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第23話 F10:旅立ちの村防衛戦 Un battaglia difensivo

 建国2年第三祭(La Festa terza/Auc.02)

 暴走(スタンピード)発生の日なんだけど……

 (trappola)の設置が終わった後、ボクは寝てました。

 

 教官曰く

「あれだけ事前準備で睡眠放り出して罠造ったんだから、寝るの当然でしょ。お肌にも悪いし」

 おぃ教官

「バトルは前衛や弓・魔法の遠距離職がやってくれるわよ。私たちの代わりは|罠が頑張ってくれる。シーフは戦闘でヘロヘロになった敵が陣地内に入り込んだのを始末するだけよ」

 はぁ、そうですか

 教官のお言葉に甘えて、罠を造っていたシーフ三人は爆睡する。

 サヤ、ゲッツ、頑張ってね。


 第一夜刻辺りから外が騒がしくなって、さすがに寝ていられない!

「教官、起きなくていいんですか? 外はバトルが始まったみたいですけど」

 眠り込んでいた教官にぼちぼちと話し掛けてみる。

「いいのよ。多人数の戦闘ってのは各部が役割分担して、その役割をきっちり果たすことで成立するんだから、急遽駆け付けたって邪魔になるだけよ」

 そんなものですか

「だいたい、糧食班や軍医が武器持って戦闘始めるようなら負け(いくさ)なんだから、本当に危ないなら救援要請来るわよ」

「でも、そろそろ起きた方が……」

「はぃはぃ、目が覚めたからご飯にしましょ」

 おーぃ、そんなのでいいんかぃ?


 しかし、携行食とはいえ戦闘音が響く辺りでご飯とは

「あのもう一人」

「彼はもう限界超えてるから寝かしときましょ」

「そうですね」

 矢の飛ぶ音とか前衛らしき人たちの歓声とかモンスターの叫び声とか、本当に放っておいていいんですか?

「まだ序盤夜遅くなったら、もっと激しくなる。今のうちに休んで置いた方がいいわ」

 余裕かましてますけど、突破とかされないのかな?

「一匹、そっちへ行ったぞ!」

 誰かの声に反応して教官の投げナイフが一閃!

 飛んでる虫らしきものが一瞬で溶けて行く。

 教官、強すぎ

「飛んでるものも多いんですけど、罠が効かないんじゃぁ?」

「飛翔敵には、それ用の罠があるわよ。造るの面倒だけど」

 怪我人が広場に運び込まれて、回復(guarigione)魔法で治療されている。

「気にしないの、餅は餅屋よ。私たちの出番なら指揮官に呼ばれるわ」

 ふと気になったことを聞いてみる。ちょうどいい機会だ。

「教官、そういえば毒を使わないんですか?」

「毒ねぇ」

 あれ? 何か反応悪い。

「致命傷とか与えられそうな?」

「毒はね。現実じゃ即死級もあるんだけど、この世界では自重されてるみたいね。そうでなければ、町に流れ込む川の上流に毒を流すとか、町の風上から毒ガスを流すとか」

「町が壊滅ですね」

「ダンジョンとか毒ガスでモンスター全滅させて悠々と宝箱探せばいい」

「ダンジョン内に居る冒険者も全滅ですね」

「病気も同じね。現実には、黒死病(peste)とか天然痘(vaiolo)とか、人の集落がなくなるくらいのがあるんだけど、さすがにそんなのをゲームに持ち込むってことはないみたいだわ」

「そんなのがあったら冒険者いなくなりますよね」

「まぁ毒に関しては、ぼちぼちで良いから覚えるべきだと思う。結構使えるしね。なんなら私も任官期間が終わるから教えてやってもいいけど」

「え、教官って任期制なんですか?」

「あ、そうか。知らないのか」

 はぃ、その件については何も知りません。

「初心者対応の教官って、ベテランの冒険者たちに打診が来るのよ。それで期間を決めて教官やるってわけ。もちろん報酬はかなり良いから、お小遣い稼ぎにはなるわ」

「ご指導、是非にお願いします。今後は師匠とお呼びします」

「行掛かり上しょうがないわね。あなたの師匠やってあげるわ。私も冒険したいから、付きっ切りは無理だけど、それで良ければ」

 思わぬところで師匠げーっと!

「とりあえず暴走(スタンピード)が終わった後、明日に向かう町で会いましょ!」


 夜刻に入っても敵の攻撃は止まない。

 防衛部隊にも疲労が濃い。

 突破して来るモンスターもボツボツ現れ始めるので、かなり前線に近い所で待機して、撃ち漏らしを確実に仕留めて行く。

 ちょっとした小康時にサヤを見つけた。

「大丈夫?」

 生命の腕輪同士のデータ交換で薬剤(pozione)を渡す。

「有難い! そっちはどうだ?」

「後方に潜り込まれたモンスターは確実に倒してる。挟み撃ちはないから、そこは安心して!」

「そうか、敵は一匹一匹はあまり強くないのだが、何しろ数がな。一応交代で休憩してはいるのだが、疲労が来ていることは事実だ」

「でもここが頑張り処だよね」

「そうだな。どんなに長くとも第六夜刻には終わるだろう」

 なんとか励まし合って、この場を乗り越えることだけを考える。


 幸いというか第五夜刻辺りで敵の攻撃は収まる。

「良し、とりあえず敵の攻撃は一段落したようだ」

 指揮官らしき人の声が聞こえる。御厨教官?

「しかし、警戒を怠る訳にはいかん。半数の交代とする。各隊半数を残して広場で休憩だ」

 慎重だな。指揮官はああでなくちゃいけないんだと思う。


 その後、敵の襲撃はなかった。

 明けて祈月(いのり・つき)1日 (1/Preghiera/Auc.02) 、さすがにみんな疲労困憊、村中が休息となった。


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