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プトレマイオス王朝~クレオパトラ7世

エジプトというとピラミッドがあり砂漠が延々と続くとかカイロが首都のイメージが大半を占める。地中海沿岸にあるエジプト第2の都市アレクサンドリアも観光地として有名であり欧州各国を含む地中海のリゾートとなっている。


紀元前332年に建設されたアレクサンドリア。アレクサンドロスの死後はその部下だったプトレマイオス1世がエジプトを支配し古代エジプト最後の王朝プトレマイオス朝の都として発展した。一時は人口100万人を超えた。交通の要所となり世界の結び目アレクサンドリアとも呼ばれる。


古代のアレクサンドリアは世界の七不思議の一つ巨大なファロス島の大灯台(現カーイト・ベイの要塞)や各地から詩人や学者たちが集まってきた学術研究所ムーセイオン、文学・歴史・地理学・数学・天文学・医学など世界中のあらゆる分野の書物を集め、70万冊の蔵書を誇りながらも歴史の闇に忽然と消えたアレクサンドリア図書館があり、ヘレニズム時代の商業(地中海貿易)と文化の中心地として栄えた。

「幾何学原論」

で知られる数学者のエウクレイデスや地球の大きさを正確にはかったアレクサンドリア図書館長エラトステネスなどが活躍した。1世紀には世界最大のディアスポラを擁し、哲学者フィロンらが活躍した。


キリスト教の初期から重要な拠点であり、古代神学の中心地のひとつともなった。ローマ・コンスタンティノポリス・アンティオキア・エルサレムとともに総主教座が置かれキリスト教の五本山の1つとなった。


4世紀以降は東ローマ帝国(ビザンティン帝国)に支配される。この時期アレクサンドリア学派と呼ばれる神学者たちが活躍した。641年にはアラブ人により陥落させられイスラム世界に組み込まれた。


アラブ時代には当初東ローマ帝国から切り離されたために経済的に沈滞したが学芸の都として性格は残りつづけ、アラビア科学揺籃の地のひとつとなった。やがて紅海からカイロを経てアレクサンドリアにもたらされたインドの香辛料を求めてヴェネツィアなどイタリア半島の諸都市から商人が訪れるようになると地中海交易の重要拠点として再び経済的に繁栄した。16世紀にヨーロッパ諸国がアフリカ回りのインド洋航路を開拓するとイタリア諸都市とともに再び衰えを見せ始めるが、19世紀にムハンマド・アリーの近代化改革の一環として輸出商品としてナイル・デルタで綿花が大々的に栽培されるようになるとその積み出し港として国際貿易都市としてみたび繁栄を始める。


現在ではエジプト・アラブ共和国の工業や経済の中心地、そして化学産業などが進出し、エジプト屈指の工業都市としての発展を続けている。


1970年の夏の出来事であった。奇妙な事件が続出したのである。


市警察アレキサンドリアとしてはなにがなんだかわけがわからない事件。全くもってお手上げ状態の怪事件だった。2000年代の今でも解決をされてはいない事件である。


アレキサンドリア市はマケドニアの国王アレキサンダーが何もない漁村に計画都市として建設した街である。


地中海を航海するのにアレキサンドリアあたりの街は都合が大変にいい場所となり歴史を重ねるにしたがい発展開発をされていく。


エジプト最後の王朝プトレマイオスの宮殿もあった。紀元前に滅びたその王朝最後の国王はクレオパトラ7世であった。


プトレマイオス宮殿そのものは残念ながらアレキサンドリア港の海底に地震により沈んでしまったようでその姿は見えない。


「ナイルの魔物」

と忌まわしき存在。旧ローマ帝国から呼ばれるクレオパトラ7世はその恋人アントニオとともにアレキサンドリア港海底に仲良く沈み埋葬をされたと伝えられている。あくまでも伝聞の域は出てはいない。


1999年にクレオパトラの賜ではないかとライオンの塑像がアレキサンドリアの海底から見つかりちょっとしたクレオパトラブームも巻き起こりかけた。ただしこれもクレオパトラ7世だろうかという推定の話に終わった。


1970年、夏のアレキサンドリアは街の至るところに地中海クルーズの観光客で溢れかえっていた。


ギリシャ・イタリア・フランスそして日本からもクルーズの観光客はいた。


夏のバカンスをエジプトに求め首都カイロから約300キロ離れた古都アレキサンドリアに流れてくる観光客たちもいる。


観光客の大半は300キロをフライトして移動するがなんとカイロ-アレキサンドリア間はキャラバンのミニバスが走っている。その料金はいくらぐらいと思われるであろうか。


10LE=300円なり。この砂漠をひた走るミニバス料金は1キロ1円となっていた。


1970年の夏の港街アレキサンドリアに訪れたはギリシャの新婚さんだった。カップルはギリシャ美人の彼女を射落とし念願叶って結婚した新郎である。


それはもう嬉しくて嬉しくてたまらない。新婚旅行のアレキサンドリアである。


市内の遺跡をグルグル巡り楽しい一日を送り夕方近くになった。もうこれでアレキサンドリアからフライトしてギリシャに帰るだけ。

「これが最終だからね。ホレア=ハレ通りの青物市場で買い物をして行こうか」

新婚カップルは市場に向かう。市場は新鮮な果物が安く豊富に並んでいた。


ホレア=ハレ通りはアレキサンドリアの都市計画のために出来たメインストリートのこと。アレキサンドリア駅から港に向け真っ直ぐに緩やかにダウンした通りはいつも賑かに買い物客で一杯である。


その夕方ギリシャの新婚さんはホテルを出て仲良く買い物をしていく。

「あれがいい、これもいいわね。エジプト特産のお土産も手に入るわ」

カップルでわいわいやりながら品定めをし通りの半ばに至ってきた。


突然、ゴォーと、異常な轟音が地鳴りとともに響きわたる。轟音はホレアハレ通りの下からだった。


新婚さんカップルは轟音に怖がる。新妻は慌てて夫にしがみつこうとして両手をさしのべたのだ。


キャー


が新妻の手は愛する夫に届くことなく夫の目の前からアッという間に離されてしまい通りにポカリッ吸い込まれた。突然空いた穴にグイッグイッと吸い込まれてしまうのである。

「おいどうしたんだ。どこに行くんだ」

新郎の叫びがツンザク声が響きわたる。


しかしそんなことは、おかまいなしにひび割れたホレアハレ通りの地底に新婦は新妻は引きづりこまれてしまう。


やがてぽっかり開いた穴は唸りをあげて小さくなり消えてしまう。穴が塞がれていくのである。


そばにいた新郎は最愛の妻が通りに吸い込まれ消えてしまったその場に呆然として立ち尽くすのみであった。


すぐ市警アレキサンドリアが到着しヒビ割れたホレアハレ通りを探し始める。


探すといえども目の前のひびわれたホレアホレを通りの上から眺めて探すだけだが。


いくら通りを探しても新婦の姿はどこにも見当たらない。地底に吸い込まれてしまったのだ。


後日にはユンボとシャベルカーで落ちた穴がどうなったか土を掘り新婦の遺体を確認しようとした。


なんにも出てはこなかった。


最愛の妻を新婚旅行で失った夫は気も狂わんばかりに毎日土掘り作業に立ち合う。ダメだ何も出ないとなりショボンとする。


このギリシャの新婚さんの事件以来似たような失踪が、いや、行方不明者が頻繁に事件に巻き込まれていた。


市警アレキサンドリアはこれを『クレオパトラ事件』と名付けてしまう。


なぜ、クレオパトラ事件なのか。それは失踪した被害者が全員女性であり美人だったからである。


紀元前にアレキサンドリアに君臨したプトレマイオス王朝のクレオパトラ7世は、美貌の持ち主で、人一倍美容には敏感な女性であった。クレオパトラが美しくなるためならば牛乳の風呂に始まり、薔薇の花、香水、蜂の刺激。東西各地から美容に効果があるというものはなんでも試してみる。


伝聞によるとアレキサンドリアの街でクレオパトラ7世よりも美人だと目星をつけられたら、密かに使者をあてがいその美貌を嫉妬したとされている。


世界三大美女よりもたまたま美貌であった女性は気の毒としかいいようがない。


クレオパトラ7世は国王としてアレキサンドリアに君臨していた。都市計画建設に力を入れメインストリートのホレアハレ通りを含め様々に街を整備していく。


そして井戸を掘らせもしたらしい。この井戸は水を得るために掘らせたのか別に目的があったのかは謎になっている。


アレキサンドラ大学の教授すらも井戸の目的は明確にはわからないとクレオパトラ事件でコメントしている。


クレオパトラは美貌を得るためにはいかなる努力も惜しまなかった。だから地底から美貌の膏薬を探していたのではなかったかとも言われている。


「美人だけが失踪するクレオパトラ事件」


瞬く間にエジプトいや、ヨーロッパに伝わる。


事件の性質から謎が謎を呼びかなりの話題にもなっていく。


問題のホレアホレ通りはアレキサンドラの駅からすぐにある2キロの普通の通り。青物市場から露店からがいくらでも立ち並ぶ活気溢れた通りだった。


このメインストリートを駅からダウンしながらアレキサンドラの港に向かう。


途中道がひびわれていた。このクラックが轟音とともにパックリ穴が開き美女だけを吸い込んでしまうと言うのだろうか。


アレキサンドラ大学の学生にたまたま知り合いがいたので聞いてみた。

「ホレアホレ通りはクレオパトラの私怨が詰まるのか」

を聞いてみた。

「クレオパトラ事件は有名です。事件以来全てが謎のままだから。ひとつとして解決はされていない。行方不明者はかなりいるはずだけどひとりとして発見されていない。事件の発生はかなり目撃をされている」

失踪したひびわれた道はそれこそ事件の度にユンボやクレーンで徹底的に土砂を調べてみたが何も見つからないことも知られた話であった。


この神隠しは恐らく今に始まったことではなくかなり昔から似たような事件はあったと伝えられた。


なにせアレキサンドラは砂漠の上に無理矢理アレキサンダー大王が街や住居を作ってしまった。軟弱な土壌の上に街を計画したようなもの。


道路なんかは地下がどうなっているか岩盤はあるのか砂漠の緩やかな地盤なのか全く考えていない。無謀な都市計画をしたアレキサンドラだった。


様々な地面のトラブルのは起こるべくして起こったというところであろうか。

「計画都市の専門家が当時いたらアレキサンドリアは開発はされていない」

アレキサンドリアのファロス灯台のように無計画に高い建物も作って結局は地震などの自然災害で破壊をされてしまっている。


アレキサンドリアの最期の王朝の話。


エジプト最後のプトレマイオス王朝はプトレマイオス13世が国王に就任をする。


13世はクレオパトラ7世の弟。プトレマイオス13世と姉のクレオパトラ7世は近親結婚をしてエジプトの統治に当たったと言われている。(推測)


近親婚はプトレマイオス12世(クレオパトラ7世の親)もまたプトレマイオス11世(祖父)も兄妹で結婚している。


この近親婚がクレオパトラ7世の血をあれこれ騒がせたのではないかの説もかなりある。


これがクレオパトラやアレキサンドリアのアウトライン。


日本から女子大生のあみがアレキサンドリアにやって来る。同じ大学の先輩と約3年の交際を経てゴールインとなる予定であった。


新春には大学卒業と挙式が待っており幸せの絶頂である。


あみは夢がある。挙式入籍をして旦那さまには保護者として卒業式に出席してもらいたいと考えていた。

「ねえいいでしょ。保護者が旦那様だなんて素敵じゃない」

そうと決まればいろんな段取りを賢いあみはテキパキと決めてしまう。


未来の旦那さまには何もかも事後承諾となっていた。


「新婚旅行はアメリカかなヨーロッパかと悩むわねえ」

ブライダルのパンフをあっちこっちから取り寄せてあみは、一人悩む。

「でもヨーロッパに決定しましょうね。なぜかって?あのねこのヨーロッパの航空会社は日本からヨーロッパにフライトすると1便エジプト(またはイスタンブール)にオマケで行けちゃうのね。どうせなら飛んでイスタンブールとエジプトのカイロを欲張ってレッツ・ゴォ〜したいぞ。どないなるん。オマケはひとつだけ。ただは1便だけどなあ」


春先のあみは盛大な挙式をあげ新婚旅行にいとしのダーリンとヨーロッパに新婚旅行をする。

「ヒャアー、嬉しいなあヨーロッパだよ」

あみたちはヨーロッパはフランクフルト(ドイツ)から入りフランス・イギリスを回る。G-7の経済大国は外さない。後は北欧諸国をオプションにして南に下がりスペイン・イタリア・南フランスの地中海沿岸かと選択肢があった。


「ロンドンから飛んで飛んでイスタンブール♪スルタンみたらエジプトのカイロに出てギザのピラミッドのクフ王したいなあ」

あみの提案がそのまま決まる。こうしてロンドンの街中でフィッシュ&チップスを買いフライトしながら機中でバリバリやる。


あみたちはイスタンブールに向かう。


「ひゃっほい。飛んでイスタンブールしたわあ」


念願のイスタンブールでは落日のポスポラス海峡を眺めつつ名物のサバサンドをあみたちは食べる。ボスポラスで採れたサバは新鮮でいくら食べても、あみは飽きなかった。

「うまいね。週刊紙に鯖サンドがあったから一度食べてみたいなあと思っていたの」

イスタンブールをぐるりとスルタンを見て満足する。


あみは観光客の中に混ざりながら、

「東ローマ帝国のコンスタンチノープル(イスタンブールの旧名)はこんなもんか。余は満足したぜよ」

ひとり納得をしていく。


次の訪問地エジプトに心は向かう。旦那さんは何もかもあみの言う通りにしており物静かであった。あまり存在感がないくらい。


あみはエジプトのピラミッドを見て古代ファラオの雰囲気を味わいたい。


それからはアレクサンドリアに出向きクレオパトラ7世の気分になれたらいいかなぁぐらいの考えでいた。

「よしエジプトに行きますわ」


カイロ空港に到着したらいきなり砂漠のエジプトを見てしまう。


カイロに到着したあみ、

「あちゃあーなんて埃っぽいところなんざんしょ。エジプトのアラビック文字はまったく読めないじゃない。嫌あー参ったなあ」

カイロの市街地はなんとなくざわざわとして落ち着くことがない。いや、好きになることもあみにはなかった。


埃っぽいだけが原因ではなかった。

「いやーん変にあみにまとわりつかないの。まあね、正直ね、あまり長くいたくはないなあ」

早めにギザの三大ピラミッドを見てカイロを出て行きたい気持ちになっていく。


ギザはカイロ市内から10キロ離れた近郊にある町。カイロからの道は整備され一気に走り抜けてもいいくらいの距離であった。ギザの近くには日本人学校(小・中学生)がある。


ギザのピラミッドは三基。それぞれに祖父・父親・孫のファラオが眠っているのではないかと言われている。


しかし遺体を納めた石官墓は見つかっていないし、やたらわけのわからない空洞ばかりがピラミッドの至るところで発見もされた。謎が謎を呼び込むことになっている。


アメリカ映画に『ピラミッド』がある。一大スペクタクルの特殊メイクの映画だ。


ファラオが眠むり王の墓扱いなんだが、ちょっと疑問の残ることがたくさんある。


王の遺体はどこにあるか。盗掘後のピラミッドではあるが遺体安置場ぐらいあってもよさそうなもの。


ギザに到着したあみたちは砂の中にある大ピラミッドを眺めつつ中に入っていく。かつてはピラミッドを発掘した学者たちが、全員謎の死を遂げたこともあり忌み嫌われたが現代では観光名所の一部となってしまった。

「へぇーこりゃまたピラミッド発掘の気分なのだ。クフ王さんはどこにいらっしゃるのかな。一度お会いしたいものだわ。いらっしゃるとわかれば、たこ焼きぐらい手みあげにお持ちしたのに」


クフ王はタコ食べるかな。


クフ王の前にはライオンの顔をした大スフィンクスがいる。


スフィンクスもエジプト各地にあるがギザが大きい。ナポレオンのエジプト遠征で大砲の精度測定のためにその鼻をバァーンと撃たれた。撃たれたおかげで観光ガイドは、いつもナポレオンが、ナポレオンがやりましたのっ、と繰り返し観光客に教えていく。

「へぇーそれでお鼻が欠けているのね。痛かったでしょうね。それにしてもナポレオンったらダメじゃんかっ、メッ。オイタはあきまへんでぇ。ナポちゃんにはタコやらないもん」


ギザのピラミッドを観光をしたら、あみは、

「さあさ早くカイロを出ましょ出ましょ」

どうも埃の中のカイロが馴染まない感じ。カイロは日本の大阪に似ている都市とも言われているけど。

「ふぅーどうでもいいからエジプトのコシャリを食べてからね。早く出たいなと思う美人の人妻あみちゃん。埃はもういらない。ダスキンしないといけないわ」

新婚あみはカイロからアレキサンドリア市を目指す。エジプトは基本的に砂漠の上に人が住んでるようなもの。計画都市として砂上に家を造り無造作に集合していくような印象さえある。


あみはとにかく埃っぽい街には閉口をしてしまったようだ。


「アレキサンドリアなら地中海に面した港町ですからね。青い海と美しい海岸が美人あみを待っているっ、ひゃっほい」


プトレマイオス王朝は港街のここに居城を決め文化的な都市を形勢していった。文化都市アレキサンドリア。


その文化遺産のひとつに古代アレキサンドリア図書館がある。この図書館は恐らく世界最古ではないかと言われている。紀元前から本があったとは。日本は縄文時代。


アレキサンドリアの沖にはファロスの灯台があった。

120m〜140mもの高層建築は古代の世界7不思議のひとつとしても数えられる。これだけのハイト(高さ)を誇っていたのは絶対的な権力を持つコンスタンチノープルからの威嚇を未然に禦ぐためと言われている。灯台でありながらも軍事目的も兼ねていた。灯台はアレキサンドリア地震により崩壊をしたと伝えられている。


新婚のあみはカイロからフライトして憧れのアレキサンドリアに到着をする。カイロからのフライトでアレキサンドリア空港に降り立つあみ。西洋史専攻の女子大生はアレキサンドリアに憧れて歩き始めるのであった。片田舎の風情を露呈するアレキサンドリア空港を眺めながら、よっこらしょっと、タラップを降りる。

「ふぅ〜飛行機はアッという間だった。東京〜名古屋ぐらいだったからね」

あみは新婚さんでもあり女子大生でもある。

「えへへ。あみは西洋史専攻だったりして。ローマ帝国は世界史にも登場しているからなんか親しみが沸いてきますわ。そのローマ帝国にかたくなに抵抗したのがクレオパトラ7世のプトレマイオス王朝だったのね。今いるアレキサンドリア市は首都だったの。というとクレオパトラの宮殿首都の建物はこの街にあったわけね。どこかなあ?探しましょう」

空港に降りたばかりであった。と、その時であった。


「あみ、あみ」

どこからかわからないが呼ぶ声を聞く。


タラップを踏み出した一瞬にあみは偏頭痛がし危うく気を失いそうになる。

「痛いわ、あっ頭が痛い」

頭痛とともに夢であろうか幻覚なのか小さな女性が盛んに呼び掛ける像を夢に見る。あみは新郎に寄りかかり体調の不調を訴えた。フラッとしてそのまま倒れてしまう。


慌てたのはアレキサンドリア空港関係者だった。アジアからのお客さんにもしものことがあってはと最大のサービスを施す。


すぐさま救急車が呼ばれアレキサンドリア病院に搬送された。


病院であみは辛うじてかんたんな英語が、話せた。エジプト医師の問掛けに、Yes.Noは、意思表示できた。


偏頭痛に悩まされるあみは空港から病院に搬送される間も妙な幻覚を夢に見る。


それは小さな女性が朧げながら話掛けているものだった。


「あみよっ、あみ」

いくどとなく名前を呼ばれる幻覚を見るがその後は何をしゃべっているのかまったく理解ができなかった。

「夢にうなされるわ」

偏頭痛を押して、なんとか答えてあげましょと頑張るが、幻覚の夢の中では思うように体が動かなかった。


アレキサンドリア病院で医師は旅の過労からくるストレスではないかと診断する。点滴をし一晩様子を診ることになる。


あみはグッスリ眠り次第に偏頭痛も消えていく。旅の疲れは確かにあったかもしれない。


翌朝は日の昇るのを見て元気を取り戻し回復に向かう兆候がみえた。

「フゥ。アレキサンドリアでグロッキーさんではいけないわね」

午前には病院からホテルに移動し静かにおとなしくロビーや部屋で一日を過ごすことにした。

「もうアレキサンドリア観光はキャンセルね。また頭が痛くなってしまったら大変だもん。早く日本に帰りたくなりました」

ホテルの窓から眺めるアレキサンドリア港は青く、太陽は燦々と輝くものであった。

「それにしても。あの幻覚の女性はなんだろ?日本人じゃないみたいだわ」

丸一日、ホテルで静かに過ごすと、ふつふつと幻覚を思い出していく。


ホテルの窓から街を見たら青物果物市場が見える。

「あら、市場があるじゃあない。なにかおいしいもの買ってこようかな」


あみは財布のエジプトマネーを確認して、軽くカーディガンを羽織り、青物市場に向かって歩いて行く。青物市場はいわくつきのあのホレア=ハレ通りにあった。


お財布を持ち、あみは、ひとりホレアハレ通りを行く。ホテルから賑やかなアレキサンドリア駅に向かう。通りをダウンしながら港に向かって市場を見ながら後は気の向くまま道のまま。


ゆっくり歩いて青果や魚などを楽しみながら眺めた。露店市場は、青果果物、魚類、肉類、ドリンクなど。日本人のあみは見ているだけでも楽しいものだった。


日が暮れて荷台の品もなくなる露店も出来始めた。

「凄いわね、全部売り切ってしまうんだわ。また、それだけ新鮮な品物だと言えるわけか」


ホレアハレを半ばあたりまであみは歩き、クルッと踵を返す。

「さてここまで来ちゃった。ホテルに帰りましょう。あのオレンジが美味しそうだから買っていこうかな」

バレンシアオレンジは、大変安く三個で20円ぐらい。あみは小型の電卓をポンポンと弾いて、

「えっそんなに安いの」

もう一度計算してから驚いた。

「どれだけ安いのかしら」


翌朝あみは美味しいオレンジをまた買いたいと、昨日と同じ屋台の露店から買う。

「20円ね、ポィ〜」

あみはチョッキリ支払う。


エジプト人は、違う、違うとジェスチャーを見せる。

「あれ?値段違うのかな」

どうも、値段が違っているようだ。エジプト人、そのあたりの紙に、更々と、値段を書き、あみに見せる。

「200円だあ。あれ、昨日は20円だ。昨日のあのオバチャンが間違いだったンだわ」

あみ、ポィと支払いオレンジを買う。


※エジプト人は人を見て値段を決める。あみは金持ちに見えたからフッカケられたんだね。


「昨日は途中までしか行かなかったから今日はアレキサンドリアの港までちょっと長旅〜しましょう」

港までは、1.5キロある。アレキサンドリアはごちゃごちゃとしている街。カイロと違い人が少ないから落ち着ける。


お散歩のあみもそのあたりわかっているようであった。のんびりと歩きリフレッシュしている。

「そう言えばクレオパトラはこの街にいたんだわ。このあたりを歩いたりしてね」


ホレアハレ通りはクレオパトラ7世が建設の命令を下したと伝えられる。


計画都市で作っているから街の交通移動は比較的楽なアレキサンドリア市だとも言える。


ホレアハレ通りを半分あたりに来たあみ。空耳がしてくる。

「うん?なにか聞こえたな。なんだろうか」

ホレアハレ通り。燦々と太陽は光り輝き街行く人々は活気に満ち溢れいつもとなんら変わらない様子であった。あみは空耳をしたと察知したが。

「気のせいだわ。空耳(からみみ)なんだから」

安心をした次の瞬間いきなりゴオ〜ゴオと地響きがした。あみの立つ足元がパックリとひびわれ、穴が開いていく。


「キャアー」


一瞬の事であった。あみは通りにできたクラックに吸い込まれ落ちる。あみを呑み込み穴はまた地鳴りをあげ元に戻ってしまう。


ホレアハレ通りの市場の人々はアッという間の出来事に唖然とする。

「なんだい今のは」

あみが発したキャア〜の叫びはホレアハレ通りに響きわたった。突然ひびわれたクラックに轟音とともに吸い込まれたあみ。

「た、助けて〜いやあん」

あみは、落ち、地底に叩きつけられる覚悟をする。

その落下で気を失いあみは自分を失う。気絶したあみは闇なのか夢なのか妙な光景をうつらうつら夢に見る。


偏頭痛のあの小柄な女性が夢に現れた。朧な虚ろなぼんやりな。靄がかかってはっきりした姿は見えない。


あみの幻覚。


「あみっあみ」

あみの頭の中に盛んに問掛けてくる。


あみは意識が戻りつつあり朧な虚ろなイメージがはっきりする。そう、はっきりとしてきたのだ。


「私は、あみはどうしたの。確か穴が空いて落ちたんだわ。突然に道がひびわれて。あらっどうしたの。体、体にちからが入らない。ふわふわしているみたいな感じよ」

手足を動かしてみようとしてもダメ。目を開けてみようと頑張ってみたがどうしたことか開けられない。


体感としてはガリバーが小人の国に体を縛りつけられたみたいなものだった。


「あみっあみ」


闇からあみの頭の中に呼び掛けられる声だけは繰り返し響く。偏頭痛は落ち着き声だけは、よりはっきりわかってくる。あみと呼び掛けられた後ムニャムニャと囁きかけているところまで聞き取れた。


その言葉がなにやら外国語ではないかと察知された。

「あみも詳しくはわからないけどどこかの外国語だわ。早口なのかなあ、ニョロニョロとしか聞き取れない。アムサダ?なんだろう、わからないわ」


小さな女性が近くになんとなく外観がわかるくらいにあみに来る。


不思議なことにあみは、恐怖は感じられなかった。相手が女性である安心からか、親しみを込めてと、あみは思うのであろうか。

「あなたは誰ですか」

あみは力の入らないまま念じながら問掛けてみた。口はまったく動きはしなかった。テレパシーなのかそれとも気絶しているから夢の中なのか。


あみの頭に描かれた小さな女性は軽く礼儀をした。

「う〜あなたははっきりわかった。でも日本人じゃないわね。あんな会釈はみたことない。何者なの、あなたは」

小さな女性、さらに、ニョロっと、言葉を続ける。あみははっきり聞き取れた。

「なんだろか。エジプト語なの。意味がわかない」

親しみを込め小さな女性は言葉を続ける

「ブリタニカ(英国)パプロゥン(イタリア)マックド(ギリシャマケドニア)アナトーリ(トルコ)」

なんとなく国の名前が、出ているみたいとわかってくる。たぶんねたぶんだけど、私が何者か知りたいんじゃあないかな。

「日本人よあみは日本人よ。私は、日本。」

小さな女性はいぶかしげに顔を傾けた。

「あみっあみ」

さらに名前が呼ばれる。


あみ、とっさに

「Yes!」

と答えた。

「Oh!You!Britani(英国)」

それから小さな女性は英語で語りかけてくる。

「Welcome」

あみは聞き取れた。英語だわ、この人英語が喋れるのね。あみはリラックスしてゆっくり念じてみる。

「Who?」

小さな女性、ニッコリ笑った。

「Queen」

クィーンだって?クィーンって、女王さま。なんだろ、なんで女王がいて私がここにいるの。なんなのこれ?


頭は混乱をしていく。それよりもあみの英語の実力が怪しい。


西洋史専攻だが英語なんかしゃべってみたことがなかった。思い出す単語をなんとか並べては、念じてみた

「What do you do here?」

小さな女性、いぶかしげな風に小首をかしげる。

「I am Queen.Welcome to kingdom」

ダメだわ後はなにを言っているのかわからないなあ。さらに、小さな女性は、なにやら盛んに話かけてくる。

「あ〜ん、わかんない。わかんないてば。なにを言っているの?なにがしたいというの」


やがて、小さな女性、言葉がわからないと諦める。

「Bye!」

軽く手を振りあみから遠ざかっていく。


やがてあみの頭の中から、幻影はポツンと小さな点となり消えた。


あみは再びふわふわとした空中遊泳感覚になる。


と、その時にあみの体が移動していく。

「やだ、やだ。どこに行かされるの」

なんとかかんとか手足を動かし自由になりたいと考えてはいるもダメ。なんともならない。

「どうなっているの?ひょっとして、私、死んでいるのかしら。道に落ちてしまったのよ。あっ痛い、頭の中が割れそうに痛い」


あみが痛みを堪える瞬間、再度小さな女性があらわる。

「あみ、あみ」

名前を呼ばれるとスゥーと痛みは無くなり楽になっていく。


小さな女性はそっとあみに触ろうと手を伸ばしてくる。体はふわふわのために雲に触られるような感触だった。スゥーと、その手をあみの足から触り始め、ずぅーと、体をすり抜け頭に至る。触られたあみは、なんとも言えない気持ちになる。

「やだなあ、手で体中をレントゲン撮影されているみたいじゃない」


小さな女性、あみの大脳を少し揉みマッサージをする。

「あん?なんてことなさりまする。私の空っぽな頭の中触られてしまったわあ。あれっ痛いのかな。気持ちがいいのかなあ。はてはて」


すると


「あみ気持ちがよいかい。もう少しやってあげたいわオホホ。あみかわいいじゃあないかい」

小さな女性の言葉が急に聞き取れたのだ。


驚いたことに日本語で聞き取れた。

「あらそれならわかるわ、わかりますわ。なんと言えばいいのかしら」

ニッコリ小さな女性は、微笑みこう言う。

「そう私が誰だかわかるかい?」


また、体がふわふわし始めた。

「ねぇ、お願いがあるの?体がふわふわして言うこと聞かないの。なんとかなりません?その魔法で」

小さな女性はなにやら念じ始めた。

「ほほぅそれでは、エイッ」

あみは体全体に力がみなぎる。目はまだ開けれないが少し足で立ち上がれそうだわとグッと床に足をつくつもり。

「あれ床がないわ。空中にふわふわしているのは感覚だけではなかったんだわ。あーん、変なとこに来てしまったわあ。早くお家に帰りたいよう」

あみ泣き声になる。

「お家に帰りたい?あみ、もう少しもう少しお待ちなさい」

なにがなんだかわけわからないまま、しばらく様子をみるしか手はなかった。


「あみ、あみ。よいかいゆっくり目を開けてゆくがよい」

言われたとおりやがて、瞼の中やんわりと光りが差していくのを感じた。


ゆっくり瞳を開ける。見えるかな、見えるかな、ちょっと眩しいかなと、手で、光りを遮りながら開けてみる。ゆっくり見えるのは、なにやら宮殿の中のようであった。かなりの人が、並び、心配そうにあみを眺めている。


宮殿の様子はぼんやりとした視界から、段々はっきりとしてくる。

「ここはどこなの?あなたがたは一体誰なの」

あ!あみはしゃべれた。自覚のないままプトレマイオス時代の言葉をしゃべっていた。


宮殿の中の礼儀正しい女性はこう答えた。

「プトレマイオス王国の宮殿でございます。あみさま」

プトレマイオス王国?なんだいなあ?なんか世界史にあった名前だなあ。


世界史のエジプトか、ローマ帝国のうん?少し思い出していく。あみは、この瞬間ひょっとして、タイムスリップをし、古代エジプトに来てしまったのではないかと考える。

「古代エジプトだ。ファラオのなんたら。ピラミッド作って、ツタンカーメンの仮面だわ」

と、その時、礼儀正しい女性がムッとして、

「あみ、違います。ファラオは、アブシンベル神で、まったく、我々と関係ありません。もう少し勉強しなさい。怒りまっせ」

軽く足を蹴った。

「あちゃーあ、叱られてしもうた。なんだろ?プトレマイオス、プトレマイオス」

宮殿の侍従たちは、あみの次の答えを待って、じっとしている。

「あら、ごめんなさい。なかなか出て来ないなあ」

ふふどないしょう。自分の不勉強にあみちゃん、苦笑い。

「今ね、今ね、思い出すから、ちょっと、待ってクレオっなんだろうパット〜らあ」

あがあーかなり苦しいが、ま、いいかい。女王は、やっと名が出たと、あみの前につかつかと歩みよる。

「余が、クレオパトラであるぞ」

小さな女性は一段派手な着飾りをして、クレオパトラと名乗る。


「はあークレオなんとかラア。なんじゃいなあ」


あみは、クレオパトラを知らなかった。

「そなたは、そなたは、(わらわ)を妾を知らなかったのか。余を知らぬとはなんたる侮辱じゃあのう。高校教科書、山川出版の『詳説世界史』に載っているからね。勉強してやあ。初めの方だからさ」

クレオパトラ7世はしばしむくれかえりお怒りになられた。そのままプィと消えてしまう。


「やってられないぜ」


軽く宮殿のエンタシスを蹴って消えた。


プトレマイオス宮殿の侍従はクレオパトラ7世の退席した後、あみに事の転末を説明をする。

「あみさま。お聞きください。あみさまはアレキサンドリアのホレアハレ通りにて我がヨミの世界に入られました。女王クレオパトラさまがお望みなさいましたから来ていただきました。選ばれし女でございます」

丁寧に言われた。

「ち、ちょっと待て。

わけわかんないわ。ヨミの世界ってなに?来ていただいた?私希望しないじゃん。なんなんのよ。私、死んでしまったの。クレオなんとかさんが、私を殺したの?殺されちゃったの」

あみは矢継ぎ早の質問を浴びせた。

「違います。死んではおられません。むしろ反対にエターナル・不死の体を与えられたものでございます。つきましては」

侍従は声をひそめながら続ける。


「あみさまにお頼みしたきことがございます。ヒソヒソ」

耳でこちょばく囁かれてしまう。

「な、なんですっと。生まれかわりになるですって」


あみは宮殿に響き渡る大声を張り上げた。

「女王さまは運命の糸に導かれ生まれかわるのでございます。それで」

侍従女は続ける。


BC69〜BC30に生存したクレオパトラ7世は、後世に生まれかわりの運命が待っていた。


その生まれかわりはなぜか本人が選択をすることができる。

「さようでございます。生まれかわる場合には、ふたつのご身体があります。ひとつを選ぶことができます。しかし、選ばなかったご身体はそのままにしておけませぬ。そこにあみさまがスッポっと登場されるしだいとなります」

あみはなんだろうっ、これはだった。

「ふぅー、あんまりよくわかんないけど生まれ変わるのね、私。クレちゃんが選ばなかった生まれ変わりに私が入るわけね」

そこまで話が進むとプィップとお多福さんみたいに膨れたクレオパトラ7世が現れた。


「あみ、あみ、わかりましたか」


わかりましたかと言われてもねぇ。あみは納得がいかない。

「じゃあさ聞くけどさ。生まれ変わるって誰になるの?」

恭しく、侍従、あみの前に目録を提示する。

「あ?これに書いてあるのね。誰かな」


◎泉ピン子

◎蛯原英里


クレオパトラ7世はニコニコしながら、

「妾は可愛いエビちゃんになりますわ。あみは」

あみはジィーと目録を見つめながら呟き、いやわめきまくる。

「なんですの。クレが、エビちゃんになる。と自動的に私は。あちゃあーピンかいな。渡る世間は鬼かいな。不公平じゃんか」


あみはそう呟きクレオパトラ7世に露骨な不満を見せつける。

「面白くないわブツブツ。エビちゃんがいいなあイヒヒ」

あみはクレオパトラ7世の顔を覗き込む。


ちょっとよそ見した瞬間を見た。さあーと目録を取りあげる。

「あっ。なにをいたしまする。妾はエビちゃんなりよ。いかんいかん、返せ目録を。このペチャパイ」

クレオパトラ7世はあみから目録を奪い取ろうと手を伸ばす。グイッとつかむ。

「いゃーぁン。やだあ手を離してちょうだい。うん?誰がペチャパイなん」

争うあみはクレオパトラ7世に目録(エビちゃん)をどうしても渡したくはなかった。

「当たり前じゃん。なんで、渡る世間は鬼の、食堂のおばちゃんやらなければならないのよ。いやぁーん。あみは、エビちゃんがいいの。オバハンこそ食堂のオバハンやあ。三角頭巾似合うよ」


文句をおもいっきり言って力一杯クレオパトラ7世と目録の奪い合いになる。


あみは繰り返す。

「食堂のオバハン、食堂のオバハン。クレのあんたは似合うから」


ふたりがエビちゃんの目録だけを争う。ピン子目録は地面に棄てられた。

「クレ、しつこい。えぃークタバレー」

あみとっさに蹴りが出てしまう。


ボコッ


あらクレオパトラ7世を蹴ってしまった。腹部に蹴った足はきれいに入って決まってしまった。


クレオパトラ7世ダウンダウン。立てるか。足に来ているが立てるか。おっとフラフラだ。両手でファイティングポーズ。うーんダメだこりゃあ。


クレオパトラ7世ダウンしたあ。


「今だわ」


あみはエビちゃん目録をスッと取り独り占めに成功する。

「中身はなんですか」

ボワァ〜煙る煙る白い煙。

「煙る煙るでエビちゃんになれるのね。うん?あらやだぁ」

蹴りを入れられたクレオパトラ7世が頑張って食らいついてくる。あみからエビちゃん目録をまだ奪い返そうとしがみつく。凄い執念だ。さすがナイルの魔物だけのことはある。

「妾はエビちゃんになるぞよ」


煙る煙るはあみをエビちゃんの生まれかわりにさせていく。あみの足に抱きついたクレオパトラ7世も食らいつきがよかった。エビちゃんの妹になってしまう。あみがエビちゃんになる。附属みたいにクレオパトラ7世が双子の妹になれば。


「あらっ、ダメじゃんかあ。渡る世間はピン子さんがいないわ」

二人同時に生まれ変わらないといけない。


あみはエビちゃんとなりつつチラッと侍従の女官を見る。いやっ睨んだ。

「こいつは使えまっせ」


見るが早いか、さっと、泉ピン子の目録をボサッとしている侍従女官めがけ、


ポイッ


投げつけた。


ストライーク!


女官はぶっつけられた目録からモクモク煙りが立ち上りピン子になりました。だから生まれ変わりのピン子は愚痴っぽいのである。

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