第12話 M7:パーティ戦 Battaglia da gruppo
朝日がカーテンの間から差し込んで来る。
日差しが眠気を溶かして行く。
ゆっくり起き上がって、自分の手を見る。
昨日倒したモンスターたちの感触が残る。
今日は、建国2年乾月22日 (22/Secco/Auc.02) 。もう一週間も経ったのか
最終日だ。
ベッドから出て、いつもの装備を身に着ける。アイテムも良し
さて、行こう。
ミク、エド、はるっちが待っている。
「揃ったな。今日が最後の指導となる」
指導所前に並ぶ皆を、ラルフ教官が見渡して言う。
「さて、注意事項だが、ここは良く意識して欲しい」
力を込めて話始めた。
「パーティ戦は、ひとりひとりが、それぞれ戦うのではない。それではパーティの意味がない。自分にはない能力を集めて戦うのだ。人の力を利用し、人の力に自分の力を乗せ、互いに足りないものを補いながら戦うのだ。そうすれば必ず強敵も倒せる」
ラルフ教官、気合が入ってる。
「今日は、もう一人教官が同行してくれる。彼女は回復が専門だ」
そして、全身白の女性教官が話を続ける。
「本日同行するノエミ・ニクルです。ミカエラ・アルムグレンさんを担当しています」
白い髪にライト・グリーンの瞳、強者の雰囲気がある。
「お話しを聞いている限り、みんな順調に成長していると思います。同行するのは万一のためで、私が何もしないのが一番良いのです。ですから、みんなは私が居ないものとして行動して下さい」
パーティ揃って、北側出口からフィールドに入る。
エドが先頭、私とはるっちが並んで真ん中、後ろにミク
砂漠フィールドには、罠を設置する敵はいないし、後方からの急襲に備えて、この編成にする。
教官たちは後から付いて来る。
特に指示などはない。自分たちで判断しろということだろう。
砂と土の砂漠地帯を警戒しながら北へ進む。
「いたぞ!」
ミクが敵を見つける。
そちらを見ると、数匹のハネネズミが居る。属性は地
まだこちらを見つけていないようだ。
「|風の束縛《legante da vento》!」
はるっちの魔法で先制、属性は少々不利だが脚止めにはなる。
動きを止めたハネネズミは絶好の的。|炎の矢《frecce di fiamma》で連続攻撃!
エドとミクが突っ込んで、止めを差す。
ほぼ、瞬殺
「楽だわ~、みんなで協力するとこんなに簡単にやっつけられるのね」
「うむ、これはパーティを止められなくなるかもしれん。ソロのときとは全く違う」
ラルフ教官は頷く。
「まずまずだな。パーティを組む相手は、最初は能力が良く分からない。何度も一緒に戦って、相手の癖を掴め。そのうちに連携が良くなって来る」
岩陰にフェネックが数頭居る。
属性は火、しかし気付かれてないようなので、基本の水属性攻撃ではなく、作戦を考える。
気付かれないよう姿勢を低くして、風下から接近する。
「|雷の粒《particella fulminante》」
はるっちの魔法で、黄色の光粒が静かに襲い掛かる。
光粒に触れたフェネックが麻痺で動きを止める。
ミク、エド、私で奇襲攻撃、驚いて逃げるフェネックも光粒にかかって痺れる。
見る間に殲滅する。
「いいわね。調子出て来たわ!」
砂と土の砂漠を進んで行く。
「む、何か動くものが居るな」
ミクの声に先を見る。
「あっちだ。良く見ろ!」
砂漠の色に紛れて見難いが、確かに何かが動いている。
「拙にも見えた。地面に接するくらいのものじゃな」
「トカゲじゃないかしら? でもだいぶ大きいわね」
人間並かそれ以上だ。
「ヨロイトカゲだな。しぶといぞ!」
ラルフ教官の声が後ろから聞こえる。
「|地の球《palla di terra》!」
はるっちの魔法が吸い込まれるように消えてしまう。
「こいつは、地属性じゃな。火で狙うのがよかろう」
「属性なんて、くそくらえよ~~!」
「おぃ」
突っ込むエドに、思わず突っ込んでしまう。うまいことを言った――と思ったのは封印しよう。
「そのとおりだ!」
ミクも一緒に突っ込む。二人とも血の気多い。
「くらえ~~」
「これで倒れなさい!」
二人の刃は堅い外皮で跳ね返される。
続けて尻尾の反撃
跳んで避ける二人
「なかなか手強いわね」
「ああ、腹の方を狙えば良いのだろうが、隙がない」
「火で囲うしかないようじゃ。|炎の壁《muro di fiamma》」
「なるほど! |炎の壁《muro di fiamma》!」
炎の壁を展開し、三方から取り囲む。
「|炎の球《palla di fiamma》!」
ミクが次々に炎の球を投げ込む。
「あたしは何をすればいいの?」
「ええい、その辺の岩を放り込めばよかろう!」
エドは手当たり次第に岩を投げ込む。火の中で、グェッ!とかゲッ!とかの声が聞こえるけど気にしない。
トカゲはしゃにむにこちらへ向かって来るので、炎の壁を二重三重にしてくい止める。
そのうち声が聞こえなくなり、炎も収まって来る。
「やったか?」
「いや、まだじゃ! あそこに」
黒コゲになったトカゲが転がっている。
「いまじゃ。止めを!」
それっと、みんなでぶっ叩く。はるっちも和本で叩いているようだが気にしない。
そのうち、トカゲの身体が割れて、黄色の光を放ちながら消えて行く――やれやれだ。
「まぁ、そんなもんだろう。そのうち一撃で倒せるようになる」
ほんとにそうかぁ? という顔で教官を見ていたら
「心配するな、この世界は伸びしろが大きいのだ」
言われてしまった。
「よし、この辺で休憩にしよう。まずは野宿の準備をしてくれ」
昼に差し掛かったので、一休みだ。
教官の声に応えて、テント・パックのアイテムを取り出し、発動させると、一瞬でテントが展開される。
便利だなぁ……さすがゲームだ。
「今日は指導ということで、みんな並べて貰ったが、実際には、岩陰や木の洞など安全を確保出来る所が良い。野宿の位置は十分注意して選ぶことだ」
様々な生き抜く知恵を教えて貰いながら、最終日は過ぎて行く。
昼食は簡単な携行食で済ませる。フィールド内で油断は命取りだ。
「さて、最後の課題だ。これからサバクオオカミの群れを狙う。発見しないと分からないが、少なくとも十頭以上は居るはずだ。今の君たちには少し厳しいかもしれないが、工夫して挑戦してくれ」
周囲を警戒しながら進むが、村からかなり離れたと思う。しかし、隣の町までは、まだ半分にも達していないらしい。
まだまだ未熟だ。と強く感じる。
力を付けないとあっという間に退場になる。焦らずに自重しないと
「居るみたいだわ!」
エドの声に身を引き締める。
岩陰からサバクオオカミの群れを確認する。十数頭どころではない。確実に二十頭以上は居る。
「作戦を練ろう。みんな集まってくれ!」
四人で頭を突き合わせて話し合う。
「どう見ても、火属性の可能性が高い。かといって確認しようとすれば気付かれる。拙は火属性魔法は避けた方が良いと思う」
「殴りこむ……のは危険よね」
「降雨辺りが使えると良いのじゃが、拙はまだ会得しておらん」
「回復も、|回復の炎《fiamma di guarigione》は微妙だな。|回復の霧《nebbia di guarigione》が安全か。みんな使えるか?」
「わたしは大丈夫」
「拙も使える」
「エドは……期待しない方がいいか」
「失礼ね。あたしも|回復の霧《nebbia di guarigione》くらいできるわよ」
色々悩んだが次のように対処することにした。
|水の壁《muro di acqua》は、わたしとはるっちしか使えないので、二人で、ひとり分くらいの隙間をあけて壁を張る。
ミクがサバクオオカミを少しずつ引き出して、そこに誘いこむ。
隙間に飛び込んで来るオオカミをエドを中心に一匹ずつ仕留めて行く。
回復は基本個人で行う。
「よし、計画通り行くぞ!」
ミクがオオカミを引き出して、誘導して来る。
最初は三匹だった。予定通り殲滅。時間は掛かるが安全策を取る。
しかし、二回目に五匹ほど集めた時だった。
一回り大きいオオカミが、鋭い声をあげる。
ボスなのか、オオカミたちの動きが急に活発になる。
ボスの遠吠えに合わせて、次々に新しいオオカミたちが集まって来る。数えきれない。
ヤバい。仲間を呼ばれた?
ボスの指揮で連携攻撃までして来る。
連続で|水の壁《muro di acqua》を掛けるが、オオカミたちの突撃で崩されていく。
「もう拙の壁は持たないぞ!」
「こっちももう無理!」
「なんとか頑張れ!」
「根性の見せ所よ~~」
壁を破られた! と思った瞬間に教官たちの声
「|治癒の聖風《vento santo di guarigione》」
「|青き波《onde azzure》!」
みんな一気に回復!
繰返し打ち付ける波にオオカミたちが次々に消えて行く。
教官、すげぇ……
最終日は、何とか終了した。
反省会・イン・教室
「まあ、あまり気にするな。あそこまでサバクオオカミが集まっては、初心者で対応するのは無理だ。良くやったと思うぞ」
ラルフ教官慰めてくれた……のかな?
「私から、あまり口出ししたくないんだけど、このパーティは攻撃に偏り過ぎてると思う。攻撃が強いと敵の殲滅が速いので、欠点が見えにくくなる。ある程度まではいいんだけど、受身に回ると脆さがでて、パーティ全滅ってことも良くある。強さと弱さの同居は危険なの。攻守のバランスを考えて、能力を伸ばすなり、パーティ・メンバーを選ぶなりして欲しい」
ニクル教官、きついわ~
「これから先、これを教訓にして、能力を伸ばして行ってくれ」
ラルフ教官がしめてくれる。
「さて、これで全ての指導が終わった。君たちは冒険者だ」
略綬 ”冒険者を目指せし者” の地色が朱鷺から真紅に変わる。略綬も ”冒険者” になったらしい。
「冒険者の略綬にある、剣とハートは、武器とスキルを示す。武器を得、スキルを伸ばし、自分自身を磨き、この世界を生き抜いて欲しい」
ラルフ教官は笑顔で告げる。
「君自身の人生だ」




