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不遇の姉は、未来を拓く  作者: きむらきむこ
乳母編

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「ダネル先生、産科医の使う痛みを抑える魔法って、魔力を多く使いますか?」


「痛みを抑える魔法自体は、産科医だけではなく医師ならみんな使うし、魔力はそれほどかからないはずですよ」


 単刀直入に聞いた私に、ダネル医師も率直に答えてくださいました。


 私はついつい麻酔と言ってしまいそうになるのですが、鎮痛魔法というのだそうです。


 鎮痛魔法は、頭痛だったりお産や、骨折、果ては切断といった痛みを伴う症状に、様子を見ながらかけるので、微調整が難しいものの魔力量はそれほど必要ではないそうです。


 なので、魔力量の少ない人のほうが、細かく魔力を使うのに慣れている為に向いているかもしれません。


 今世で使うポーションは、多少の鎮痛効果を見込めて、抵抗力を高め自然治癒を促す効果が高い水薬です。


 効果の割に安価に手に入るので、平民なら一家に一本という感じでの常備薬ですが、最近はダウニング侯爵家の売り出しているポーションがちょっとした革命を起こしてます。


 クィンシーがダヴァナー領で監修して作成しているポーション……これが、以前からあるものとは、比べ物にならないほどに効くのです。


 多分土壌からこだわって育てた薬草の有効成分が、とんでもなく高いのだと思うのですが、ダウニング侯爵家からは、このポーションを貴族向けに販売しているのです。


 平民向けのポーションはお値段そのままで名称もポーション、貴族向けのポーションは高級ポーションでもちろんお値段お高め、という風に販売されています。


 むやみに治癒魔法を使わないで済むように、という眠り病対策なのですが、怪我や病気の重さによってはこれまでと同じように医師による治癒魔法も使われます。


 その際に私たちマッサージ師による魔力腺マッサージを、施術することでやはり眠り病対策となっています。


 出産時に使う鎮痛魔法ですが、微妙な魔力操作と魔力腺の認識から、女性マッサージ師が使えるようになると、出産が原因での眠り病の減少につながることは必至です。


 ですので女性マッサージ師の普及は、これから更に広がることでしょう。


 ダウニング侯爵様としては、眠り病への対策としてポーションやマッサージ師を広めたいだけであって、医師の仕事を奪いたいわけではありません。


 マッサージ師は医師の仕事には手を出さない。医療の分野でお互いを必要とするけれど、職域の棲み分けを狙っていきたいと私たちは考えてます。


 男女問わずマッサージ師にも鎮痛魔法は使えるとは思うのですが、マッサージ師単体では、ごく軽い鎮痛をマッサージを行う際に使う以外には使用しないように徹底することにします。


 出産や外科手術といった際の医師が患者の容体を確認しながらの、マッサージ師による鎮痛魔法の使用はオッケーと言うことになりました。


 これは明文化して法律にすべく、ダウニング侯爵様が働きかけてくださってます。

 

 これもダウニング侯爵様やイングリッド様を通してのコネと権力の発動です。ダウニング侯爵家のお力も増すのですから、癒着と言ってもいいのかしら?


 ダネル医師とも話し合い、女子も男子も数人鎮痛魔法の習得に回ってもらうことになりました。


「ダネル先生、よろしくお願いします」


「いやいや、私もあまり魔力量の多いほうじゃないから、鎮痛魔法を他の人に代わってもらえるのは助かります。私以外の医師も治癒魔法だけに魔力を割けるのは、願ったりだと思いますよ」


 いつも穏やかな医師は、今日も柔らかく微笑んでそう言った。


 私やメアリー、クィンシーにケイリーといった既に兼業となっている人を除いて、男女数人がダネル医師と繋がりのある医師数人について学ぶことになりました。


 医師側もマッサージやその効果などを、しっかりと目の前であるいは身を持って知ることができるので、双方ともに良い学びとなることでしょう。


 ダネル医師以外の医師からも、意見をもらえたらマッサージ技術の新しい使い方なんかも出てくるかもしれません。今回の鎮痛魔法へのアプローチのように。


 鎮痛魔法の研修には、私の学園の同級生のケイリーにリーダーとなってもらうことになりました。


 同級生だった男子のうち、一人が薬草と畑担当のクィンシー、マッサージ技術で一人抜きん出ているケイリーと、どちらにも精通したコナーと三人居ます。


 クィンシーとケイリーはどちらもその分野でトップとなっています。コナーはというと、同級生で()()()というアドバンテージを活かして、私、クィンシー、ケイリーとダグラスを繋ぐ秘書官の役割をしてくれています。


 主にダグラス付きのポーションとマッサージに関しての専属秘書官となっていて、ダグラスにその進捗やら今後の見通しなどを説明する役割を担ってくれています。


 本来は私がその立場にいるはずだったのですが、諸事情でそれも叶わず、ケイリーやクィンシーのしていることに詳しいコナーがしてくれているのです。





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