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総務おじさん探訪記  作者: 中澤 悟司
総務おじさん、伝承を求める
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第58話 女の勘

外伝?始めました。


よろしければ、そちらもどうぞ。

 桜さんに癒されながら休むこと暫く、頭も大分すっきりした俺は、その後他の皆と食事をし、風呂を浴び、そのまま寝た。色々と疲れていたのだろう、きっと。普段ならそばに居るだけでハッスルして困る桜さんと一緒に寝たのだが、良い香りに癒されながら心地良く眠りに就いただけであった。だけ、ってのもおかしいが。


 ちなみに、春香さんは夏織さんと脳筋同士で意気投合したのか、思いの外盛り上がったらしく、深夜まで呑んでいたようだ。ハル爺は橘さんを付き合わせて、こちらもまた深酒になったらしい。というのも、


「おい、君ら。ちょっと酒臭いんだけど」


 朝餉だと言われ、桜さんと連れ立って座敷に行くと、紛う事無き二日酔いが2人、どんよりとした雰囲気で座っていた。


「うら若き乙女に向かって酒臭いって、この男酷くない?夏織」

「まあ、確かに酒臭いからな、そこは甘んじて受けよう、春香」


 既にお互いを呼び捨てるほどに打ち解けたようだ。ガールズトークで盛り上がったのだろうか、日本酒で、アハ。まあどうせこの2人だ、仕合がどうだとか、足裁きはああだとか、そんな色気もクソも無い話で盛り上がったんだろうけど。しかしまあ、朝が早いのは律儀なことで、と思っていたら、残りの2人もやってきた。桜さんが挨拶をした。


「おはようございます。あら、山脇様、今日は一段と晴れやかな雰囲気ですね、良いことでもございましたか?」


 そう言われたハル爺は満面の笑みを浮かべた。


「そうか、儂が浮ついておるか、そうかそうか」

「昨夜からずっとこの調子ですよ。春香様と、うちの夏織が仲良く話しているのが余程お気に召したようで」


 若干苦笑い気味の橘さんが補足した。


「いやー、どこぞの異国人に身請けが決まったときなど、比べものにならんほど目出度いことよ」


 俺と橘さんは目を合わせ、お互い苦笑いした。そうか、一晩中これだったんだな、迷惑かけましたね、ご主人。


 食事が終わり、ハル爺と橘さんは2人でどこかに出かけた。出来れば春香さんの刀の件の見込みくらいは聞いておきたかったんだが、割にすぐ出て行ってしまい、タイミングを逃してしまった。

 仕方ないので、港町でも見物するかと思ったのだが、その前に春香さんのところへ寄った。少し気になったことがあったのだ。


 部屋に行くと、春香さんは、また夏織さんと一緒にいた。本当に気が合ったのだろう。


「春香さん、夏織さんと随分仲良くなったんだね」

「え?ええ、まあ、そうね」

「そうだな、春香とは同志故、話が合うな」


 同志というのが意味不明なんだが、なんだ、脳筋女子同志ってところか?


「だが、ちょっと合わないところもある」

「え?」


 夏織さんの一言に、春香さんの顔が一瞬強張った。


「そうですか、まあ違う人間だし、合うところもあれば合わないところもあるでしょうね」

「ああ、そういうことだな。お前、分かってるな、ちょっと見直したぞ」


 俺と夏織さんとの間で、春香さんがオロオロしている。こ、これはこれで新鮮かも。


「見直したんなら、名前で呼んでくれませんか?」

「えーっと、それは良いんだが、名前何だったか忘れてしまったな」


 おいおい、天然かよ。名前だ、と催促されたので、仕方なく名前を告げた。


「私はアロイス=ルーデルというものです」

「お前、それ偽名だろ」


 夏織さんが間髪入れずに切り返した言葉に、俺も、そして春香さんも凍り付いた。間を開けて、春香さんが恐る恐る切り出した。


「ぎ、偽名なのですか?」


 さて、何と答えたものか。日本での本名ではない、というのは確かに事実ではあるが、偽名、というわけでもない。こちらの世界に来てからはずっとアロイスで通しているし、戸籍や住民票があるわけではないから、別に偽っているわけではない。桜さんの奴隷登録だったかの時にもアロイスって出たしな。


「……いや、偽名ではないですよ。今の名前はアロイスですから。逆に、どうして偽名だと?」

「いや、特に根拠があるわけではないんだが」


 夏織さんは、暫く俺の顔を見詰めていたが、急に笑顔になった。


「あれだ、女の勘、ってやつだな。春香には無いやつだ」

「ど、どういうことですか!夏織!」


 春香さんと夏織さんが言い合いを始めてしまった。こうなると、俺の入る余地は無さそうなので、今回はここまでで撤退しよう。


 夏織さんの態度が気になりつつも、考えても仕方ないことと思い、俺は町に繰り出そうと桜さんを誘った。桜さんは珍しく考える素振りを見せた後、言った。


「外に行かれるのも良いのですが、もう少しだけ後になさいませんか?」

「ん?何かあるの?」

「恐らく、もうすぐ山脇様と橘様が帰ってこられると思いますので」


 ひょっとして桜さんは、何か用向きを聞いていたのだろうか。俺は少し気になって聞いてみた。


「桜、何か聞いてたりする?」

「いえ、特には」

「じゃあ、なんでもうすぐ帰ってくるって分かるの?」


 桜さんは、にっこり笑って答えた。


「それは、女の勘、ですよ、アロイス様」


 俺は、それ以上聞けなかった。なんかずるいな、その理由。

ちょっとずつペース上げていければいいなぁ、とは思いつつ。

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