第2話 天国。
『ここは…天国ですか?』
誰かの声に、長椅子でうたた寝していた俺は跳ね起きた。思わず、剣を手に取る。
泉で女を引き上げてから、まる2日たっていた。
女の使っている言葉は、どうもアルバ語、山脈の向こうの小国で使われている言葉のようだ。
「帝国公用語は使えるか?」
農奴なら無理だな…と、あきらめ半分で聞いてみた。
「…天国は、帝国公用語なんですね…」
と、女がわかったようなわかんないようなことをつぶやいた。話せるのか?話せるのは助かるが…ますます怪しいよな?
「お前は何者だ?」
「…私は…」
と、女が言いかけた時、ぐううううっ、と、盛大に女の腹が鳴った。
「私は…お腹がすきました。死んでもなお、お腹はすくんですね?不思議ですね…あ、すみません、私、死んだのが今回初めてなものですから。」
自分でも不思議だと思っているのか?俺も…こんな変わった奴を尋問するのは初めてだ。とりあえず…おばちゃんに頼んで二人分の食事を用意してもらう。
「よく噛んで食べるんだよ。久しぶりの食事だろう?」
食事を運び込んでくれたおばちゃんが、ベッドに座っているその女に話しかけている。サイドテーブルをベッドわきに運んで、料理を並べ始める。いただきます、と言って早速食べ始める女。
「着替えもいるねぇ、ランベルト様の服じゃでかすぎるだろうし…」
おばちゃんが俺をちらりと見て、難しい顔をする。
「明日、ふもとから食材を運んでくるから、女中用の服でも…何か見繕ってもらうかね。下着と靴もいるねぇ。」
「ありがとうございます。」
もぐもぐしながら、女がおばちゃんと話している。よほど腹がすいているのか、話しながらも食事の手を止めない。
「んじゃあ、ランベルト様、食べ終わったら食器を廊下に出しといておくれ。」
そう言っておばちゃんが部屋を出て行った。
俺はな…帝国軍の副将軍なんだけど?と思ったが…まあ、いい。この女、飯を食うぐらいなら死ぬ気はなさそうだ。
黙々と飯を食う女を見ながら、俺も運ばれた飯を食う。
しかもこの女…飯を食い終わったら、また寝てしまった。