第74話 M33:遺跡 Le rovine
インスタンスで手間取ったが、気を取り直して依頼を進める。
ギリだけど、何とか助かった。
気が緩んでいた。少し慣れた頃が危ないというのは本当だった。
ゲームだけに負傷は直ぐ回復したが、精神的には大分落ち込んだ。
しかし、本来の依頼は達成しなければならないので頑張ることにした。
「やっと着いたな」
ディアの声にみんなが頷く。
結構時間が掛かった。すでに第六昼刻の後半
宵闇が迫りつつある時間、遺跡は不気味だ。
彼方此方に石積みの壁があり、途中で折れた石柱が立ち並ぶ。
いろいろな石像が並び、破壊されたものもある。広さは確認できない程ある。
「今日、調査するのは無理だな。野宿して調査は明朝からにしよう」
ディアの指示により、遺跡の外側で一晩過ごすことにする。
「ワイの勘やが、何か嫌な感じがする。今日の見張りは無理をしても人数を増やした方がええんやなかろうか? 腕輪はんも気になるらしいし……」
珍しくサブが提案する。インスタンスもあったし、消耗で対処が遅れるのを気にしているのだろう。
「確かにのぅ、月もほとんど朔じゃ。灯りは望めん」
不安を感じるのはみんな同じのようだ。
「小拙が起きている時は、軽い音楽を流すとしましょう。気持ちが落ち着くと思います」ポロロン♪
「よし! それでは今夜は二人当直にしよう。ことねはダメージが残ってると思うので、第五・六夜刻担当で、残りで第二から第六を半分ずつだ。前半はサブとジョルジュ、後半は自分とはるっちで」
「いや、もう大丈夫だけど」
「ことね! こういう時は好意を受けるものじゃ。無理をしても何にもならんぞ」
「分かった」
はるっちの指摘を素直に受け、その夜は早めに就寝する。
「ことね」
ディアの声に目覚める。
「あ、見張りの時間? ありがとう」
何とか眠気を覚ましてテントから這い出す。
「おはよう! 体調は大丈夫?」
「身体は心配ないよ!」
笑顔で応えて置く。
「遺跡の状況はどう?」
「確かにおかしい情況じゃ、像が増えたり減ったりするのは間違いないし、怪し気な音もするのぅ」
「何か怖いね」
「明るくなってから調査するが、バラバラに行動するのは危険だから、まとまって行く予定だ」
遺跡はまだ暗闇が拡がっていて、ゴトッゴトッと石が動くような音がする。
確かに何かおかしいと肌で感じる。
空には緑の風の主星と二つの伴星が強く輝く。
そうか夜が明ければ唱月、一年最後の月だ。
サブとジョルジュはまだ休んでいるが、明るくなったら出来るだけ早く行動するというディアの考えで、日の出前から朝食の準備だ。
朝食はパンとスープにコーヒー。朝だから軽いものにする。
日出前だけど、朝食の香に誘われたのか、サブとジョルジュが起床してくる。
「おはようっす。良い匂いやなぁ~」
「おはようございます。今日は朝から調査ですな」ポロロン♪
五人揃って朝食を取りながら今日の予定を確認する。
サブ、食べ過ぎると咄嗟の判断が遅れるから注意だよ!
ディアの考え通り、五人まとまって行動する。先頭にディア、続いてはるっちとサブ、後方にわたしとジョルジュ、特に後方からの奇襲に注意を払う。
念のため、ジョルジュには防御の歌を歌って貰う。
「やっぱり妙な雰囲気じゃのぅ」
「ワイには明確にモンスターな感じがする。石像に化けるモンスターとか」
「ガーゴイルだな。有名なモンスターだ。いきなり襲って来るから注意だ」
「属性は何だろう?」
「ワイは風属性と思う。鳥だし」
「とりあえず結界を張って置くのじゃ」
はるっちの地の加護で薄黄色の光が夫々を取り囲む。
「それにしても出ないやんか、ちょち突いてみるか!」
「サブ、藪から蛇が出るよ」
「まさか~、そんなことはあらへん」
サブの魔法職用杖で近くの石像を突っついた途端、鼠色で風雨に汚れていた石像が、羽と角を持ったガーゴイルに変身する。
「嘘や!」
「お主は当たりを引き過ぎる。少しは控えんかぃ」
「はるっちさま、角は止めてや!」
はるっちの持つ和本から逃げるサブ、お前ら、この忙しい時に漫才は止めい!
ガーゴイルは空中に舞い上がり、こちらを威嚇する。
「地の球!」
地魔法を叩き付けると、ガーゴイルはよろめきながら落ちて来る。
「間違いない、風属性! 攻撃は地属性で」
「「了解!」」
みんなの声が重なる。
ディアが、落ちたモンスターに鎚鉾を振って止めを刺す。
モンスターは黄色の光を放ちながら消えて行く。
しかし、一匹の動きに反応したのか、石像が次々にガーゴイルに変身して行く。本性を現したと言うべきか
「サブ、お主はいつも余計なことをするのぅ」
「はるっちさま、堪忍やで~」
二人とも意外に余裕がありそうだ。
「じゃれるのは片付けてからにしよう!」
ディアの声に、ジョルジュの歌が攻撃型に変わる。
「戦いの歌!」
「地纏い!」
はるっちの魔法で武器に地属性が付属する。
襲って来るガーゴイルに向かって剣を叩き付ける。
敵は弾けるように散って行く。属性付与の効果は大きいようだ。
「おや? どうやら歌にも属性がのるようですな」
「それはありがたい」
ジョルジュの話にディアが応える。
「砂塵!」
サブが地魔法の全体攻撃を仕掛ける。
みんな強いなぁ~




