表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
総務おじさん探訪記  作者: 中澤 悟司
総務おじさん、伝承を求める
70/107

第69話 原因はお前か

お久しぶりでございます

 嫁様が、俺の夢の世界に御顕現あそばされた。


 大事なことなのでもう一度言おうか、嫁様が、俺の『夢の世界』に、御顕現あそばされたのだ。


 しかも、若くて何故か旧姓だった。どういうことなのか、さっぱり分からない。分からないが、何だかとてつもなく不味い状態であるのは確かだ。主に俺の精神安定的な意味合いで。

 嫁様は俺のことが好き、殊に顔が好きという、旦那の俺が言うのも何だが中々に奇特な女子であった。嫁様の『名誉』のために、誤解無きように言っておくが、俺は別に外見が殊更に醜い、というわけではない。イケてる、とも思わないが、不細工というわけではない、と思う。まあ、好みに合ったのだろう、きっと。

 で、その嫁様だが、まあ、何というか、一途?というか、おも、いや、げふんげふん。猛烈にアタックされたかと思いきや、付き合い始めると何故かやたらと浮気を疑われたり、有りもしない過去の女性遍歴を吐けと迫られたりと、まあ大変だったのだ。要は、あの邂逅で、あの笑ってない目つき、本気と書いてマジと読む、多分俺にしかわからない、殺る気満々な雰囲気。盛大にフラグが立ったように感じて仕方ないのである。


 まさかとは思うが、桜さんとかと混じってマウントの取り合いなんて、始めないよね?そんな展開になったら、俺もうどうしたら良いか分からない。


 …本気で笑うしかないな、おい。




 嫁様の次に来たのは、この人だった。ある意味、全てに納得してしまった自分が悲しい。


「な、何やってるんですか、佐久夜さん」


 今、目の前に居るのは、着物に白衣を纏った、コスプレ感満載の佐久夜さんであった。どこまでが本気で、どこからが冗談か非常に分かりにくい御仁であるが、これはヒドい。


「ん?あなたに下の名前を教えたかな?」


 いや、どう見ても本人なんだが、そういう設定にしてるんだろうか。どう対応したら良いか分からずに困った俺は、困ったときの桜さん頼みをしようと、彼女に目を向けた。彼女の、特に感情の読めない微笑みっぽい表情から察するに、これは『女医』として扱えと、そういうことですね。忖度は役人の美徳であります。


「あ、いえ、私の勘違いでした。知り合いに良く似ている女性がいまして」

「そうか、名前が同じで顔も似ているとは、珍しいこともあるものだなぁ。さぞかし美人だろう?はっはっは」


 …ここ笑うところ?ねえ、ここ笑うところなの?女上司に言われて困る定番ネタの美醜判断、セクハラだから止めろとか、どの口が言うのか。どう返せば良いのか分からんので、俺はとりあえず曖昧に笑みを浮かべた。


「…ま、余談はさておき、ルーデルさんの症状についてだが」


 そう言うと、俺の主治医だという女医さんは、俺の体に起きたことについて話し出した。『主治医』の説明によると、俺の体というか、脳を検査したところ、異常な程活性化していることが分かったそうだ。特に手術痕のある前頭葉付近の活性化が顕著だという。


「通常であれば、活性化によって脳の回路が焼き切れてしまうくらいの負荷が掛かっていると思うんだけど、活性化の一部が損傷した脳回路の修復というか、補足に回っているようでね、危ういところで均衡を保っていたようだ」


 そこで、女医さんは、俺のベッドサイドに目を向けた。そこには、いつの間にか天断さんが立てかけてあった。彼女は、無造作にそれを掴むと、話を続けた。


「どうやらこれがあなたの脳の活性化と関係あるようだね。検査中に急に脳の活性度合いが上がったから、どうしたことかと思ったら、いつの間にかこれがあなたの近くに置いてあったよ」


 私や『ここの看護師』は、持ったってどうも感じないんだけどね、不思議だろう?とあくどい笑みを浮かべる女医さんが、俺には悪魔の手先に見えていた。彼女の言葉を翻訳すれば、『ここの看護師』は特別な存在だ、ということだ。そして、ここの看護師と言えば、もう嫌な予感しかしない。


 その後は、打って変わって特に妙な振りもなく、淡々と話をして、彼女は看護師と共に部屋を出ていった。




「先ほどの『先生』のお話だと、巫女の探索を急いだ方が良さそうですね」


 一緒に話を聞いていた桜さんが、そう切り出した。


「アロイス様のお体に掛かる負荷を少しでも軽くするためには、活性化の手綱を握れるようになる必要がある、ということですね」

「そう、なるのかな?」


 俺が元の世界に戻るという願いを叶えるために必要な穢れは7つ、そして身に着けたパワーのコントロール?に必要な巫女さんは合計4人だ。どうやら大黒天さんから穢れをひとつ貰ったらしいので、残りは6つ。そう言えば、徳にしろ穢れにしろ、宝玉がどうとか言ってたような記憶があるが、そんなものを見た記憶はない。あー、ひょっとして、大黒天さんが持ってたんだろうか。まあ、暗喩なのかもしれないし、言葉通りの水晶玉みたいなのとは違うのかもしれない。


 巫女さんは今のところ春香さんだけだから1人。夏織さんがそれっぽいのだが、巫女として一緒に行動している訳ではないから、きっとまだ違う。まだ会ってない巫女さんは2人。夏織さんのように断られたらどうするか、まあ、最悪無理矢理にでもやるか。そうだ、それにかこつけて、他の上玉を捕まえてもいいかもしれん、なんちゃって。


 …ああ、これがそういうことか、と俺は腑に落ちた。女性を無理矢理手籠めにしてしまう、という発想が、以前の俺ではまず出ない。穢れの影響が、早速出てきている、というところだろうか。確か、強欲だったか、欲が強くなるってことか。欲と言えば性欲?それって別の穢れじゃなかったっけ?

 確か、愚者の剣は、手にしたものを廃人と化す、と言われていた。ひとつとは言え、穢れを纏った今、先ほどの診察時にも感じたことだが、以前よりも明らかに天断さんが手に馴染むのだ。頭痛は相変わらずだが、万能感は増していて、嗜虐的指向も強いような気がする。


 これは、由々しき事態だ。俺が、俺自身では無くなるということが、若干現実味を帯びてきたということだ。廃人とは違う方向で、俺のアイデンティティが危機に晒されている、ということなのか。


「これは、早めに残りの巫女さんとも会う必要がありそうだな」

「そうですね、アロイス様」


 俺は、笑顔の桜さんを抱き寄せ、キスをした。

まだ生きています(笑)

子供に邪魔されながらも、何とか書いてますよ、ええ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ