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第3話 神様。

『ああーよく寝た。』

そう言って泉で拾った女が、ベッドの中でのんびりと伸びをした。

呆れ半分、警戒半分の俺と目があったら、にっこりと笑う。

「あ、おはようございます。ご飯はまだですかね?」


いや…俺は使用人じゃないぜ?しかも、まず飯?


ドアを開けて大声でおばちゃんを呼ぶと、台所にいたおばちゃんがエプロンで手を拭きながらやってきた。小脇に荷物を抱えている。飯はまだみたいだな。


「おはよう!あら、顔色も良くなってきたねえ!起きれそうかい?」

「はい。ありがとうございます。」


女が布団からゆっくり出て、ベッドに座って足を下ろす。

「んじゃあ、朝ご飯の前に、着替えっちまうかね。」

おばちゃんが抱えて持ってきたのは、昨日言っていた着替えか。そう思いながら見ていると、

「…ランベルト様、女の着替えをみたいのかね?ふふふっ、女には興味ないとか言いながら…お前さんも男だったんだねえ。」

と、おばちゃんがにまにまして俺を見てきた。おい。見たいとかじゃなくてダナ…

警戒しているんだ、俺は。

「着替えさせるから、その間、ランベルト様は水を汲んできておくれよ。顔もまだ洗っていないんだろう?あんたも顔を洗ってきな。」


…いや、だから俺はな、帝国軍の…まあ、いいか…この女の持ち物も確認させたが、猛毒が仕込んであるとか?種自体に毒があるとか?…麦も種も、普通の、何の変哲もないものだった。


しぶしぶ勝手口から出て、泉に向かう。

途中、普段着だが警邏中の部下に挨拶される。


上りかけた朝日が綺麗だ。空気が澄んでいて、肌寒いくらいだけど。

泉に手を入れて、顔を洗う。持ってきたタオルでごしごし拭いてから、そばにある道具置き場から洗面用のたらいを引っ張り出して水をくむ。


水の入ったたらいを持って、部屋に戻ると、女の着替えが済んでいた。おばちゃんがタオルを濡らして、女の顔やら腕やらを拭いていく。着替えをする前に、髪も切りそろえてくれたらしい。顔が隠れるほど長かった前髪もぱつんと切られて、女の顔の輪郭がよく見える。思ったより…整った顔をしている。農奴…だと思うけど。髪色は北の国にはよくいると言われる銀髪、瞳は紫がかっている。


「さあさ、ランベルト様も見とれてないで、朝ご飯にしましょうかね。」

女の着ていた寝間着を丸めて運んで行ったおばちゃんが、ほどなく朝飯を運んできてくれた。ぼーっとしていた女の顔が、ぱっと明るくなる。


…こいつ…飯もろくに食えないほどの貧乏生活だったのか?

そう思わせるほど、嬉しそうに飯を食っていた。


「お前は…誰だ?」

「ん?」

飯を食ってから、また秒で寝られても何も聞き出せないので早めに聞き出すことにする。もぐもぐしながら、女は…

「『竜の花嫁』です。えーと、雨乞いのために、犠牲?生贄?人柱、みたいな?」

「…どこから来た?」

「生きていた時はアルバ国に住んでいました。」

「……」

「あなたが竜の神様ですか?よろしくお願いいたします。」

「は?いや、おれは違う。」

確かに、この帝国はドラッヘンという竜にちなんだ名ではあるが…

「皇帝ならいる。」

「皇帝?神様みたいなものでしょうかね?」


そう訳の分からないことを言いながら、パンのお代わりをしている女。

おばちゃんがメイド用の質素なワンピースに着替えさせてくれたので、その辺にいる少女に見えなくもない。生贄か…苦労してんだな。本当かどうかはわからないがな。


食後に女の部屋に部屋に鍵をかけて、食器を下げに行く。

「あらま、天下の副将軍に食器を下げさせてしまって、すみませんねぇ」

と、おばちゃんが笑って受け取る。思ってないだろう?

「あの子ねえ、他人に仕えられるのに慣れているね。意外といいとこの娘さんかもよ?」

「え?」

「着替えでもなんでも、してもらい慣れてる、って感じ?庶民だとね、そうはいかない」

「……」

このおばちゃんは若いころ王城に勤めていた。両親が年老いたからと、田舎に帰った。身元がはっきりしているので、夏の間、この山荘の手伝いに来ている。まんざら…素人でないところがな…


その足で皇帝陛下に女のことを伝えに行くと、面白そうに笑った。

「連れて来てみろ、その女」



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