表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/22

第5話 地図。

「お呼びでしょうか、陛下。」


陛下の執務室に呼ばれて行って見ると、壁一面にはられた大きなドラッヘン帝国地図を前に、陛下が立っていた。


「ああ。お前とアンナをどこにやろうかと思ってな。」


ビアンカ山脈から流れ出る二つの大河。この国の農地を潤している。大河はやがて南で海に流れ込む。ドラッヘン帝国、帝都は旧帝国にある。もともとこの大河を両脇に置く大国だった。周辺国同士の小競り合いが続く中、俺が騎士養成学校に通っているほんの3年の間、俺の国、エルゼ国は戦わずして帝国に下った。賢い選択だったと思う。不要な血を流すことはない。俺の兄、大公家の嫡男に嫁に来るはずだったソフィーアが差し出された。

俺は、併合されたばかりの我が国から、帝国軍に入った。


山脈の裏側、北西はあの女の国、アルバ国。暑くて寒くて、どうしようもない国らしい。同じ山脈の裏表だというのに、年中水不足らしいし。


そして、北東に広がるのは遊牧民族が走り回っている荒野。その先は砂漠。その昔、攻め入ってきた遊牧民族を追って、馬で駆けたことがある。山脈が見えないところまで行ってしまったら、もう戻れないだろう、と肝が冷えた。それくらい何もなくて広い。


手を後ろ手に組んで地図を眺めている陛下。

何て無防備なんだ。…まあ、それだけ俺が信用されているということか?まあ、この人にかかったら、素手でも剣でも勝てはしないが…シャツを着ていてもわかる、背筋の盛り上がり。短く切った金色の髪。


「やはり、ここかな。面白そうなのは。」


陛下が指し示したところは、ゲルダ国。ビアンカ山脈の東の端になり、俺が昔、遊牧民族を追っ払ったところだ。荒野、の始まりの地、みたいなところ。鉱物資源と、遊牧民族の南下を防ぐ目的がなければ、あえて取りたいと思わない国だな。


「国境沿いに軍も駐留していることだし、問題ないだろう。逃げたら死ぬだけだ。」

「はあ…」

「まあ、お前も長いことよく戦ってきたんだ、すこしゆっくり休め。」

「…はあ」

「そうだな…お前が出向いている間に遊牧民が動いたら…お前の判断でどうとでもしていい。」

「…はあ。」


まあ、ここのところおとなしいので、何もなさそうだけどな。


ゆっくりと振り返った皇帝陛下が俺を見る。


「なんだ?不満か?」

「いえ。別に。」

「くくっ、皇后に会えなくなるのがそんなに不満か?」

「いえ。そんなことはありません。」

「まあ、お前も少し、羽根を伸ばせ」

「ありがとうございます。」


羽根って…どうやって伸ばすのさ?


一礼して退室しようとすると、

「そうだな。お前の婚約者にしよう。あの女の身分は明かすな。後々面倒だから。」

「ぐえっ?」

「…カエルになったのか?ランベルト。その方が都合がいいだろう。いいな。」


…なにが、どういいんですか?







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ