表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇の姉は、未来を拓く  作者: きむらきむこ
貴族編
18/29

 9

 最後の衣装合わせは、ミッチェル様とご一緒に踊るところまで行われました。


 ミッチェル様とイングリッド様は侯爵閣下から豊かな銀髪とシルバーグレーの瞳、といった色合いを受け継がれていて、見るからにダウニング家の後継といったご様子です。


 ご兄妹のお顔立ちは、侯爵夫人の柔和な感じを引き継がれているようですが……


 そして、私の着ているドレスですが、光沢のあるグレー地に銀の差し色……


 地味な色合いではありますが、デザインとしての銀や白のレースやフリルが愛らしく、いかにもデビューするレディという初々しさです。


 侯爵家の侍女の手で美しく結い上げられた明るいブロンド。栄養状態が良くなったせいか肌艶も良く、青い目を強調した化粧で普段の私とは別人レベルに美人です。


 ミッチェル様の着ていらっしゃる礼装は、同じ光沢のあるグレーの生地に同系色の更に濃い襟やラインに、深い青のタイとチーフ……


 ええ、わたくしの瞳の色ですわね。

 

 散々自分を誤魔化してきたけれど、これはどう見ても婚約者同士の装いと言うやつではないでしょうか?


 誰か、嘘だと言ってちょうだい……


 


 



 言葉もなく、私とミッチェル様は笑顔で踊りました。ドレスはたっぷりの生地を使っているにも関わらず軽い仕上がりで、ターンの度にふんわりと裾が広がります。


 ミッチェル様は、表面上いつもの貴公子然とした顔をしておられますが、明らかにイライラとされています。


 イライラ、というか、二人でダンスの練習を始めた二ヶ月前から感じていたことですが、ミッチェル様って私のこと嫌いよね?


 ダンスの練習にしろ、エスコートにしろ、肌の接触って思ってる以上に気持ちが伝わってくるよね?そうじゃない?


 ミッチェル様が心の底から私を嫌っていたところで、今回のエスコートもこのお揃いの衣装に関しても、私の気持ちも意見も全く確認されていないので、私としてはなんのアクションも起こせないのです。


 身分的にはそこまで嫌なんだったら、ミッチェル様が侯爵様たちに抵抗するなり何某かの行動をお願いします。


 私とミッチェル様というこのパートナーは、決して私が選んだことでも希望したことでもないのですから。


 それにしても、このままなし崩しに私とミッチェル様が婚約なり結婚なりした場合、私ってこの国の第二王子殿下の婚せきで義妹になるってことよね?


 生まれてすぐに育児放棄された身としては、結構な出世じゃない?でもって、私個人に権力は無くてもイングリッド様とか第二王子殿下とかを通したら、法案とか通せたりするんじゃないかしら?


 元々結婚なんか出来ると思ってもなかったんだし、別にどうしても子どもを産まねばってこともないと思うのよね。侯爵夫妻も私が産む跡取りなんて求めてないと思うし。


 だったら少しばかりの権力で、この間まで悩んでた薬草関連の悩みの原因に関与できたら、この現世に私という魔力無しの女が生まれた甲斐もあるかも知れないよね?


 イングリッド様の小判鮫として、この国の最大権力に阿って生きて行くのもありかも知れない。


 侯爵閣下も「私という魔力無しの女」の使い処を、「魔力腺マッサージ」という眠り病対策の象徴として見ていらっしゃるに違いないと思うのよね。


 この世の何処を探しても、私ほど血筋のしっかりした貴族出身の「魔力無し」 なんて居ないんじゃないかしら?少なくとも今この世代には。


 私は曲がりなりにも子爵家の生まれである、って書類的にも証明できるから、そこは強みと言って良いのかも……


 今回の淑女教育で知ったんだけど実家の子爵家も元を辿ると、とある一代公爵家にまで遡ることができるのよね……


 ダウニング侯爵家でも私の身元確認をした時に、そこまで調べたんじゃないかしら?その割にはいまだに、セカンドネームも無いままの扱いなんだけど。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ