知りたくなかったわ
「この魔力の波線が父方から、こちらの色合いが母方から伝わるようです」
ダネル医師は、興奮状態で語っていた。
とてつもない早口なので、一方的に語られるので、私の理解は既に置いていかれている。
「各家の特徴というか、パターンというのが見えてきましたよ」
聞き手の私がいる必要ってあるのかしら?なんなら、ぬいぐるみでも置いておけば、事足りるような気がするのだけど……
それくらいにダネル医師は、高揚している。
そろそろ言っていることも、聞きかじりの単語によると二周目くらいになっているみたいだから、聞き流すかな……
などと思っていたのだけど、真面目な私は一応彼の話について行く努力をしてみる。
魔力腺の図形化した時に出る線が父方、色合いが母方ということね……で、一族とか親子関係が似てくるということか。
「アメリア様、お聞きですか?各家のパターンから考察するに、シーラ様のパターンにはエアルドレッド家との類似が有りはするんですが……」ここまで語ったダネル医師は、急に言い淀んだ。
「あるんだけど……?」続きを促してやると、そのままこう言った。
「エアルドレッド家のリプリー様とシーラ様の、類似点が又従姉妹と言うには遠いのです」
「遠いって、そこまで分かるものなの?」
「ええ、母方の血縁である、ということはこの色のパターンである程度分かるのですが、これはもう少し遠縁関係にあたりますね」
「ちょっと待って、もっと遠縁ってどういう事?」
「エヴァレット様から辿れるはずの色合いが遠くなっている、ということは……」
「ということは……?」
「この波形は、確かこの家に類似点が……」急に資料をめくり始めたダネル医師は、そちらに没頭して黙り込んでしまった。
私もこの話を突き詰めて、詳しく知るのは良くないような気がするので、このまま部屋を出ようとした。
「アメリア様!これ、この家の色と波形が……!」
彼は資料の、とある家のパターンを指さして見せた。
リプリー様のパターンよりも、その家のものがシーラに近く見えた。
「これって、私とシーラにエグバートは、そちらの家の血縁だということ?」
「この結果を見るに、おそらくターラント子爵夫人は父方の血を引いていなかったのでしょう……」ダネル医師は自分の話していることに、衝撃を受けたのか顔色が悪かった。
「アメリア様から魔力腺のパターンを取れないのではっきりとは言えませんが……。子爵夫人もその両親も既にお亡くなりですし……」
「で、そこってエヴァレット様とは繋がりがあるの?」
「確か、エヴァレット様のお母様のご実家かと……」
「それじゃ、わたくしはエヴァレット様との縁があることは間違いないのね?」
「は、はい、それは確かに……おそらく、先々代のダウニング侯爵夫人との血縁であることは間違いないかと……」
私がエヴァレット様の孫であるという理由で、息子をダウニング侯爵家の跡継ぎにしてしまったので、全くの他人だったらどうしよう……と思ったのだけれど……
ダネル医師も、お家乗っ取りの危険性に気がついたようで、青い顔からは更に血の気が引いていた。
「ダグラスは、確実にダウニング侯爵家の血縁なのよね?」私はダネル医師に確認した。
「それはもう間違いなく」ダネル医師は、私の目を見てしっかりと宣言した。
「そうね…… これって公表すべきかしら?」
「……ターラント子爵夫人の父親……」ダネル医師は、貴族年鑑をめくりつつ呟いた。
「……ああ」思い当たる人がいたのか、ダネル医師は頭を抱えて年鑑に突っ伏した。
「もうずいぶん前に亡くなった醜聞の主が、いますよ……なんてことだ……」
「醜聞?」
「どこかの家の令嬢に手を出して知らん顔を決め込んで、その令嬢の家の者と刃傷沙汰に……」
「素行の悪い人がいたのね……」
「ダリウス卿の……確か従兄弟に当たる人だったと思います」
「これ……公表し辛いわね……」私は天を仰いで神に祈りたい気持ちになりました。
「私たちでは判断できないわ、上に押し付けましょう!」
私とダネル医師は、王家にお伺いを立てたのです。
結果として、どうも王家はダリウス卿に事情があって子どもが出来ないことをご存知だったようです。ターラント子爵夫人の生物上の父親にもある程度当たりをつけておられたようで、この話は内々で処理されることとなりました。
ということで、「良いわね?ダネル先生、この話はもう終わりよ。わたくしはイレギュラーに産まれたマイラなのよ」
青い顔を力なく縦に振ったダネル医師は、黙ったまま資料を手に座り込んだ。
王家からは、ダネル医師の発見した魔力腺からの親子鑑定への高評価を得たのでした。これからは貴族院に魔力腺のパターンも登録する事が義務付けられるそうです。
私とエアルドレッド侯爵、リプリー様は、エヴァレット様のお母様、つまり高祖母に良く似ているのだそうです。
表向きには高祖母だけど、実際は高祖母の姉?そこまで考えて、もう面倒くさいから、この話はなし!
表向きだろうが裏向きだろうが、エヴァレット様は私の曾祖母なのです。
蛇足感満載の話です。
書きながら、前の話で完結にすれば良かった……と_| ̄|○
アメリアが、リプリー様にそっくりな事への解答編のつもりだったんですが……
長らくお付き合い下さいまして、ありがとうございます。




