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Another Life to End  作者: 綾高 礼
第四章

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大賢女(4)


 二〇五四年 六月


 それから同じような日々が二週間と続いた……。

 厳密に全く同じという訳ではないが、普段の走り込みに追加で『筋トレ』と『金トレ』と『近トレ』と『緊トレ』と『禁トレ』とかが増えてより過酷になっただけだ。なんか禁トレだけやばいくらい強くなりそうだな。

 こんなしょうもないことを脳内で思考するくらいに、俺の精神状態がやばいことが伺えるだろう。

 というかALEに住み始めて一か月が経とうしていた。

 あれから不満がないかと言えばそんなことはなく、何度も逃げ出してやろうとベットで夜な夜な一人、枕を濡らした日々もあったが、俺はここでの生活がさほど嫌いではないのかもしれないと、いつからか錯覚し、洗脳され始めていた。どうも千眼ツヅルです。

 まぁ確かに師匠との森で引き籠る生活は、意外と現実世界で生きるよりもストレスが減った気がする。修行に関しては置いといて。

 一人で過ごすのが好きな俺は、必要に構われるのが嫌いだし、完全に師匠はそっち側の人でむしろ俺が居候していて大丈夫なのか、と心配になるくらい修行以外の時間は読書ばかりしている。あまり無視され続けるのは泣いちゃうけどね。

 他にも空気が美味しいとか、解放感のある自然とか、面倒くさい人間関係がないなど、都会での人間関係に疲れて田舎暮らしに憧れる人の気持ちが分かった気がする。

 掃除炊事洗濯という家事全般は自然と俺で、っていうかこの人ほんとびっくりするくらい何もしないんだよ!

 とある日のこと。師匠に無理言って街まで買い出しに行き、師匠のお金で食材を爆買いで溜め込み、服なんかもボロボロの一着しかなかったので、これまた師匠のお金で一着だけ動きやすく値段もお手頃価格のチュニック、ズボン、パンツ、ブーツも買った。

 言っておくが俺は最低のヒモクズ野郎ではない。


 だって師匠が「お金だけは長生きしすぎて、モンスター討伐し続けてたら、減らなくなった」とか、ブルジョワジーな発言してたから使ってやるのが俺の役目だろ、弟子として。

 いや実の所、俺も流石に罪悪感はあって、ほんとだよ?

 だからモンスターの討伐依頼くらい自分でこなしてお金を稼いで早く俺も強くなってって思っているのだが、ここで問題は修行に戻る。

 現実世界で喧嘩とは別に、格闘技や武器を使った戦闘などしたことない俺は「まだモンスターとは戦うなよ、死ぬぞ」と師匠に強く釘を刺されていた。

 じゃあ俺に戦い方を教えてくれ、と頼んではスルーされ、日常会話のついでに、ついうっかり承諾させよう作戦も容易くスルーされ、機嫌が良さそうな日はすかさず交渉に入るもガン無視され、夜な夜なベッドに拳を叩きつけながら何度枕を濡らしたことか。

 でもついに、そんな俺の努力が報われようとしていた。

 今朝、いつも通りトーストしたパンとコーヒーという手抜き感満載の朝食を食していた時のこと。


 師匠が「今日から死ぬ確率が上がるが準備はいいか、お主」とコーヒーを啜りながら日常会話のように聞いてきた。そう、ついうっかり作戦を逆に使われてしまった。

 その時の俺は、寝起きで思考があまり回っていないのもあって「みゃ?」と理解するのに少し時間がかかったが、それは本格的な実践の始まりを知らせるものだったのだ。

 俺もこの発言で意味を理解してしまう程に、師匠の不器用さには慣れだしていた。


 そしてついにその実践修行が始まろうとしていた。

 現在、俺と師匠はいつもの草原フィールドにて、互いに正面から向かい合っている。

 師匠はいつも通りローブのフードを被り、艶麗さながら出るとこ出ている。今日もお綺麗ですね。

 そんな俺の浮かれた気持ちを引き締めるかのように、師匠は急に右足を動かした。


「ハァア‼」

「ハァア⁉」


 師匠の上段蹴りが俺の顔面すれすれで寸止めした。いや気のせいか掠ったよね。その勢いで俺は情けなく地面に尻をつく。


「い、いいきなり何すんだよ師匠⁉」

「いや、すまない。お主の私を見る眼が日に日に生々しくなっていると思ってだな」


 あら、そういう意味だったの。

 てっきりこれくらいの前座だぞ、と一発俺にかましを入れて気を引き締めていけよって感じだと思ってた俺が恥ずかしい。


「って、俺はそんなエロいことばっか考えてる猿じゃねぇえ‼」


 それに歳いくつだと思ってんだあんた。言ったら殺されるから言わないけど。


「そうなのか? お主の目はどこかで見覚えがあってだな……」

「見覚え? 俺はこの世界に来た初日で師匠と会ったから、それ以前は……」


 すると師匠は、どこか遠い目をしながら手探りに何か思い出すように語り出した。


「あれは確か百五十年前、コブリンとの戦いだったか……。小鬼の癖に私の身体をジロジロとよだれを垂らして見ていたあの卑しい目と似ていて……」

「俺をコブリンと一緒にするな‼」


 何だかんだ少し肩の力が抜けた気がする、自然と力んでいたのかもしれない。師匠もそれを察してか気を使わせてしまったのかもしれないな。

 意外と見てくれてるんだな師匠。その場で咳払いをして仕切り直す。


「それよりも師匠、早く今日の鍛錬を」


 師匠は素早くアイ・ジーを操作すると、杖を取り出した。

 草原フィールドに吹き抜ける風が、程良い緊張感のある空気を運んでくる。


「お主はこの短期間でとにかくその貧弱な体幹を鍛えた。でもそれはまだまだ発展途上であって、体幹基礎は毎日の鍛錬で積み重ねていくものだ。それだけは忘れるな」

「あぁ。死ぬほど分かってるよ」


 この一ヶ月でしつこいくらい言われたからな。


「では、今から本格的にモンスターと戦う稽古に入るのだがお主、スキルについて何処まで理解している?」


 スキル。ゲームとかではよくあるMPやSPを使って魔法や必殺技を使うシステム。けどALEにはそんなのなかったよな。勿論、メニューウィンドウにも。


「スキルかどうか分からないけど、十億との戦いで、師匠や永聖軍団の奴らが使っていた技や魔法とかのことか?」


 その中でもセレスティアは見とれてしまうくらい美しく綺麗だった。剣技がな。


「そうだ。この世界ではスキルと言っても二種類あってな、まずその内の一つは武器や身体を使って攻撃や防御を行う“武器ウェポンスキル”」


 師匠は手に持っていた杖をブンブンとヌンチャクのように無規則に手元で遊ぶように回転させる。すると杖が赤く発光した。まさに槍使いのような。


「これが武器ウェポンスキル……」

「あぁ。これは武器スキルの中にある刺撃しげきスキルの一つ《カウンターライフル》という。普段は敵の攻撃を受け流し、反撃するカウンター技であって、主に槍使いがよく使う」

「え? でも今師匠が使っているのは杖だろ?」

「そうだ。武器スキルは技を習得さえすれば手持ちの武器を選ばない。同じように剣や短剣でも先の《カウンターライフル》は使用出来る。だがリーチや精度などは使用者の武器、技量、経験に左右されるがな」


 なるほど、武器を選ばず技が使えるのか。それは便利だな。


「さっき刺撃スキルって言ったけど他にもどれくらいの種類があるんだ?」


 師匠は振り回した杖をコン、と地面に突く


「そうだな。他にも斬撃スキル、打撃スキル、射出スキル、武術スキル、防御スキル、特殊スキルそしてさっきの刺撃スキルという具合に」

「そんなにあるのか⁉」

「そんなに驚くことでもないだろうに。ざっと七種類くらいしか、」

「いやその一つのスキルの中にも色々技があるんだろ?」

「そうだが……フッ。そうか、お主これを全部使えるように、なんて思っているんじゃないだろうな?」

「なっ⁉ そ、そんなこと思う訳ないだろ‼ 子供じゃないし」

「憧れてるな……」

「わ、笑うなそこぉお‼」


 師匠は普段、あまり笑わないから突然、笑顔になられるとついドキッとしてしまう。


「いやはや、すまんすまん。お主は今時珍しい部類だろう。普通自分が得意そうなどれかを極めようと専念する奴がほとんどだからな」

「悪かったな、絶滅危惧種で」

「……まぁ私でも全てのウェポンスキルの技を習得するのに多分二百年くらいはかかったからな。何しろ昔から武器の扱いは苦手な方でな」

「やっぱ俺も何か極める方向で……」


 なんでそこで少し悲しそうに俺を見つめるんだろう。そして師匠は掌を宙に向ける。


「そしてもう一つは火、水、氷、風、雷、土、光、闇。それらの属性を操り戦い護る。それを“魔法マジックスキル”と呼ぶ」


 次の瞬間、ボワッと師匠の手にはソフトボールくらいの小さな火球が出来上がっていた。


「これは火属性魔法ファイヤーマジックの基礎の一つ。《ファイヤーボール》。火球のサイズや精度、威力は武器ウェポンスキル同様使用者の経験や技量に左右される。

 あと、これらのスキルを使用するのに必要なのが《《セルフォース》》と言う」

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