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ダネル先生が私たちに、ミッチェル様の症状のことを詳しく説明して下さった。
事故で負った頭部の打撲が原因で、脊髄液の漏れがあったこと。その為頭痛や倦怠感、記憶障害などの後遺症に悩まれていたこと。
ミッチェル様のお目覚め後の性格の変化は、それが原因だったかも知れない、ということらしい。
ダウニング公爵夫人とリプリー様は、思い当たることがあるようで、何度も頷いておられました。
「それで、今回してくださってる治療で治るの?」ダウニング侯爵夫人がすがるような口調で、問いかけた。
「体の不調から来る不快症状は、よくなると思います。ただミッチェル様の変化の原因が、それによるものかどうか、ということがまだ確認できませんので、確実とは申せません」
うん、まあそうよね、本当は頭打ったせいで表に出てなかった性格の悪さが出ただけかも知れないものね。体が辛いせいで、口調がきつくなったり慎重に考えたりが出来なくなったのかも知れない……
そのへんはまた要経過観察と言ったところかしら。
リプリー様と侯爵夫人は、きっとこれでミッチェル様がもとに戻るって言う顔をしている。私もそうだと良いな、と思う。
その後は、ミッチェル様が病床にある間の魔力補充のスケジュールを話し合って、本日は解散となった。
昨日のミッチェル様の病気発言の段階で、ダニエルはある程度のスケジュールの組み換えをしていたので、特に混乱もなく話し合いは終わった。
今はまだダウニング侯爵が、マッサージ効果の所為か現役時代と差のない魔力量を有しているので、魔力不足になっていない。だが、今後魔力の多い領主一族に頼る魔力補充は、いずれ立ち行かなくなるかも知れない。
実際にミッチェル様が寝込まれた現在、たまたま侯爵様に頼ることが出来たので、なんとかなっているに過ぎない。今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫、と思って暮らしていくのは怖すぎる。
少なくとも領主代行を行うダニエル位の魔力量で、なんとか出来るようにしたい、と私たちは意思を一つにした。その為の対策を考えて、話し合うこととなった。
まず農地の魔力。これに関しては、クィンシーが行っている土の改良、と肥料開発、これを推し進めていけば必要な魔力量を減らすことが出来るのでは?と既に研究を始めているので、近いうちに侯爵領全体に広めていくことになった。
侯爵領の公道や河川工事と言った土木工事関係にかんしては、今のところ、かなりの割合を侯爵様に頼っている。それでも農業の方に割く魔力が減っているので、侯爵様に言わせると楽になっているらしい。
他にも魔力の省エネ作戦を各自熟考する、ということで本日は解散することとなった。
ミッチェル様のご病気の件と言い、それまで単にかの方の我儘と思われていた事がひっくり返ってしまったことへの衝撃もあって、私たちも色々と思うところがあったのだ。
とりあえずダニエルのミッチェル様へ憂慮することは、今後無くなりそうなので、それだけでも良しと思うことにする。
私もいつまでもダヴァナー領にいることは出来ないので、そろそろ王城に戻る算段をつけなくてはなりません。
コナーを呼んで、農地開発の件をダニエルと話し合って、広めていくように手配してもらいます。コナーの助手にシーラを付けて、二人の相性を見るべきか……
シーラが足を引っ張る未来しか見えないので、やめておくべきだろうか?それでもコナーとは顔合わせをさせておきたいので、一応紹介はしておこうと思う。
グエンの方は、クィンシーに任せて……と思ったけど、これはダニエルにお願いしておかないと…… 男爵の面目を潰さないように、上位の人から話を持って行く必要があるから。
イングリッド様だけの問題なら、私ももう少しこっちに残れるんだけど、そうは行かない理由があるのです。
実は、王太子妃殿下がご懐妊中なのです。ご成婚から数年、待ちに待ったご懐妊に王城は慶事に湧いているのです。
……が、どうも妃殿下の魔力量を超える魔力を、お腹のお子さまがお持ちのようで、妃殿下に眠り病の初期症状が出始めているのです。
そういった事情で、過剰な魔力の中和をする私、アメリア・マイラが側に控える必要があるのです。
なんにせよ、側にいる、いうことだけを求められているので、指示出しとか会合を持つことは出来るので、なんとかなるんですねどね。
あ、それこそコナーに男爵位を授与してもらわないと!実はこれが一番喫緊に必要かもしれません。私との連絡を密にするために、王城に頻繁に出入りすることになるでしょうから。
いつもいつもダニエルの側近の顔をして、彼に連れてきてもらうわけにも行かないので……
魔力だけに頼るのではない道を模索している現状で、マイラだけに頼らない、ということも試してほしい……
今、私はセレスティンさまの乳母役でお城に上がっているので、その私がマイラに頼るな、というのも矛盾した話ではある。
乳母の話が出た時は、いい話だと思ったのだけどなあ。




