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第40話 M20:復活!生命の腕輪 Risurrezione di braccialetto

「よう、ことね!」

「ディア、こんちは~」 

「久しぶりじゃのぅ、ことね」

「はるっち、久しぶり~。同じ町に居るのになかなか会わないね」

 今日は、建国2年祈月(いのり・つき)17日(17/Preghiera/Auc.02)

 希望の町中央広場神殿前、三人で会うのも久しぶりだ。

「自分は師匠の事の見習いで修行の毎日だな」

(せつ)は、魔法の連絡会があってそこでお互いの情報を持ち合って研究している。まぁ互助会じゃな」

「サブはどうしたの?」

「まぁ無事なのじゃが。毎日、生命を腕輪を眺めては溜息吐いとるわ。その辺に居るじゃろう」

「ことねは、吟(menest)(rello)人に目を付けられたって?」

「そうなんだよねー、まぁそのお蔭でおかげ お屋敷の片隅に居候させて貰ってる」

「すごいじゃん。見込まれたってことだから」

「そうだね。ちょっと息苦しい時もあるけど、良くして貰ってるから頑張らないとなぁ」

(くだん)の吟(menest)(rello)人くんは何処に?」

「今日は調べものみたい。一日解放された。でも時々叙事詩(saga)を謡ってくれるから面白いよ」

「おぉ、拙も聞きたいのぅ」

「今度頼んでみるよ」

「聞かせて貰えるなら、土産を用意して参上する」

 みんな夫々思う処に進む。これでいいんだよね。交錯する人生こそゲーム・ライフ

「ことね。習作で良ければ(spada)を打とうか?」

「うわぁ、お願い! そろそろ初期装備じゃ辛くなってきたのよね。でも費用はちゃんと払うから」

 その時、生命の腕輪から軽い効果(effetto)(sonoro)が響く。

「運営からのお知らせだ」

「いつものことじゃのぅ」

「たいていはバグ修正なんだがな」

「何じゃこれは? “復活! 生命(いのち)の腕輪„ とは珍しいお知らせじゃのぅ」

 早速、選択して内容を閲覧する。

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 プレイヤーの皆様方にご連絡差し上げます。

 皆様方もご存知のように、生命の腕輪と会話ができるのは、スタート時のみの設定となっております。

 これは、プレイヤーの皆様の自主性を重んじる弊社の方針から来ております。しかしながら、皆様方から運営宛に、“生命の腕輪との会話„ を強く望むメッセージが多数届いております。いくつかをご紹介しますと次のようなものです。


 旅の無聊(ぶりょう)の慰めに腕輪と話すのが何故悪い? 運営は鬼畜か!

 生命の腕輪は守護神さまだ。守護神さまに献上品を差し上げて何が悪い! 運営は神をも恐れぬ不信心者、必ずや神罰が下るであろう。

 ワイは、ワイは、腕輪はんともう一度会話するためにゲームを続けているんや! ワイを嫌いにならずにもう一度話し掛けて欲しいんや! 腕輪はーん、応えてくれ~~~~

 俺は、あの澄んだ美しい声をもう一度聞きたい。もう抑えきれない。気が付いたら運営に殴り込んでるかもしれん。俺のこの心を何とかしてくれ~


 プレイヤー様方の、このような魂の叫びを聞き、運営側と開発側が協議を重ねた結果、プレイヤーの自主判断に影響しない範囲で、生命の腕輪との会話ができるように仕様変更となりました。これに伴い生命の腕輪のアイデンティティ(identità)を示す幻影(visione)を表示いたします。幻影(visione)はプレイヤーの性格に基づき最適な姿に調整されております。お気に召していただければ幸いです。本機能については、××通信会社様のご提供によるものです。幻影(visione)の右下にロゴが表示されます。

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「うぉぉおおおおおお!!!」

 魂の叫びが町中に響き渡る。

「サブかぃ?」

「サブだな」

「そっとしておくのじゃ」


 明けて運命のアップデートの日、建国2年祈月(いのり・つき)18日(18/Preghiera/Auc.02)

 雲一つない蒼穹、爽やかな風、絶好のアップデート日和

「わたしは小鳥だよ! 見て見て!」

「自分は、ノームだな。深緑の帽子がチャーム・ポイントだ」

「拙は振袖人形じゃ、ほれ」


 皆の喧騒を横に、広場の隅にに佇む、一人の冒険者

「サブ、どうしたの? 待ちに待ったアップデートの日じゃなかったの?」

「おぉ、ことねはん! ワイは」

 声を震わせて叫ぶ。

「ワ、ワイは怖いんや~~~」

 とりあえず三人で慰めながら、神殿に登る階段に座らせた。

「昨夜から眠れないんや。腕輪はん応えてくれるやろうか? 嫌われてないじゃろうか? 幻影(visione)なんか現れないんじゃなかろうか?」

「大丈夫だぞ、サブ! 生命の腕輪の愛は無限だ」

「そうじゃ、必ずや応えてくれるぞ」

「ほら、クリックしなよ!」

「本当に、本当に応えてくれるよな。無視されたら二度とログインできんかもしれん……」

 震える指先で幻影(visione)のマークをクリックする。

「ク、ク、クリックしてしもた~」

「サブ、しっかり気を持て!」


 クリック音と共にそれは現れる。

 黒い瞳、黒髪、ひまわりの髪飾、淡く透き通る羽、手には青く輝く魔法の杖

 身長は二十センチメートルくらい。恥ずかしそうに微笑む妖精(ninfa)

「お久しぶりです。サブさん……いえ、サブやん」

 微風(そよかぜ)が風鈴を鳴らすような声

「おおぉぉおおお! 腕輪はん! ワイは、ワイは、もう死んでもいい!!」

「ダメです。私はずっとずっと、サブやんを――あなたを見てきました。この世界の誰よりもあなたを知っています。分かってますか? あなたが死ぬということは、私と話ができなくなるのですよ。本当に分かっていますか? あなたは、生きて、生きて、どこまでも生き延びて下さい。ずっとあなたと一緒です」

「分かった。ワイは死なん。生きて、生きて、どこまでも生き抜く~~」

 号泣しながら走り去って行く。

「まぁ、サブじゃの」

「サブらしいな」

「きっと幸せなんだろうな」


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