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第15話 あと一年。

目が覚めると、いつものようにアンナが俺の隣で寝息を立てていた。

こいつは何の危機感もなく、俺にしがみついてくる。

体温が少し高いのか、抱いて寝ているとポカポカして暖かい。


…って!!ここどこ?


アンナを起こさないように、枕にされている腕を動かさずに、あたりを見回す。

こじんまりしたテントの中のようだ。布団の上に何かの毛皮が敷いてあるようで柔らかくてすこしくすぐったい。


…そうか、あのまま、俺、寝てしまったのか?

勧められるがままにかなり飲んだが、良く寝たせいか頭はすっきりしている。


すっきりした頭で昨日の会話を整理してみると…陛下は何から何までご存じだったんだろう。俺たちがウーノ国と国境を接するゲルダ国に派遣されたのも。


なにもかも、手の内だったんだなあ…。

あきれるやら、感心するやら…


空いている手で、アンナの髪を撫でてみる。

一年分、髪も伸びた。

目が覚めたら、紫色の瞳が俺を映す…


…あれ?


あんなに恋焦がれていたソフィーアの瞳を思い出そうとして…


思い出せない自分に焦る。



*****


帰りにお土産だと、ヤギを5頭も貰った。

仕方なく縄でつないで、馬にひかせる。


「返事、待ってるからね?」


と、ディオーナがアンナを抱きしめている。

長のレオンと並んで、手を振って見送ってくれた。アンナも馬上から大きく手を振っている。


一つ分かったことは…この人はもう、自分の母国を、自分で捨てたんだな、ってこと。まあ、命を狙われてもなお忠誠を誓うなど、無理な話ではある。

アンナは…一年後、どうするのかな?


帰り道はヤギたちがやたら立ち止まって草を食べようとするので、10日で来た道を、2週間かけて帰ってきた。国境近くまで、ウーノ国の護衛が付いてきてくれた。


ハンネスが無事を喜んでくれた。土産にもらった白い酒を渡す。ついでにヤギも渡そうとしたら断られた。


ほぼ1か月ぶりぐらいに、住んでいた家に戻った。

アンナはさっそく畑を見にいったので、俺は羊たちを連れて、畑から離れた場所につないできた。


アンナに、一年たったらどうするのか聞いてみようと思いながら、帰り道は差しさわりのない話ばかりしていた。アンナも何も言ってこなかったし。

家に帰ってみると、何も変わっていない気がしたが…


一つ変わったことと言えば…アンナが俺と寝たがった。子供か?

寒いし、いいじゃん。と言いながら俺の布団に潜り込むようになった。


…こいつも、心細いのかな。そう思った。まあ、仕方がないから、一緒に寝てやっている。ツェルトで寝るのとそう変わらない。いつもぎゅっとしがみついてくる。


あと一年か。



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