第71話 M30:遺跡の調査 Indagine sulle rovine
演奏会が終わって数日した頃、ジョルジュくんは何故かわたしの後を付いて来る。
何でそこまで気に入ったのか分からないけど、わたしには何か感じる所があるらしい。新作の叙事詩を創ると張り切っている。
「おーぃ、ことね!」
二人で町を歩いていたら、ディアに呼び止められる。
「どうしたの?」
「ちょっと依頼の件で相談したいことがあるんだけど、いいかな?」
「ほぅ、なかなか面白そうな展開です」ポロロン♪
「あぁ、この人が例の吟遊詩人さんかぁ」
ディアは笑って右手を差し出す。ジョルジュも応えて確り握手をする。
「クラウディア・ポルポリーナと言います。ディアとお呼び下さい」
「これは、ご丁寧に。小拙、ジョルジュ・ド・コルヴェと申します。どうぞ、“ジョルジュ„ と呼び捨てでお願いします」ポロロン♪
「こないだの演奏会には行けずにごめんなさい」
「いえいえお気になさらずに」
和んでいる処をすみませんが、ゆっくり話せる場所に行きましょ。
近くのお店でお茶にしました。
「それでね。神殿からの依頼なんだ。ちょうど行ける人いなくてさ」
宗教絡みなのか、何か冒険者ギルドを通したくない事情があるのだろう。
「で、どんな内容なんだろ?」
「町の北というか、北北西くらいなのかな。道程で一日くらいに遺跡があるんだけど、そこで何か起こってるらしい。それの調査だね」
「何かって、具体的にはどんな?」
「放置されている像が動くとか、数が変わるとか……」
「怪奇現象? なんだか変な状況だなぁ」
「複雑なことが絡んでいるような気がしますな」ポロロン♪
お茶を飲みながら少し考える。
「少し嫌な感じするから、人数多い方がいいかもしれないね。経費は大丈夫なの?」
「その辺は大丈夫だし、報酬も悪くないよ。宗教は儲かるらしい」
「よし、参加者集めよう!」
「是非、同行させてください」
ジョルジュは勇んで付いて来るらしい。
で、参加者たちが小夜啼鳥に集まる。
ディア、はるっち、サブ、わたし。ジョルジュは……間違いなく来るよね。
「集まってくれて、ありがとう。今回はディアの依頼だから、指揮はディアということで」
「目的は遺跡で何が起きてるから確認することです。モンスター討伐ではないので無理はしないで下さいね」
「了解っす!」
「もちろんじゃ」
「叙事詩の良い題材になりそうですな」ポロロン♪
建国2年渦月30日(30/Spirale/Auc.02)第一昼刻
希望の町北口に集合して出発する。
「何だか初めての村から希望の町へ移動した時を想い出すね」
「全くじゃのぅ、あの時は妙な魔導士が着いて来たのじゃが」
「はるっちさま、その話はなかったことに……」
「サブやん、また浮気?」
「濡衣や~」
幻影の自動起動は止めぃ!
「ほぅほぅ、その辺を詳しく」ポロロン♪
今度は変なことが起こらなければいいな。
ディアを先頭にみんなで元気に出発する。
丁度第二昼刻が始まった頃、暗闇に捉えられる。
「あ、インスタンスだ」
悪い予感は当たるもんだ。
「パーティ全体だな」
ディアが冷静に評価してる。
生命の腕輪の効果音が響く。
“ワイド・インスタンス:芋虫の襲来„
「ワイドかぁ」
「ディア何か知ってる?」
「インスタンスの一種なんだけど、長時間が掛かるらしい。自分も初めてだ」
「ほぅ、これは良い叙事詩ができるかもしれませんな」ポロロン♪
ジョルジュくん。君は楽しいかもしれないけど、結構大変そうな予感がする。
周囲は一面の草原、そして遠くに牧場が見える。
牛さんみたいなのが、そこここで草を食んでいる。
「ワイド・インスタンスって逃げられないの?」
出来ることならば避けたいんだけどね。
「何じゃ、ことねは今回弱気じゃのぅ。始まったからには一気にやってしまうのが良いと思うのじゃが」
「中途で止めることはできないと聞いた。時間切れはあるらしいけど」
「ワイはやるで! 正面突破や!」
「サブやん! 頼もしいですぅ~」
幻影の自動起動は止めぃ!
「いま逃げ出すと “卑怯者の歌„ ができますが」ポロロン♪
ポロロン♪ 止めぃ!
みんなやる気は十分なので、やるしかなさそう。
題名からして芋虫退治なんだろうけど、今回は嫌な感じが強い。
注意しないとな~
とりあえず全員で牧場の方へ向かうことにする。




