予想外
俺は満身創痍だった。身体は至る所に生々しい傷があり、右腕に至っては最早原型を留めていない。しかしまだ、俺は諦めていなかった。
「おい勇者よ、もう諦めたらどうだ?立っている仲間は一人もおらず、貴様自身ももう立っているのがやっとであろう?」
魔王ルルドは俺にそう言った。確かにこの状況は絶望的だ、四人いる仲間は全員倒れ俺もズタボロ、更には魔王ルルドは傷一つ付いてはいなかった。こんな状況になってもまだ諦めていないのには理由がある。それは、俺が異世界転生者だからだ。
✩✩✩
時は遡って一年前・・・
「あぁー、俺も異世界転生してみてぇなぁー」
俺、水無月隼人はどこにでもいる高校生だ。そんな俺には一つの夢があった。
それは《異世界転生》
オタクである者なら、又はそうでない人でも一度はこの夢を描いたんじゃないだろうか?
俺は常に異世界転生物の小説に主人公に憧れていた。
今日は五月五日、俺の十七歳の誕生日だ。しかし、家に親はおらず妹も俺と二人きりが嫌らしく、友達の家に泊まりに行っている。
「昔は、お兄ちゃんと結婚する!とかいってたのになぁ」
テレビ番組で、兄妹の愛とか言うクソみたいな番組をみながら、呟いた。ふと時計を見ると九時を回ったところだった。
「そーいや、腹減ったな」
独り言をこぼしながら、俺は近くのコンビニへ行くために玄関へいった。そしてドアを開けた瞬間。
サクッ、あれ?目の前に知らない男がいる。誰だろう?なんでだ、腹がいてぇ、変なものでも食ったっけ?熱い、痛い熱い痛い痛い痛い。
俺が元の世界で覚えている記憶はそこまでだった。
✩
「ん?ここは・・・?」
目が覚めると何もなかった。いや、それは間違いだ。確かによく分からない空間ではあったが、女がいた。とても、とても美人だった。
「ようこそ審判の間へ」
女はそう言った。これは、もしかするともしかするんじゃねぇか?
「なぁ、あんたここってまさか転生前の・・・」
「ここは、審判の間。貴方が希望を叶えるべき者か判断する間」
俺が言い切る前に女は答えた。
「もうすでに、審判は下されました。貴方に一つだけ希望を与えます。」
俺は、打ち震えた。そして歓喜した。これだ、これこそ俺が追い求めてきた・・・
「早く希望を言いなさい」
うっ、ちょっとぐらい喜んだっていいじゃねぇかよ。まぁいいか
「俺の望みは異世界転生だ!それもチート能力バリバリで!」
俺はずっと待ち構えていた好奇に舞い上がっていた。
「では、貴方の希望を叶えてあげましょう。異世界転生、そしてチート(笑)能力」
ん?いまチートに変なニュアンスが含まれてなかったか?
「貴方に幸福が舞い降りることを願っています」
女がそう言った瞬間俺は光に包まれた。そして・・・
✩✩✩
時は戻って現在・・・
そう!俺にはチート能力がある!正直この世界に来た時は焦ったさ!なんてったってすでに勇者として国を出ることが決まっていたり、コミュ障の俺がいきなり四人の仲間をまとめなければならなかったり、その上授けられたチート能力だ。このチート能力がほんと酷い。確かにステータスは並よりも抜きん出ていたさ、戦い方も頭に入っていた。ただ、俺に唯一ユニークスキルとして与えられたチート能力、それは失敗すれば死ぬと言うものだった(蘇生不可)。頭の中にその情報がはいったときは、は?ってなったよね。だって死ぬんだもん蘇生不可だもん。だが、俺は思ったんだこれはあれだ、魔王を倒す最終奥義なんだ、と。
そんなこんなで、一年間俺は仲間達とも打ち解け、時に恋をしながら、ここまでやってきたんだ。
え?なら始めから魔王にそれ使えって?何言ってんだ死んだらどうすんだ。ってことで温存していたんだがもう限界、これやばいよね、確実死だよね。ここで使わなければいつ使うってんだ今でしょ!
仲間はこの奥義の事を知らない、だから魔王を倒した後はどやされるんだろーなぁ、そんなモンあるならさっさと使えって。でもそんなことはいい、生きることに意味があるんだ。
「見とけ魔王ルルド、これが俺の最後の技だ」
俺は人生史上最高にイケボで言った。
「何をするのか知らんが無駄なことだ」
でた!死亡フラグ!これで俺の最終奥義は成功する!!
「くらえ!ザ・ロスト!!」
「な、なに!?その技は!?」
魔王は眼球が飛び出でるかと言わんばかりの形相で驚いていた。そして、次の一言で俺は衝撃を受ける。
「それ、儂無効化補正かかってるよ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
え?
こうして俺の二度目の人生は終わった。
続く
えー、初めて小説かきました。
ゆっくりしたペースで書いていくのでどうかこれから宜しくお願いします。
暖かい目でみてください笑