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総務おじさん探訪記  作者: 中澤 悟司
総務おじさん、降り立つ
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第7話 商人の矜持(下)

 メニカムさんは、佇まいを正すと、話し始めた。


「ええ、もちろん。言い訳がましくなるやもしれませんが。以前どこのとは申しませんが、貴族の息子を雇ったことがありましてね。社会勉強だからとか何とか言って、まあ私も貴族相手には商売の都合もありますし無碍にも出来ず、短い間預かることにしたのです。そうしたら、あのバカ野郎は」


 メニカムさんは拳を握り締めた。なんか震えてないか?相当怒ってるな、これ。


「こともあろうか、引き渡し先も決まっていた上玉の性奴隷を傷物にしやがったのですわ。生娘確認の現場が見たいとしつこく言っていたのですが、まさかあんな愚かな行為に走るとは」


 ああ、そりゃあかんわ、俺でも分かる。メニカムさんとしては怒鳴り声でも出したいくらいの気持ちなのだろうが、ここは話している最中ということで、出来るだけ抑えようとしているのが見てて伝わってくる。つーか、怖いよ、顔が。

 と、次の瞬間には、彼の顔は元の穏やかな強面に戻っていた。


「それが引き渡し先で分かったものですから、私の面目は丸潰れ。その場では思わずその奴隷を叱責してしまったのですが、考えてみれば彼女にはどうにもできないこと。一緒に店に戻って聞けば、彼女は通常の奴隷堕ちと、その後の処理が怖くて言い出せなかったと、泣きながら告白してくれました」


 メニカムさんは、ここまで言うと、見るからに悲しい表情になった。その奴隷の葛藤に、心を痛めたのだろうか。誠実、というのはあながち嘘では無いかもしれない。顔はやっぱり強面だけど。


「彼女の話では、引き渡し先のベッドの上にまでは行ったらしいのですが、手付きの後にバレたらどうなるか、そちらの方が恐ろしくなり、直前で言ったようです。手付きの後の返品は、商品価値が下がってしまうので実質タダで引き取りみたいなものですからね。上玉になれば、逆に店側が初物食い目的と見なして損害賠償を請求することもあります。お客様からすれば、手付け後の返品には何のメリットも無いのですよ」


 手付き返品の女奴隷は、超が付く上玉か、特別な理由でもなければ、まず一般奴隷になるらしい。処理を受ける、ってやつだな。


「特に若いだけが売りの女奴隷は、返品になれば、ほぼ間違いなく一般奴隷になりますね。下手に機能を残すと、万一子供でも出来たときに血縁の問題で揉め事が起こらないとも限りませんので」


 確かにそう、なんだが、聞いてるとしんどくなってくるな、この手の話は。


「うちらはあくまでも奴隷商。一夜の夢を売るだけの娼館とは違うんです。買っていただける方も、商品を大事にしてくれるものと信じて売ります。それが奴隷商としての矜持ですわ」


 メニカムさんは力を込めて言った。


「ごくごく希にですけれども、愛妾が主人の寵愛を受けて、自由市民に繰り上がることもあるんです。そんなとき、例え望み薄くても、子が為せる体か否か、それは女奴隷にとっては死活問題なんですよ。だから、処理を恐れた。でも、主人の手付きの後で、生娘ではなかったと嘘がバレたとしたら、奴隷は一切の責任を負わされて首を刎ねられても文句は言えないのです。それは、性奴隷の貞操を巡って問題が泥沼化しないための、暗黙のルールなんですよ」


 なるほどなあ、顧客が嘘を言って奴隷商を強請ったことがあったとか、そんなところか。しかし、処女じゃ無かったから金返せ賠償しろとか、なんかもう、現代日本人の一般感覚では人間のクズだな。オタクは違うみたいだけど。


「実際には首を刎ねると色々と面倒ですから、主人は粗悪品を握らされて持ち続けるという屈辱に耐えるか、返品して金を捨てるかの選択になり、どちらにしろ店の信用も地に落ちる。彼女は、どちらに行っても地獄を見ることになる運命だったのです」


 そこに手付きでも大丈夫!とかいうどっかの物置みたいな度量の大きい奴はいないのかという突っ込みはさておき。まあ、買っていく層からすると、物としか考えてないような気もするからな。中古はやだ、新品が良い、みたいな。この場合はどうなるんだ、未使用、ではないよな。未開封返品、でもないし。製造工程の最終チェックでB級品になってたのが正規品に混じっちゃってたすみません、みたいなところか。俺ならB級品でも病気持ちとか不都合なければそのまま使いそうだけど。じゃあ流通返品集めて奴隷アウトレットとか、誰でも入れる公開奴隷オークションとか。ある意味自分の発想の黒さが恐ろしい。


「で、彼女はギリギリでしたが決断を下しました。店の信用に傷は付きましたが、致命的にはならなかった。彼女は、頑張ったと思いますよ、私のために」


 メニカムさんは、いつの間にか彼の横に付き添っていた、第二夫人のレアさんに目線を移した。彼女は、恥ずかしそうではあったが、嬉しそうにニコニコしていた。その笑顔が眩しいほどに美しい女性ではあったが、外見の美しさというよりも、幸せオーラ全開、という感じである。


「もしかして、その女奴隷というのは」

「そうです、ここにいるレアがそうですよ」


 ええええええ、今までのはノロケやったんかい!


「この私の妻を傷物にしてくれたバカ野郎は、奴隷堕ちさせた上に勿論去勢して、遠方へ売り飛ばしてやりましたが。まあ、あのバカがいなければ妻との縁も無かったのですから、因果なものですな」


 ひいい、さらっと怖いこと言ってるんですが。貴族の息子でもそんなこと出来るって、この人実はとてつもなく大物だったりしますか?しかし、今はそれよりも言うべきことがあるはずだ。


「お、奥さん良かったんですか。そんな内輪の話まで、こんな見ず知らずの男に聞かせて」

「か、構いませんわ、それに……」


 奥さんが真っ赤になりながら俯き加減に言った。


「あのバカは貧相でしたから。旦那様と初めてのときは痛くて泣いてしまいましたわ」


 とんでもないのは奥さんだったよ。


「そう言えば赤いのも付いてたなぁ。あの時は、二重に嘘を重ねてしまったのかと少し考えてしまったよ」


 あんたも余計なこと言わない。


 まあ、旦那様ったら、などと言いつつ、ノロケはひと段落。あーもう、分かったごちそうさま。

 商人と商品がどうやったらデキたのか、聞いてみたい気も若干あるが、長くなりそうなのでやめた。なんかイライラしそうだしな。


「というような次第もありましてね。私は商売に関しては誠実第一なんです、この妻にかけても」


 商売だけか?という突っ込みは野暮なんだろうか。うん、やめとこう。


「で、前置きが長くなってしまいましたが、名前はどうしましょう」

「名前、なぁ」


 こちらもいざ付けるとなると、更に難易度は高いな。この女神様に相応しい名前となると、俺の中で特定のイメージが付いてる名前は避けたい。そんなの、権利的な問題の無い名前の方が良いに決まってるじゃないか。で、順番に考えてみた。


 アイーダ、殺し合いしそう。アスカ、あんた馬鹿ぁ?イヴ、頭は痛くない。イザベル、宗教狂いはちょっと。オードリー、筋肉ムキムキはなぁ。カレン、グレネード投げそうだな。サリー、ゾンビは嫌だなぁ。マリア、聖母相手もなぁ。ロクサーヌ、俺は鼻はデカくない。


「サクラさんで」


散々悩んで、俺が付けた名前は、思いっきり和風な名前でした。

そろそろストックが尽きそうです。


まったり進行ですよ、まったり。

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