第17話 夏。
夏になり、ジャガイモの収穫が始まる。結構な力仕事だ。
男衆がスコップを入れて持ち上げたイモを、女子供が拾って袋に集めていく。
雨は少ないところだが、日陰で陰干しさせる。これが終わったら、いよいよ麦の収穫。
収穫したものは働いた者たちに均等に配って、余ったものをハンネスに買い取ってもらい、必要なものを買う。なかなか合理的なやり方だが、アンナがいなくなった後、もめずにやれる?
そう心配していたら、元村長の息子さんが帰ってきてくれたので、その男に今後の引継ぎをする。
実際、ひと家族ずつの作業より、かなり効率がいい。
それぞれの家の周りにある小さな畑では、それぞれにいろいろな野菜を作っているようで、俺たちもトマトやらキャベツなどを貰った。まあ、料理するのは相変わらず俺だけど。
ヤギをあげた家でウサギをさばいたとお裾分けを貰ったので、ウサギ肉のトマト煮込みを作る。
ここにパンと蒸かしたジャガイモ。
アンナは美味しそうに食べている。こいつは基本的に何を食べても美味しそうだ。
多分…食べれないことを知ったからだろう。
「今度はまた、羊が食べたい、な、お父ちゃん。」
「もうすぐお前は自由になるかもだろう?ウーノにいるお姉ちゃんのところに行って、腹いっぱい食ってこれるだろう?」
「お前も行くだろう?」
「…俺?どうかなあ…」
俺は帰るだろう。居るべき場所に。もともと軍の所属だし。
俺は…ソフィーアが泣かないように、皇帝陛下を守るのが仕事だし…。
こいつの護衛という名の子守も、もうすぐ終了する。
「え?」
と、小さな声がする。黙々と食べていたアンナのフォークを持つ手が止まる。
「…一緒に行かないのか?」
驚いたアンナの大きな紫の瞳が俺を見る。
「ん…。俺も2年の休暇の予定だったからな。長い長い夏休みはもうすぐ終わりなんだよ?アンナ。」
「…そうか。」
「ああ。お前も陛下に会ったら会ったら聞かれるぞ?どうしたい?ウーノに行くのか?それとも…ドラッヘン帝国民になってこの国で暮らすか?」
「……」




