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木枯らしに抱かれて…  作者: 土田なごみ
12/15

第12話 それぞれの恋

私と真由美は、お昼休みのざわついた教室から、ベランダに出て来た。


締め切った窓から、教室の中のざわめきが漏れてくる。


外は、北風の鳴く声と枯れ葉が舞い踊る渇いた音が、入り交じっていた。


そして、グレー色に広がった空が、より一層肌寒さを感じさせていた。




「ごめん、ごめん!内緒にしとくつもりはなかったんだけど…言うタイミングを逃しちゃった、みたいな?」



バスケ部の先輩と付き合っていた真由美。


その表情は、何か吹っ切れた様に見えた。



「そうだよー!いつの間に付き合い始めたの?」


「付き合い始めたのは、つい最近なんだけど…」


その後、真由美はせきを切った様に話し始めた。


バスケ部のマネージャーとして入部した頃から、先輩が気になっていた事。


次第に、長谷川クンから興味が離れていった事。


そして、先輩から告白され、付き合い始めた事。



私に話しそびれていた多くの思いが、溢れ出た様に話し続けた。




中学生の頃から、いつも一緒にいた真由美。


好きになった人を、ミーハーなまでに追いかけていたのに…


恋心を秘めていたなんて、らしくない。




それなら…


私も同じなのかもしれない。


ふと、野崎先生の顔が横切った。




「ふふっ…」


「なぁに?亜澄」


私も真由美も、恋の仕方が変わっちゃったのかな…


「なんでもな〜い!」


真由美の腕に手を絡めて、ピッタリくっついた。


「今日みたいに寒い日は、こんな風に温まってんのー?先輩と!」


「やだぁ!からかわないでよぉ…」


「羨ましいな。私は一人ぼっちで寒いよぉ!」


そう言って、真由美の腕によりキツくしがみついた。


「だったら、塚本先輩と付き合っちゃえば?Wデートしようよ」



昨日の放課後の事を思い出した。


塚本先輩に告白された事。


そして、通り過ぎていく野崎先生の背中。


「もう!真由美ったら、塚本先輩と同じ事言うんだから」


「えっ?」


「塚本先輩も『Wデートしようよ』なんて言うんだもん」


「告白されたの!?」


「昨日の放課後にね」


「で、なんて返事したの?」


「…逃げちゃった…」


「まじぃ〜?もったいな〜い」


真由美は、ガクンとしゃがみ込んだ。


「いいのっ!私は本当に好きな人と付き合うんだからっ」


「夢みたいな事言ってると、いつまでたっても、彼氏なんて出来ないぞ」


「夢でもいいんだもーん」


私は、真由美にプイッと背中を見せた。


「やっぱり“大人な彼氏”がいいの?」


私は、笑って返事をはぐらかした。




夢見ているだけの恋でもいい。



見つめているだけの恋でもいい。



教壇に立っている野崎先生を、見つめているだけでも幸せだった。



これが、私の嘘偽りのない、恋の仕方だった。

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