「落ちこぼれ」
再編しました。内容グダグダ苦笑
次は「瑠璃の火焔」の再編のため、更新はいつになるやら……
『能力』構成鍛錬機関王立「エストワール」学園。
『能力』と呼ばれるありとあらゆる「物質」や「成分」、「モノ」、「自然現象」といったようなものを自身の『能力』として使うようになったこの世界での唯一の指定機関である。
『能力』とひと口に言っても種類は様々である。
簡単な例で言うならば『風』。四大元素の一つとして認定され、その能力は風の精霊である風霊が根源となっている。
風霊と契約をすれば『風』の『能力』を行使することが可能となる。
うち、風霊王と契約すれば風霊を配下に置く彼の『能力』を行使できる。
つまりは『風』を自分の意のままに操ることが可能である。
また、風霊との契約を結ばずとも『風』を使うことは可能である。そのことを「四大元素元素術」と言い、簡易的な術式詠唱により使用可能となる。
「四大元素」は『風』『水』『火』『地』。
また、「非元素」と呼ばれるものに属し、よく使われるのは『光』『闇』。
また、精霊と呼ばれる者と契約をし『能力』を使用する者も居れば、魔獣と呼ばれるモノと契約をし『能力』を使用する者もいる。
このように、元素や生物などあるモノを介して後天的に『能力』を使用する者を『適応者』と言う。もちろん、元素や精霊、魔獣の他にもモノや性質、成分などを媒介して『能力』を用いる者も居る。
逆に生まれつき『能力』を持つ者も居るが、これはほんの僅か、この世界で一握りの者たちである。彼らを『選定者』といい、『選定者』が持つ『能力』は後天的に得られる『能力』では得られない者を持つ。『選定者』達の実力はほぼ未知に等しい。
何しろ、『選定者』達の殆どがこのクルフィレール大陸で認定されている『組織』のトップやかなり上の地位に就いている。それは彼らの保有している『能力』の許容量が膨大かつ計り知れないからである。故に彼ら『選定者』の実力というのはあまりにも分からなさすぎる。
つまり、一言で言ってしまえば最強、である。
加えて、『適応者』と比べ彼らの数は何万分の1と言っていい。この世界では希少種であり、保護されるべき存在であり、重宝される存在である。
うち、彼ら『選定者』の中でも大陸一個分は優に潰すであろう実力を持つ者達が属するのが『能力最高委員会』と呼ばれる『組織』と呼ばれるローブの集団である。
本名、『能力』、実力不明のクルフィレール大陸の『組織』の中枢となっている。
その『能力最高委員会』からは公式的に4つの『組織』が派生している。4つの『組織』は『能力』によって部類される。
一つは主に戦闘系、つまりは物理的攻撃系と用いられる「火」や「創造」、「剣」と言ったような『能力』である。
うち、「創造」は名の通り武器の創造他、模倣を用いることは可能。「剣」は剣を無から生成し、「四大元素」及び「非元素」を纏わせて使うことができる。他には「雷」など。
この物理的戦闘系の『能力』者が揃う『組織』を『白雷』。ちなみに頭脳派戦闘型が多い。
対して同じく戦闘型ではあるが『白雷』に比べてどうにも頭脳派ではない、簡単に言うならば脳筋型であるのが『竜胆』。
『白雷』が物理的戦闘系に対し、こちらはどちらかと言えば特殊型が多い。それこそ天候を操る『天気使」や「音速」など。
どちらかと言えば特殊型……干渉タイプの戦闘系で、「天気使」は名の通り天候を意のままに操る。「音速」は自身の速度を速くする他、戦闘で一番の要となる速さを上げることができる。他には「音」など。
他の二つのうち、一つは干渉系で主に催眠系、治癒特化型の『睡蓮』。
もう一つは、物理系で重力系や破壊系が多く集まる『天文』。
『睡蓮』の『能力』者には干渉型が多い。何しろ、催眠系や治癒型は人に触れないといけないタイプである。
一方の『天文』は『白雷』、『竜胆』に引けを取らず何を隠そう戦闘型である。干渉系、物理系に属さず(ある意味物理系と言えるが)、衝波系と呼ばれる部類に入る。
重力や破壊系……例で出すなら「引力」や「波動」である。「引力」は空間内にある引力を使うし、「波動」は空気を使って強い衝撃を与える。
なお、この4つの『組織』からは一人づつ今代の『能力最高委員会』に選出されている。
『能力最高委員会』に属しているのは8名。今任期に規制はなく、この『組織』内での変動もあまりない。ただ、ごく稀に8席の代替わりがある。一番下位である8席の交代はよくあることである。
8席はアイボリー、7席は薄い水色、6席は青、5席は紫、4席は藍、3席は紺、2席は群青色、1席は黒のローブを見に纏い、位が上がるごとに色は濃くなっていく。
うち、2席は『竜胆』の元トップ、4席は『睡蓮』で歴代最強と呼ばれた治癒師、6席は『天文』で最強と謳われたスペシャリスト、7席は『白雷』で歴代最狂と言われた人物である。
ただでさえ、曲者揃いのこの最強集団を束ねる第1席はその中でも稀有な『能力』を持ち、加えてその才は歴代を上回るどころかそれ以上。
今の今まで誰も成し得ることのなかったモノまで再現させるなど、その才はやはり類稀に見るほどのものである。この第1席、その素性は今だ世間に公開されておらず、とはいえ彼の功績は驚愕すぎるものばかり。
まず、敵対していた国をあっさりと倒し、復元させた古代詠唱の解読や創作『能力』など、多彩な面で幅広く活動している。
……この話はさて置き、本題に戻る。
『能力』構成鍛錬機関王立「エストワール」学園の学年は基礎学年と呼ばれる初等科が4年、応用学年と呼ばれる中等科が3年、認定学年と呼ばれる高等科が3年の計10学年から成り立ち、早ければ8歳から学園に通えるようになる。どこの学年のクラスもS〜Xまでの7クラス。
天才と謳われる者たちの集まりがSクラスであり、対照的に落ちこぼれと呼ばれる者たちの集まりがXクラスである。
しかし、高等科のとあるXクラスにはこの学園一の「落ちこぼれ」が居るらしい。
彼の名を暁・レウィル・京雅。『能力』不明の完全な「落ちこぼれ」である。
*・*・*・*・*
目の前の光景に恐ろしく突っ込みたい。というより、これは突っ込むべきなのか。いや、突っ込んで面倒ごとになるのもイヤなんだけど、状況が状況だからどうするべきか。
少しだけ考えてから、まあいいか、という結論に達した俺は踵を返す。
「いや、待て!」
「……だから、何」
この場で待たされる立場としては、さっさと用件言えよって話。現状を話せば早い。
呼び出された→言い争いが始まった→俺放置される→帰ろうとする→引き止められる。そもそも、俺に何の用があるんだっつーの。
俺、なんかしたっけ?いや、してないよな。記憶にないし、あってもどーでもいいことに越したことはないんだろうけど。
「今日こそこの学園から出て行きやがれ!」
「……は?」
ああ、またそれ。ほんと、懲りない奴だこと。むしろ、しつこ過ぎて笑えるよなー、本当。正直な話、俺にとってはかなりどーでもいい。
何で、お前がつっかかってくんのって話。いや、まず名前知らないし。
「テメェみてぇな『落ちこぼれ』がこの学園にいることがおかしいんだよ!」
「……あ、そ。で?」
としか返答しようがないの、分かってないんじゃないの。
「はっ! Xクラスなんてザマァねぇよな!」
「……何が言いたいわけ」
一言言わせてもらいたい、誰こいつ面倒。別にその辺どーでもよくね?俺、ただ平穏に過ごしたいだけなんだけど。面識も全くない奴に突っ掛かれてもはや面倒過ぎるんだけど。ひとまず、何が言いたいんだか。
……あ、アレか。こいつ、俺みたいな『落ちこぼれ』反対派か。ま、普通はそうだよな。ここ、唯一のエリート校だもんな。……なのに、なんでこんなクラス作ってんだか。
学園長の考えが分かんねぇ、いや、嘘。……どーでもいいけど、さ。
「『落ちこぼれ』は俺らの前に跪くにつきんだよ!」
……いや、意味分かんないから。何言っちゃってんの、こいつ。手を目の前に出して、口を開いた奴が詠唱したのはこの世界じゃごく普通に使われるもの。
「『風』!」
途端、風が生じる。あー、ここで何かやるともう面倒だよな、うん。何もせずに避けるか受け止めるか。言ってしまえば、どちらが妥当で楽なのだろうか。
……どっちも面倒極まりないに越したことはないか。ため息をついて目の前に迫り来る風を見やり……
「『風』!!」
後ろから生じた風。俺の髪がふわり、と舞う。瞬間、目の前でうるさかった奴が倒れこむ。
きょとん、とした顔で。何があったか把握しきれてないマヌケ顏で。おかげで俺は笑いそうになるのをどうにか堪えた。
「まーたきょーちゃんに絡んでるんだぁ?」
「っ、テメェ!」
俺の後ろに現れたのは茶髪の小柄な奴。見た目小学生的な(言ったら怒られる)奴で俺のクラスメイト。
「……観都」
「きょーちゃん怪我ない?」
怪我ないも何もまず何もされてないから。むしろ、その一歩手前だったというか。どーやって避けるかなーって考えてたとこにお前来たんだけど、タイミング狙ってたのか?
「四季場!」
「うん、なーにー?」
四季場・フォレクス・観都。俺と同じくXクラス所属の天才の『落ちこぼれ』。なんでお前みたいな奴がXクラスに居るんだか、不思議で仕方ない。
「なんでテメェが毎回毎回出てくるんだよ!」
「そりゃ僕、きょーちゃんのクラスメイトだしー?」
ねー? と同意されてもな。お前が来ると、目の前の奴の神経を逆なでしかしてない気がしてならない。
小さくため息をついて、今度こそ踵を返した。
「あ、きょーちゃん!」
「待てよ!」
「……ったく、」
本当に、面倒で面倒で仕方ないっつーの。