18
すみません
前話と同じ話を投稿していました。
差し替えました
「それにしても無魔力でも王家に縁付くことに差し障りはなかったんですか?」
エヴァレット・マイラ様の話を聞いてから、ずっと不思議に思っていたことを聞いてみた。
「王妃になるのなら、魔力はもちろん必要だ。だが、王弟殿下に嫁いで……となると、また話は変わってくるんだ。一代公爵家は領地を持たないというのも理由の一つだが……」エルドレッド侯爵様が答えて下さいました。
なんでも、「無魔力」であっても産まれる子どもには魔力があるそうです。ただ、子ども、孫の世代に「無魔力」の子が産まれることがあるので、そこまでは、王家からも確認されるのだそうです。
孫世代を過ぎると、「無魔力」はその家系ではなく、他の家に現れるらしいのです。当主は「無魔力」の子が生まれるとすぐに王家に申し出て、年回りの良い王子なり姫なりと縁付けることになっています。
これは王家に、前世の記憶に拠る新しい考えを王家に紐づけるのと同時に、「無魔力」の子が王家の魔力の高い方に添うことで、とあるメリットがあるそうです。
これに関しては、実際のところ、王家の側近の方々の間でも色々と意見の分かれるところではあるそうですが、「マイラ」若しくは「マルセル」のセカンドネームを持つ方が王家に入られると、王家に「眠り病」で眠りに入られる方が極端に減るのだそうです。
この辺の解明はダネル医師の研究結果が待たれるところなのですが、今回は私という「無魔力」が、王家に入らなくとも、マッサージという確実に効果を出すものをお持ちのイングリッド様がマイロン・ニコラ様の王子妃となられるのです。
血統的にも魔力的にも、反対するものなど現れないでしょう。
「私の叔父上の判断が恨まれるね。もし、エヴァレット・マイラ様の血族だと従兄妹をうちの親族にでも嫁がせてくれていたら、今頃アメリアは私の義娘として眠り病の根治も我が侯爵家の栄誉となっていただろうからね」
エルドレッド侯爵様が残念そうに笑顔で言われるのを、ダウニング侯爵様が「きっともう無魔力の子が現れないのだから、ご自分の才覚に見合った暮らしを、と思われたんでしょう」と慰めなのか、揶揄なのか判断しづらい返事をされていました。
私の祖父と言う人は近衛から騎士爵を受けて暮らしていた人なので、母はその縁で武官の家に嫁いだのですが、それも私の運の悪さを示しているのだそうです。
これが、侍従や侍女を排出している貴族家であれば、無魔力の子が生まれた時点でそれとなく上に話が上がったであろう、とのことでした。
無魔力の子というのは、全体に秘密にされているのですが、やはり侍従や侍女といった身近に仕えてくれる人は、口には出さないもののなんとなくそうなのかも……と考えるようです。
その中から信頼のおけるものを、婿入りなり嫁入りにも連れていくので、その家では暗黙の了解となっているだろうとのことです。
「アメリアが産まれたことを、隠されてしまったのも悪手だったな。無魔力の娘がいる、と私たちが知ったのはアメリアが学園に入ったときだったからな」エルドレッド侯爵様がため息と共に、口に出されたのでした。
「もし、私の実母が密かにエルドレッド侯爵様に、連絡を取っていたらどうなりましたか?」無魔力の秘密を知らされていない実母が、そんなことをするはずも無いと思いましたが、悪戯心が働いて尋ねてみました。
エルドレッド侯爵様は、曲げた人差し指を口元に当てながら考えた末に教えて下さいました。
「……ふむ、アメリアを死産とでも偽って、エルドレッド家に引き取っていたかな…… アメリアの母親というか、実家を黙らせる何らかの手を打って」
黙らせるとエルドレッド侯爵様は言われましたが、少なくとも私の実家にとっては、悪くない取引になったはずです。
私が学園を卒業して、平民となった後にサンダース伯爵家に養女に迎えられ、ダウニング侯爵家と縁を繋いだことを実家はどう考えているのでしょうか?
産まれてからずっといないものとして扱われた私は、あの家に何の利益も与えずに済んだ事に昏い歓びを感じるのです。
いや、あの家のことですから、平民となった私の行く先など把握してない可能性のほうがあり得ますね。