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不遇の姉は、未来を拓く  作者: きむらきむこ
乳母編

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 13

誤字報告ありがとうございます。

エアルドレッド侯爵のア抜けが多く、申し訳ありません。そして、教えて下さってありがとうございます。

 翌朝 私とダグラスはミッチェル様の屋敷に向かった。


「待っていたわ」とリプリー様が玄関先で私たちを出迎えた。


 女主人自らの案内に恐縮しながらも、ことの重要性がひしひしと感じられる緊迫感に、私は心中穏やかでは居られなかった。


 重厚な扉を数枚くぐったその先に、ミッチェル様の寝室があった。


 私たちより先に着いていたのでしょう。ダネル先生とケイリーが既にミッチェル様のベッドサイドで、診察をしていました。


「どういうことなんです?」ダグラスが、ダネル先生に問いかけた。


「ケイリーからミッチェル様が病気になるとおっしゃっていたと聞いているだろう?」


「ええ、それは……仮病を使うということではなかったんですか?」


「正確にはハッキリと体調が悪い、と言う、の方が正しいね」


「……ちょっと、ちょっと待ってください。ミッチェル様はご病気なんですか?」


「ダグラス、君らしくもない。ミッチェル様は眠り病だろう?」


「いえ、眠り病はもう治ったのではないんですか?」


「……残念だがね、後遺症も含めて病後を確認中なんだよ。そしておそらく過去の打撲の原因でミッチェル様は意識が戻らない」


 ケイリーがミッチェル様の全身の魔力線を、マッサージしながら詰まりを確認しているようですが、魔力線の異常は感じられないとのことです。



「ミッチェルは?」ダウニング侯爵夫妻が飛び込んでこられました。


「申し訳ありません」ダネル先生が侯爵夫妻に向かって、頭を下げています。


 人が謝罪する姿って、なんでこんなに居た堪れないんだろう…… ダネル先生の説明によると、馬車の転落事故で、おそらく頭部を打撲したミッチェル様は、頭部損傷の為に少しづつ微量の脊髄液が漏れていたらしい。


 事故が起きてから五年以上、本当に微量だった為治癒に当たった医師たちも気が付かなかったのだそうだ。


 ここ最近はミッチェル様も倦怠感や記憶障害などの後遺症で、休息を取ることも難しくなってきていたということだった。


「魔力腺には異常はなかったの?」私がケイリーを問うと、ミッチェル様の事故前の魔力腺を知らないので比較が出来ないと言う返事が返ってきた。


 ああ、本当ににそれはそうだった……。

私たちがミッチェル様にお会いしたのは、事故の後眠り病で眠っていらっしゃる時だった。


「ミッチは時々眠れなかったみたい。本人はもう一生分眠っちゃったから、なんて言ってたけど……」リプリー様が涙声で教えてくれました。


 ダネル先生の指示で私が会ったこともない医師たちが、ミッチェル様に治癒魔法を行ってます。


 前世であれば、かなり大変だったのではないだろうか?と思うし、現世であっても原因が分からなかったら助からなかったかも知れないけれど、なにせ治癒魔法だ!


 ミッチェル様の専属医師である人が、元の健康体を知っているのだから、それを考えると大丈夫なんじゃないだろうか?


 事故後の段階での見逃しがあっての今なので、治癒魔法も万全ではないのだろうけど……


 治療の邪魔になっても悪いので、ということで私達夫婦とダウニング夫妻、リプリー様とダネル医師とで別室に移動した。


「脊髄液の漏れというのは、あることなのか?」

ダウニング侯爵が、誰ともなしに呟かれてます。


「私どもにも、まだ最近になって判明した症例です。頭を強く打った際に、脳脊髄液という頭の中にある液体が漏れてしまうことがあるようです」


 ダネル先生が、私たちに説明をしてくださいます。

この症状が原因でなくなることはないのですが、事故の後に残る後遺症として、記憶障害だったり倦怠感だったり、色んな症状で悩む方がおられるそうです。


 ミッチェル様は、漏れた液から感染を引き起こして意識不明となってしまったそうです。


 私たちがするマッサージで、一時的に元気になってしまうことで、元々の症状がごまかされてしまったようなのです。これは、私たちも深刻に受け止めて今後の施術の参考にしなくてはなりません。


 幸いミッチェル様の症状は、医師たちが液漏れする場所を治癒魔法を使って塞ぐことで良くなるとのことでした。


 ケイリーも、真剣にダネル先生の話を聞いています。


 ミッチェル様の経過観察をしていてさえ、今回のように大事になってしまうことがあるので、私たちマッサージ師と、医師との連携がより一層大事になってきたかも知れません。


 ミッチェル様には申し訳ないのですが、医師の使う治癒魔法と、私たちの使うマッサージ療法、患者の完治にはどちらも等しく必要だ、ということが分かったケースでした。


 リプリー様が、静かに涙を流しておられます。

「彼の性格の変化は、これが原因だったの?」

 ミッチェル様が周囲に強く当たられるようになったことに、リプリー様はひどく困惑されておられたようです。


「わたくしには、いつもの優しいミッチだったのだけど…… 彼がこんな風に短気になってしまって、周りから悪く言われるのが辛いの」


「ええ、わたくしもそう思います」ダウニング侯爵夫人も、思うところあってか、強く頷いておられました。


今年最後の投稿となります。

お付き合いいただきまして、ありがとうございます。

来年もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
 よく、交通事故などの後遺症にそういうことがあると聞いておりますが、ミッチェルもそういう状態だったのならば、相当辛かったでしょうね。しかも、違和感はあれど、なかなか言語化しにくい症状だったでしょうから…
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