第82話 M35:森の恩恵(その1)I benefizi dalla foresta:primo
建国2年唱月3日(3/Coro/Auc.02)
転機が来る。冒険者ギルドから呼ばれる。
ギルドに着いた途端、マスターの部屋に案内される。
エド、はるっち、サブ、ジョルジュが居る。
「今回は君たちの番だ」
マスターがゆっくり話し掛けて来る。
遂に来た。依頼 “森の恩恵„ だ。
実際、近くのフィールドに居るモンスターたちには負ける気がしない。
実力は付いたと思う。
しかし、この依頼の情報が掴めないので、次の街へ移動することも考えて居た。
待っていて正解だった。
「希望の町の冒険者ギルドとしては、君たちのパーティを推薦したい」
「お話しを聞かせて下さい」
わたしの言葉に、ギルド・マスターはゆっくり話始める。
「君たちは “森の恩恵„ という依頼を知っているかな?」
「我が師匠、フュルベールから聞いておりました」
ジョルジュが応える。さすがに、今日はポロロン♪やらないのね。
「そうか、ならば話は早い。この依頼は、次の街への登竜門と言われる。そして、一組限定でしか実行できないのだ。一組のパーティが挑戦している間は他のパーティは全く挑戦できない」
「噂通りの依頼ですね。わたしたちにはチャレンジする資格があると?」
「その通りだ。ギルドとしては、町にいる冒険者たちを確認して、君たちが適当だと判断した」
「ちょち聞きたい。ワイらのメリットは何処にあるんや? ギルドから莫大な報酬があるとか」
サブ、直球やなぁ。確かに聞きたいとは思う。
「いや、ギルドからは特にない。しかし冒険者としてならメリットは大きいと思う」
「もっと詳しく聞きたいわ!」
「君たちの話はもっともだ。詳しく説明しよう」
ギルド・マスターはゆっくり話始める。
「まず、この依頼を達成すると、地属性が伸びることが確認されている。モンスター・ドロップはもちろん全てが君たちのものだ。かなり珍しいものが入手できる可能性が高い」
マスターは更に続ける。
「また依頼中に装備品がドロップしやすいとの話がある。達成時には、夫々に何か一つ有益なものを貰えるらしい」
「拙からじゃが、“らしい„ とか “しやすい„ というのはどういうことじゃ?」
「それは、パーティが持ち帰るアイテムが毎回違うのだ。だからやってみないと分からないということだ」
「小拙からもですが、受け取るアイテムが違うということは、依頼の内容も違うということですかな?」
「左様、毎回全く違う内容に成っている。当たり外れがあるということだ。ただ、難易度は高いが達成不可能ということはない。いきなり強力な敵が現れて一気に全滅などはあり得ない」
「ふぅむ……」
みんな一様に考え込む。
「もちろん、君たちには断る権利はある。しかし期待を裏切らないで欲しいとは思う」
このメンバーなら、私が指揮を執るのが良いんだろうな。
みんなの顔を順番に見るが、やる気は十分。心配はなさそうだ。
幸運は掴んでから考えよう。
「分かりました。しかし準備が必要です。数日程度、練習というか連携の訓練をして良いですか?」
「最長で五日まで認めよう。十分に訓練と準備をして欲しい」
みんなに向けて、いいか? と目で合図すると、頷いてくる。
「分かりました。この依頼を受けます!」
「そう言ってくれると思っていた」
「で、依頼内容についてですが……」
出来る限りの情報を収集する。
今回の依頼は、用意されたエリアに入る必要がある。
入口は町の南西にある森の中にある。
しかし、入口の場所は毎回違うため、自力で見つける必要がある。
入口では姓名の申告と依頼を実施するという宣言をしなければならない。
とにかく、分かっていることを細部まで聞いた。
それから連日、連携を深める訓練を続ける。
陣形は、エドが先頭、真ん中にジョルジュ、左にはるっち、右にサブ
今回は指揮を執るので、最後尾から指示を出すことにする。
地属性の敵が多いと予想されるので、火属性魔法を集中的に訓練する。
予想以上に、みんなレベルアップしている。
建国2年唱月8日(8/Coro/Auc.02)
これから先のゲーム・ライフを大きく左右する依頼に挑む。
ギルドにも出発を告げて来た。
行先は町の南西の森、いよいよ勝負の時だ。少しだけウキウキする。
「じゃ出発するけど、依頼は長期戦が予想されるので、途中のモンスターとの戦闘はなるべく避けることで、いいかな?」
「アイテム消費を抑える訳ですな。賢明です」ポロロン♪
「分かったわ! 入口を見つけるのが最優先ね」
エドを先頭に周囲を警戒しながら進む。
時々、モンスターに出会うが問題なく撃破していく。
みんな強い。新技も隠しているようだ。
特に、ジョルジュは敵に対するデバフも習得しているようだ。期待が持てるね。
森に入り、探索に入るが、なるべくまとまって行動する。
時間は掛かるかもしれないが、連絡が取れなくなる可能性を無くすためだ。ここで一日かかっても良いくらいの気持ちで行く。
結局、入口を見つけることはできず、その日は野宿になった。
そして翌日の第二昼刻頃
「あれじゃない?」
エドの声にみんなで確認のため近付く。
「間違いなさそうですな」ポロロン♪
森の茂みの中に、小さな空地がある。
緑の植物に囲まれ、泉が湧き、小川となって流れている。周囲を小さな虫たちが飛び交う。
泉の傍に小さな石柱がある。
若葉色の蔦に取り囲まれ、浅葱色に光る宝珠が浮いている。
いよいよ依頼フィールドに突入する。勝負だ!
「みんな準備いいよね!」
「もぅ、待ちきれないわ!」
「拙も、準備万端じゃ」
「ワイは、やったるで~」
「きゃー、サブやん!」
いや幻影の自動起動控えろや!
「ひとつ元気よくいきましょう!」ポロロン♪
「予定通りの順で入場ね。真名で宣言するのを忘れないように」
「じゃ、あたしからね」
エドが宝珠に手をかざし、力強く宣言する。
「あたしは、エドガー・バロウズ、依頼 “森の恩恵„ に挑戦するわ。道を啓いて!」
エドが転送される。
はるっちが続く。
「拙の名は、如月榛名、依頼 “森の恩恵„ に臨む。道を啓き給え!」
はるっちの姿も一瞬で消える。
サブは幻影と一緒に宝珠に向かう。
「腕輪はん、行くで!」
「サブやん、頑張って!!」
「ワイは古地三郎や、依頼 “森の恩恵„ に挑戦する。道を啓き給え!」
元気な声を残して移送される
ジョルジュはゆっくりと宝珠近付き、確りと宣言する。
「小拙、ジョルジュ・ド・コルヴェと申す者、依頼 “森の恩恵„ に挑む。道を啓き給え!」
みんなを見送り、後に続く。
「わたしの名は、結月琴音、依頼 “森の恩恵„ に挑まん。道を啓き給え!」
宝珠が明るく輝き、周囲は暗転!
真っ暗な中どこまでも落ちて行く。
希望の町での総決算が始まる。




