえるような仕草をしつつ話し始めた。
「冬華ちゃん、そんなに誘わなくても大丈夫だから。心配しなくても、例え貴女が嫌がっても止めないからこの男は」
「そうなんですか、それは良かったです」
「…まあいいわ。それより夏織、冬華ちゃんはハナちゃんで、秋音さんは姉御なのよね」
「そうだな、情婦春香」
「それよそれ!なんで私だけ情婦なのよ!せめて同志にしなさいよ!」
いや、それもどうなんだろうか。
「なんでって、面白いからだが」
「私は面白くないのよ!」
「まあそう怒るなよ、春香は私にとっては初めて心を許せた女友達なんだ、ちょっとくらいからかわせてくれ」
「からかうって、貴女ねぇ。ま、まあ、友達だし仕方ないから許してあげるけど」
「よっ、太っ腹春香!」
「誰が太いですって!?」
流石はプンスカツンデレ、チョロイン春香さんであった。
お久し振りです
仮想世界から帰ってきました(おい)




